第101話 千里眼 開眼
10m位の櫓を建てよう。1階あたり高さ2.5mにして、4階だ。その中に階段をつける。天辺には壁を付け、のぞき窓を付け、竈を付け、煙突を付け、屋根を付けて、これでいいか。窓には木の窓を付けて、出来るだけ風を防ぐ。夏はともかく冬はたまらないしな。ベッドでもソファーでもいいように、低めのベッドを作る。二つ両側に竈を挟んで。これでいいだろう。
他の階には何もない。窓だけ四方にある。此処で感知をしたら、距離が延びるかもと思って、感知を発動してみた。あまり変わらない感じだ。位置の問題ではないらしい。俺も魔獣を倒して、レベル上げかスキルの練習をしないといけないよな。暫くまともにできていない。今できることをしよう。千里眼で魔獣が見えるか。俺はやればできるおじさんだ。諦めるな。
未だに30m先しか見えない。が、最初は0だったのだ。失敗だったのは、日本にいた頃の考え方のせいだ。前もあった。これは魔法だ。物理の法則なんかじゃない。ましてやインターネットなんか関係ない。魔法はただ信じて、するだけだ。俺は目を閉じて、ひたすら魔獣の巣を見たいと願う。魔力を操作して、目ではなく頭に魔力を送り込む。頭がズキズキする。ここでやめたらいつもと同じだ。さらに魔力を、ズキズキを。俺は意識を失った。その時何かが見えたような気がした。
朝。
ガヤガヤと声が聞こえる。目を開けるのもめんどくさい。何なんだ?俺は外を伺うように考える。下にいる多くの人達が見上げているのが見える。そうだよな。一晩でこんな櫓がたったらびっくりするよ。もちょっと寝かせて。
「マスター。朝ですよ。起きて。」
「ターシャ、寝かせてくれ。頭がズキズキするんだよ。」
「もう昼近くなのよ。朝の魔法の練習も私がしておいたわ。スライムに睡眠は必要ないんでしょう?」
「そうなんだが、この頭痛がな。」
「寝ていてもいいけど、人間の形になった方が良いわよ。こんなところ見られたら、討伐対象よ。」
「確かに。」
「マスター、今この櫓の下に何人いるか分る?感知を使わずに。」
「そうだな、12人?」
「正解。では、失礼するわ。」
俺はそのまま夜まで倒れていた。
俺はその夜は晩飯の後まで帰らなかった。
何度も気絶しながら、魔獣を見ていたからだ。もう嬉しくて片っ端から見ていた。今は、オークが50匹。ゴブリンが100匹。グリーンウルフが40匹。オークジェネラルが一匹いる。穴の中にはもっといるだろう。感知では100匹近い魔獣が地下にいるように感じる。
「これは軍隊の出動要請レベルだが、こっちにくるのかどうか。しかしグルゴウィル領側で魔獣除けを大量に焚いたりすればもしかしたらくるかもな。しかし、グルゴウィル領側で軍隊を用意しているようには感じないがな。」
俺は宿屋へと帰った。
「すいません、ご心配かけまして。」
「大丈夫ですか?」
「ちょっと無理して櫓作ったら、疲れすぎまして。横になってました。」
「今すぐ、晩御飯を用意します。」
「すいません。ありがとうございます。」
出てきたのはハンバーグだった。熱々のハンバーグを食べると、かなり旨い。
「美味しいですよ。もう身に付けたんですね。素晴らしい。」
「はい。何だか凄く上手にできるようになった気がします。」
「いい事ですよ。魔法の練習はどうですか?まずはンーマン。」
「魔力は感じられるので体中にめぐるせる練習を続けています。」
「私もそうですね。体が軽くなった気もします。」
「私も。楽に水も運べるようになったし、体中に魔力をめぐらせてます。」
「皆、素晴らしい成長です。そのまま続けてください。そのうちに意識しなくても常に魔力を体中にめぐらせられるようになります。頑張りましょう。そうなったら、その状態でいろいろやってみます。料理、掃除、勉強、格闘、何でもです。その内それが普通になります。するともっといろいろできるようになりますよ。頑張ってください。それでは、今夜はおやすみなさい。」
「ターシャ、魔獣の数だが、思ったより多いようだ。今確認できるだけでも300ぐらいいる。選択肢として、俺とターシャだけでダンジョンに行って、レベル上げして、殲滅するというのがある。」
「そうね。それが一番簡単で安全だと思うわ。でも、マスターが選ばないかもしれないとも思ってもいるけど。人間の出番がない。いつまでも私達が手助けできるわけではないしね。」
「その通り。それに、こっちに来るか分からないんだ。」
「それも困りものよね。マスターがしたいようにしたらいいのよ。殲滅するのだって、それはそれでしょう。」
「ただ、あそこからくるオークで肉の需給を賄っている部分もあると思うんだよな。」
「だとすれば、少し間引くぐらいね。」
「うん。」
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