第428話 分身たちの行動 サバゲダンジョン その7

朝一番。


「今日は魔力循環の壁を超える新しい方法を試します。成功すれば皆さんの能力は飛躍的に進歩します。あと2日しかありませんから。宜しいですか?」

「朝からですか?」

「その方が、後の訓練で自分の進歩を確認、調整できますから。痛いかもしれませんが、死にはしません。ご安心ください。誰からやりますか?」

「「「リーダーから。」」」

「おい!」

フェラーリは諦めて、2号の前の地面に座る。

「では、先ずは今できる最速の魔力循環をしてください。途中から、私が魔力を送り込んで、介助して、そのスピードを更に上げていきます。それに付いて来てください。常に深呼吸して、落ち着いてください。辛いかもしれませんが、我慢していると、慣れて楽になりますから、諦めないように。では、始めます。」

フェラーリは目を閉じて、魔力循環を加速させる。もう限界だと思って維持していると、右手から入った魔力が自分の魔力と混ざり合い、循環の波に乗り始めた。そして、段々とそれが速くなっていく。自分の循環もつられて速くなっていく。そして、それに付いて行かなくてはいけない。集中、集中、呼吸、呼吸。段々と何も考えられなくなってくる。集中も呼吸も何もない。ただ、魔力の流れにしたがい、更に速くしていく。もうどれぐらいたったか分からない。今は魔力と自分も一つの物だと感じる。自然と流れ、自由自在に速さ、流れる方向、位置を変え、まるでダンスを楽しむようにくるくる回る。何処までいけるのだろう。もっと早くしてみよう。もっと、もっと、全身を魔力に浸そう。もっと早く。もうこれ以上は、速くならないみたいだ。でも、この体が魔力に浸っている感じ、何かに、そうだ、風呂に浸かって蕩けている感じに似ている。ああ、そうだったんだ。

「フェラーリさん、大丈夫ですか?」

「ううん?あれ、俺、寝てた?」

「素晴らしい魔力循環でしたよ。」

「ええ、そう?俺何もしてなかったんだけどな。ただ、魔力に浸って、風呂に入っているような気分で蕩けていただけなんだけど。そうか、あれが、自由自在なのか。」

「試しに、ここから、あの30m位離れた所まで走ってもらえますか?」

「うん?ああいいよ。」

ズドン、という音を残して、洞窟の壁に激突したフェラーリは、

「あれー?」

と言って、座っている。

「力の加減に慣れてないので、気を付けましょう。」

「次は誰がしますか?」

「はい!」「はい!」「はい!」


30分後、残りの3人にも壁を越えてもらった。壁を越えた後は力の制御が不安定で、ボケるようなので、暫く安静にさせておく。お茶を飲んだり、今までで一番恥ずかしかったことなどを話して、のんびりした。


3時間後。


「皆さん、目は覚めましたか?」

「「「「はい。」」」」

「では、自分の進化を身をもって感じてきてください。いってらっしゃい。」

4人は70階層に挑む。


結果としては、3時間で70階層を通り抜けた。昼食の串焼きを食べながら、

「何だか、次元が違ったな。」

「そうね。」

「これは、これから衛兵を訓練するとき、気をつけないと。俺達の普通を押し付けたら不味いぞ。」

「俺も手加減を学ぶよ。」

「そのうち慣れますから、大丈夫ですよ。」


「ああ、それから忘れかけていましたけど、フェラーリさん、マセラティさん、ロータスさんの新しい武器を用意しましたので、確認しておいてください。それと、今までの武器も調整して、予備にしますから渡してください。はい、代わりにどうぞ。」

「えっ。なに、その、しれっとした言い方。」とフェラーリ。

「感動が無いわね。」とマセラティ。

「まあ、嬉しいんですけどね。」とロータス。

それぞれが、新しい剣、ショートソード、剣を渡された。どれも黒光りする一本で、形は標準的なものだ。しかし、細かいところが違う。柄が少し長め。グリップエンドが丸い。ガードが少し大きめ。柄には硬い糸が巻かれている。この特徴はランボルギーニの大剣と同じ。

