第104話 先行投資

次の日。



「ンーマン。相談に乗ってくれないか?実はターシャの魔法であのダンジョンを移動させることが出来ることが判った。俺としては、もったいないのでダンジョンをジェネラルミル領に移動させて、肉を狩るためのダンジョンにしようと思うんだけど、どう思う?」

「ダンジョンを動かせるなんて初めて聞きましたよ。どうやるんですか?」

「土魔法でそういう魔法があるらしい。そしてダンジョンが小さいからできるらしい。まあ、その場に行って試して初めて確認できるんだが、俺はできると信じている。そこで、どうしようかと思っているんだ。方法は何か思いつくか?俺はこの村に利益が来るようにしたいんだけど。特にこの宿屋に。」

「そうですね。まだかなりの数の魔獣がいますから、ある程度減らさないと危険でしょう。持ってくるとして、場所の選定と冒険者で足りるか分かりませんし、最初は軍隊に依頼することになりますよ。後、やはり持ってくるのはまずいので、突然現れたとかにしたほうが何かと楽な気がします。」

「成程、いい発想だ。他には?」

「ダンジョンが発見されれば、冒険者ギルドに連絡。ギルドの査定が入ります。それから冒険者が送られてくるでしょう。そうなれば、宿屋が一つですから、もう死ぬほど忙しくなりますよ。」

「そうか。宿屋を拡張しないとな。」

「ギルドの支店もできますね。武具屋とか商人もきます。村はすぐに町になりますよ。」

「ンーマンも今のうちに、家でも建てておくか?畑を開拓しておくとか?手を貸すぞ。」

「悩みますね、実際。2,3日ください。」

「勿論だ。それで今言ったことの交渉役にンーマンがなってくれないか?俺はただの冒険者だし、ターシャは俺の娘でしかない。交渉にはやはり身元がはっきりしている人が良いと思うんだ。」

「そうだと思ってましたよ。やりますよ。顔は知ってますし。」

「頼んだ。タイミングはンーマンに合わせるから。ダンジョンがここいらに出現するのに2日ぐらいかかると思うから、2日を勘定に入れてくれ。では、俺は、宿屋の拡張などをしておくよ。それと魔獣を間引いておくかもな。鍛錬したくなったら声を掛けてくれ。」

「分かりました。」

「あ、御免、もう一つ。ハーシーズ領の北端にキスチョコ村がある。ンーマンも通ってきたかもしれないが、オーク料理で有名らしい。全くオークが行かなくなると、常駐の冒険者も仕事が無くなったり、オーク料理が作れなくなるかもしれない。なんとかその村の影響が少なくなる方法も考えてくれないか?一度行って、村にある宿屋のオークのシチューを食べたら、ンーマンも何とかしたくなると思うぞ。此処から遠くないからいってみたら?」

「分かりました。難しいかもしれませんが、何とかします。」


*****


「女将さん。村長に宿屋の隣の土地の利用許可もらえました?」

「はい、大丈夫でした。開拓したらそのまま私有地にしていいと言われました。」

「そうですか。良かったです。では、拡張工事に入りますが、今朝相談した間取りでいいですね。後でも変えられますけど、変更は早くにわかると楽なので。」

「いえ。あれで大丈夫です。」

「では、整地するので、その上に線で間取りを書いてください。はい、整地。」

女将さんとステラちゃんは地面に線を描いている。今は離れも入れて3部屋だからな。もっと部屋数欲しいよね。2階建てにする予定だ。今トイレは外に一つ。うーん、どうしたものか。風呂は欲しいけど、無理だよな。やめておこう。

「これでいいですか?ではやります。2階建てですよね。今の建物と繋ぐ感じでやります。」

土魔法で土台から一気に2階まで各階3部屋、全部で6部屋増えた。もう慣れだ。床にも壁にも断熱、防音の為の空間と俺のマイクロ糸をけば立たせた物を入れてある。小さい流しとトイレは各部屋についている。繋ぐパイプはかなり太くした。詰まったら掃除が大変そうだからつまらない位太くしたのだ。この宿は女性に優しい作りにした。ステラちゃん、トイレ掃除とか大変だけど頑張ってね。後は家具を入れて、窓をとりつければいいだろう。

「女将さん、ステラちゃん、各部屋を確認してください。良ければ窓を付けて家具作りを始めます。」

2人してうわーうわー言って回っている。OKが出たので、建物を硬化して、固定。以前山のように作った窓を取り付けて終わり。裏庭でベッドを12、椅子を6、テーブルを6、ドレッサーを6作って、各部屋に入れていって基本終わり。ベッドの布団をどうするか。ここまでしたらやるか。あのトランポリンベッドを。その前に女将さんのベッドを見せてもらった。普通に硬いベッドに毛布を何枚も重ねたベッド。良い匂いがする。試しにベッドの一つに俺の作った伸縮性がある幅広紐を格子状に貼って、毛布を3枚重ねてその上にシーツを張って、女将さんに寝てもらった。一寸赤くなっているのは恥ずかしいんだろう。

「どうですか?寝れそうですか?」

「はい、いつもよりずっと柔らかいし、良いと思います。」

「今晩から、試しにそのベッドで寝てもらって、問題あるか調べてくれませんか?腰や首が痛くなったりとかしないか。」

「はい、やります。」

「ステラも寝たい。」

「一寸今2人で寝てみてくれる。何か問題ある?」

「全然ないよ。」

「ありませんね。」

「分かりました。ステラちゃん用のベッドも作りましょう。問題なければ、他のベッドも全て変更するということで。」

これで、2人のモニターができた。トランポリンベッドは商業ベースに乗れるのか?楽しみだ。

「ターシャは寝るときベッドが硬いとか問題ないのか?」

「ないわね。HPが高いからかな。」

「そうか、そういうこともあるのか。でも柔らかいベッドの方が好きか?」

「そうね。選べるならばそちらを選ぶと思うわ。」

「ターシャのベッドも作り替えとくよ。」

「ありがとう。マスター。」


今使用中の部屋のベッドはみな新しく作り直した。嫌なら、元に戻そう。


その後、畑も拡張した。今まで4面ぐらいだったが、6面にした。2人とも魔力循環で力が付いたし、魔法も使えるようになったからだ。試しに水を出すように頼んだら出せた。

ステイタスを調べたら、生活魔法が増えていた。2人は大喜びだ。これで、竈の火付けも掃除も楽だ。毎日機会があったら使うように言っておいた。


ンーマンは今日は帰ってこなかった。


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