第183話 スレイニー司祭への依頼
昼前。
エリザベス領 領都リゼンブル 教会で。
「スレイニー司祭様、急報です。これをネイラード王国からの使者が届けてきました。使者は倒れて寝ています。」
「なんだろうな。どれどれ…成程。これはまた大変なことになっていますね。すぐに旅の支度をしてください。領主様にも連絡をしてください。」
1時間後。
「それでは、スジャータ伯爵様、私と護衛の者は先に出発します。先ずは南下して、マイクロフ聖王国の国境沿いに東進して、ネイラード王国を目指しますから、陛下の使者にはそのようにお伝えください。」
「分かりました。そのように伝えておきます。ではお気をつけて。」
「失礼します。」
ネイラード王国からの使者はほぼ10日でやってきて消耗しきっていたので、教会で寝かせている。起きてから来ても馬車に追いつくことに問題は無いだろう。領主からの役人2人は一緒に移動しているが、王国からの使者も後から合流する。国家間の問題に発展する可能性があるからだ。
「今度はカーズは何をしたんですかね…。」
*****
午後。
メリル領 領都エプスタイン 領主屋敷。
俺は少しだけ見学にここに来ていた。エリザベス様は領主屋敷の執務室で既に仕事を始めていた。隣にはタイラー伯爵も来ていて、引継ぎなどをしている。2人ともとても穏やかに会話が出来ていて、俺としてもホッとしている。
「レドマール領の管理に問題はありそうですか?」
「いいえ。今は誰もいない状態のようですから、管理に問題があるよりも、どうやって人を集めるかが心配ですね。全く私の不徳とするところです。」
「領地の運営は難しいですから、いろいろとありますよ。」
「時間をかけて、取り戻していくつもりです。最初の5年間は無税ですから、その辺の理由で農民を誘致できないかと考えています。先ずは、とにかく我が領をくまなく見て回るつもりです。何か目玉になるものがあるかもしれませんし。」
「そうですね。メリル領全体としても、今後の方針を決めて行動していかないと、人心が離れてしまうかもしれませんしね。伯爵も何か思いつきましたら、お願いします。」
「はい。それは承知しております。」
「聞くところによると、伯爵には16人のお子様がいらっしゃるとか。」
「ええ。実は私の部下だった者達が違法奴隷を16人も抱えており、粛清した際に、この16人を引き取りました。丁度息子達2人を失った後でしたし、申し訳なく思い、罪滅ぼしの意味も込めまして育てております。今は段々となついてくれてまして、楽しくしております。」
「そうですか。それは素晴らしいことをされてますね。ご立派です。」
「エリザベス様は指輪をされていますが、ご婚約されたのですか?」
「えっ、いえ、この指輪は護身用と言いますか、お守りと言いますか。婚約とは関係ありません。」
「ああ、そうなんですか。これは失礼をいたしました。」
(なるほど。あの指輪で勘違いした人がエリザベス様の婚約の噂を流したんだな。早とちりだね。)
「話は変わりますが、地下牢に居る犯罪者で呪いを受けている者がいますが、あれはそのままで良いのでしょうか?」
「エリザベス様次第だと思います。私は放っておきましたが…。」
「あの者たちは死罪ではないのですよね?」
「死罪の者もいますが、多くは5年の犯罪奴隷になると思います。」
「となると、やはり解呪しないといけないでしょうね。スレイニー司祭に依頼しなくては。」
「おお、スレイニー司祭様をお呼びになるなら、ぜひお会いしたい。一度お話をしてみたかったのです。」
「そうですか。分かりました。その節にはお呼びしますわ。」
エリザベス様もまたスレイニー司祭に手紙を書くのであった。
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