「何だか、凄くしっくりくるわ。」

「かっこいいな。」

「バランスも長さもちょうど良い。」

皆、素振りをして確認している。


「では、午後も頑張っていきましょう。最初の目標の70階層は越えました。後は更なる目標を超えるのみです。」


*****


「うん?今、俺つええええって聞こえたような?」とスコット。

「何ですか?」とジョージ。

「いえ、何でもありません。進みましょう。あと1日半です。」


*****


次の日、午後6時。


「皆さん、ご苦労様でした。大変な時もあったでしょうが、目標も達成しましたし、自分の成長も実感されたと思います。私も自分の仕事が達成できたことを嬉しく思います。最終到達階層は78階層です。」ステイタスチェック。



名前:フェラーリ

種族:人

年齢:36

レベル:75

HP:430/430

MP:250/270

能力:剣術:78 状態異常耐性:72 物理耐性:75 魔力操作:45 身体強化:45 魔法耐性:60 短剣術:12 馬術:20 弓術:25 消音:25 盗聴:15 魔力感知:42 火魔法:48 生活魔法:32 指揮:12

所属:蘇る狼 エリザベス・フォン・ダスカーの部下


名前:ランボルギーニ

種族:人

年齢:33

レベル:72

HP:380/428

MP:250/270

能力:剣術:74 状態異常耐性:68 物理耐性:78 魔力操作:44 身体強化:51 魔法耐性:54 馬術:20 筋力:52 加速:43 消音:28 弓術:40 魔力感知:43 生活魔法:33 無属性魔法:35 教育:5

所属:蘇る狼 エリザベス・フォン・ダスカーの部下


名前:マセラティ

種族:人

年齢:22

レベル:70

HP:280/345

MP:270/376

能力:剣術:20 短剣術:65 状態異常耐性:53 物理耐性:60 魔力操作:55 身体強化:48 魔法耐性:58 弓術:45 歌:24 馬術:23 礼儀作法:34 音楽:34 学習:28 読解力:33 風魔法:50 生活魔法:30 消音:30 毒合成:29 投擲:50 魔力感知:61 教育:5 土魔法:15

所属:蘇る狼 エリザベス・フォン・ダスカーの部下


名前:ロータス

種族:人

年齢:27

レベル:72

HP:385/450

MP:210/310

能力:剣術:78 状態異常耐性:60 物理耐性:72 魔力操作:52 身体強化:48 魔法耐性:58 馬術:20 加速:45 俊敏:45 感知:55 罠発見:16 罠解除:14 消音:40 魔力感知:49 生活魔法:30 土魔法:48 教育:5

所属:蘇る狼  エリザベス・フォン・ダスカーの部下



「あと2階層で80階層ですが、そうもいきません。が、帰るには70階層か、80階層からしか帰れません。ですので、80階層まで行きます。」

「ええー。今までの”はいお終い、解散”の流れはどうしたんだ。」

「すいません。うっかりしてました。私も歳ですかね。頑張ってあと2階層突破してください。」

「…仕方がない。やらないと帰れないんだから、踏ん張ろう。」

「「「おおー。」」」


*****


5時間後、無事に、80階層に到着。


「お疲れさまでした。今度こそ本当に帰えれますよ。ささやかですけど、お祝いの席を用意したので、お風呂の後に先に食べていてください。こういう時はステーキですよね。ワインもあります。私は、今回のドロップアイテムを換金してきます。では、後ほど。」


*****


サバゲダンジョンの外にある冒険者ギルドの出張所。


「お先に換金しています。」

「ええ、構いませんよ。」

「はい、終わりました。金額は金貨で568枚です。」

「ありがとうございます。ではこの10枚をどうぞ。」

「いいえ、受け取れませんよ。」

「いや、受け取ってください。幸せは少しづつ分かち合うと、皆が幸せになれますから。皆さんで分けてください。」

「ありがとうございます。それと、最深到達階層の更新ですから、この賞状と報奨金の金貨100枚を贈呈します。」

「ありがとうございます。」

「何階層まで行かれたんですか?」

「90階層です。」

「それは凄い。おめでとうございます。」

「ありがとうございます。では、失礼します。」


「お姉さん、私も換金お願いします。」

「はい、何階層まで行かれました?」

「80階層です。」

「ああ、惜しい!先に来ていただければ報奨金が出ましたのに。」

「はい、残念ですが、この次に頑張ります。」


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