第426話 分身たちの行動 サバゲダンジョン その5

*****


「あー、いいお湯だった。ダンジョンで風呂に入れるなんて、有難いよ。」

「疲れが癒される。このあと、魔法の練習が無ければと思ってしまうが。」

「毎日気絶しているからな。体に悪くないのかな?」

「2号がいるから、大丈夫でしょ。」

「さあ、皆さん、お召し上がりください。今日はオークのジンジャー丼にしてみました。」

「へえ、これは食べたことが無いな。」

「いい匂いだ。」

「あら、美味しい。」

「旨い。」

「オークの肉をムラサキ、ジンジャー、その他のつけ汁につけて、炒めたものを、ライスの上にキャーベッジの千切りを乗せ、その上に汁ごと肉をのせて完成です。」

「いや、本当に旨いよ。」

「2号はお店を出すべきね。」

「うん。」「うん。」


食後の片づけを終えて、

「皆さん、強くなってきてますよ。マセラティさん、矢が尽きると、遠距離攻撃が出来なかったことを、新しいサンダーで克服しました。ただ、雨が降っていたり周りにいる人が濡れていると、使いづらい魔法です。こんな魔法もあります。エアショット。」

マセラティに向けて軽く撃つ。

「あ、何か当たった。」

「今のは空気の塊です。見えませんから、対人兵器としても有用です。これにもう少し魔力を入れて撃つと、こうなります。」

2号は壁に向かって撃つ。壁がドンっと鳴って、少しへこんでいる。

「これでオークを殺せないかもしれませんが、吹っ飛ばすことはできます。力の加減がしやすいので、色々な状況で使えますし、中距離までは問題ないでしょう。」

「やってみるわ。」

マセラティは何度も壁に空気弾を飛ばして、練習をする。

「確かに使いやすい魔法ね。」

「次にこれは皆さんにも言えることですが、特にロータスさんは興味があるかもしれません。皆さん目をつぶって、私が何処にいるか分かりますか?」

「分かる。」「そこだろう。」「分かるわ。」「分かるな。」

「何故わかるんでしょう?」

「魔力感知でそこに2号の形を感じるからな。」

「そうですね。では、もう一度目を閉じて、お願いします。」

「あれ、見えないぞ。」

「2号、移動した?」

「いいえ、同じところにいますよ。」

「全然わからん」

「見えないな。」

「目を開けてください。」

「なぜ、皆さんは私を感知できなかったのでしょうか?ロータスさん?」

「魔力を消したから?」

「その通りです。私は私から漏れている魔力を止めてしまったのです。これも練習次第で誰でもできます。コツはありますが、コツというほどでもありません。皆さんは皮膚に魔力を通したことがありましたよね。あれの応用です。」

「魔力を皮膚に流して、中から漏れる魔力を中へ押し戻すようにするというか、漏れる前に魔力循環に吸収させるというか。それだけです。魔力の皮で蓋をするようなものですね。やってみてください。」

4人とも魔力を皮膚に蓋をするように行うようにしている。

「皆さん、部分的には成功していますから、その内全身で出来るようになります。暇な時にでも頑張って、最終日までにものにしてください。」

「でも、何故皮膚の上にある魔力を感知できないんだ?」

「これは私も良くは理解できていないのですが、考えるに、魔力は何処からかいつも漏れているものなんだと思うんです。漏れ出た魔力は感知スキルに検出されるのだと思います。もし漏れる魔力をゼロにできれば、感知されることなくなる。魔力遮断の布が存在しますが、これは漏れ出た魔力を吸収し、透明化もしくは幻影魔法に変えることにより発見されなくなるものだと思います。この手の魔力遮断を発見する方法は魔力を視覚化して、魔力の流れを阻害するものがないはずなのに、流れが不自然な場所を探せば、そこに何かがあることが分かります。まあ、要は魔力を漏らさない事です。無駄も省けますし、良い事しかありません。私もまだまだ練習不足で完全にはできませんが。それましたが、皮膚の上に魔力の皮を被っている状態は、魔力が漏れ出ているとは違う状態という事で、感知されずらくなるという事です。まあ、それでも敵の感知スキルがずっと上ならば、体内の魔力の流れでも見られてしまうこともあるので、そのような相手にはあまり意味がないかもしれませんが…。」

*****

魔力枯渇で気絶した4人をベッドに入れると、

『スコット、今なん階層?』

『70階層。そっちは?』

『68階層。なかなか縮まらないな。1人対4人なのに。』

『正確には1.2人対4人ですから。火力のある魔法を使うから、縮まらないと思います。ほぼ階層の全魔獣討伐しているけど。』

『そうだな。今は実力を伸ばすために、階層殲滅だし無理か。まあ、いいか。残り3日。無事に終わらせたいですね。』

『あれ、また、地震。』

『増えたなー。』

『あと、マジックバッグを作っておきました。形はサイドバッグにしてあります。グリーンウルフの魔石で作って、バッグに縫い込みました。

(グリーンウルフの魔石):亜空間増設10m立方体、収納(中)、取り出し(中)、時間停止(上)、不干渉(上)、自動魔力収集(上)、隠蔽(上)、使用者指定制限、石化、状態維持、連続使用時間:5分、1時間当たりの魔力収集量:4MP 魔力保存量:8MP

バッグ(ケルピーの革):防汚、防臭、防刃、物理耐性、魔法耐性、状態維持、隠蔽(上)、使用者指定制限。


『何だか、いい物作りましたね。ケルピーの革だし。名前入りか。使用者指定制限掛けているからか。それに、勝手に手を入れたら石化って、鬼ですね。あれ、4つしかないですよ。ジョージのは?』

『ジョージのは悩んでいます。同じデザインだったら、直ぐここで練習していたのがばれてしまう。それに、ジョージはバッグを身に着けない気がします。』

『そうかも知れないですね。今までの記憶だと剣しか持ってないですし。』

『そうなんですよ。まあ、ここで練習したことがばれるのは仕方がない。話せばすぐばれますから。でもなー。』

『しかし、それなら、ジョージに腕輪とかだったら、益々不味い感じが…同じでなくてはいけないわけではないですが…』

『逆に全員腕輪?』

『目立つと思うんですよ。逆に蘇る狼は似非バッグ持って歩くようには見えません。』

『見えませんね。』

『だから、ジョージのはギリギリまで待って、聞いてみようと思います。』

『使い勝手が良い物の方が喜ばれるのは事実。俺もそれとなく聞いてみます。一応。作り替えになったら御免。』

『それなら、私の勇み足だからいいですよ。ただ、ミスリルがないから、魔鉄になると思いますが。』

『問題なし。』

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