第39話 自分の土地
スラム街の一室。
アブデインが目を覚ますと、目の前にフードを深くかぶった男が立っていた。
「お前がアブデインか?お前が俺を殺そうとしたのか?」
「待ってくれ、俺は知らなかったんだ。お前を殺そうとするなんて。」
「お前が命令を出したのは暗殺者ギルドで聞いた。責任を取ってもらう。」
「金ならいくらでも出す。」
「俺は命を取られそうになったし、取られてもおかしくなかった。ならば、同じような状況にしてやろう。」
「殺すのか?」
「俺が殺すのではない。だが殺されるかもしれない。俺はその状況を力で突破したが、お前の場合は、知識かもな。自分が知っていることを全部話せば助かるかもしれない。お前が俺を陥れた状況に似ているだろう?では、暫く寝てろ。」
俺は瓶の蓋を取って、睡眠薬を飲み込ませた。呪い以外の魔法は使えないふりをしとかないとな。こいつを抱えると、俺は飛びあがった。二人で飛ぶ練習だ。また、2日ほど時間調整をしなくてはいけないので、海に来た。土魔法で家を作り、アブデインを放り込んでおいた。
そして塩作り。あの時で1.5トン売ったわけだから。あと20トンぐらいあれば十分だろう。
*****
サシントン領 スポケーン街 領主城。
昼過ぎになったので、アブデインにスリープをかけて、約束通りサシントン領主に面会を申し込んだ。直ぐに通されて、デメトリアスさんが応対してくれた。彼は地図を持ってきていて、4箇所の土地を指して説明してくれた。悩んだが、結局南の端で辺境とマイクロフ聖王国に挟まれた広大な土地を選んだ。海からも割と近いし、南で暖かいし、マイクロフ聖王国に近いけど、そのうち高い壁がたつから大丈夫。戦争はおこさせない。
「デメトリアス様、その場所に行けば私の土地だと分かりますか?」
「行く途中にある、ケイレンソードという町の町長にこの書類を見せてください。彼が案内してくれます。」
「分かりました。それと、マイクロフ聖王国と戦争になるという噂を聞きましたが、問題ないでしょうか?」
「そんなことにはなりませんよ。心配いりません。」
「そうですか。安心しました。」言質を頂きましたよ。あの手紙が来てもそれを言えるかな。
俺はさっさと出て、次に師匠に酒を担いで会いに来た。
「師匠、スマイルです。友達の町に紹介したらぜひ来てほしいとのことでした。どのぐらいで準備できますか?」ドンと酒樽を置きながら。
「そうだな。挨拶回りとかはしなくていいから、明後日には出れると思うぞ。」
「この家は借り物ですか?」
「そうだ。だから持っていく物は、鍛治道具と魔力炉と材料とちょっとしたものぐらいだ。」
「いいですね。明後日の午前中でどうでしょう?どこかで馬車でも借りましょうか?」
「俺の持ってるマジックバッグに全て入るから心配いらん。ドワーフの国からくるときもそうだった。」
「身軽ですね。では、商業ギルドからのオタワ行きの定期便に乗って下さい。申し訳ありませんが、私はこの街を今日でないといけません。明後日の午前中にオタワで待ってます。今日はこれで失礼します。」
*****
次に、スポケーン街から南に行ったケイレンソードの町長にあって書類を見せたら、息子さんが案内してくれた。町から馬車で1時間ぐらいだった。そしてとてつもなく広かった。
「この岩から辺境までが奥行きで、ここから南北に5㎞ぐらい先にも岩がありますから、そこから辺境までですね。辺境のあたりにも目印の岩があります。広いですね。うちの町がいくつ入るのか見当もつきません。」
「分かりました。ありがとうございました。今日はここで試しに野宿してみますので、お父さんにもよろしくお伝えください。」
やったー、自分の土地だぞ。ホームレスだった俺が、公に手に入れた初めての土地だ。すごく嬉しい。あー、涙が止まらない。なんだかな。あの頃は、物なんて最低限あればいいんだ、なんて強がってたけど、やっぱり持っていることは嬉しいよ。俺は目印の岩をかえて、丸い柱にした。ギリシャのパルテノン神殿のような。それを二本建てた。更に四隅の岩の所にも柱を立てた。岩はそのまま置いといた。後で揉めたくない。最初の岩も戻しておこう。辺境側の岩の目印の横にも柱を建てて、今はこれでいいよ。はっきりとしたかったんだよ。いつかもっと別なものに変えると思う。さて、海に戻ろう。
*****
次の日の夜。領主城にて。
俺は、領主は執務室に、他の人は近くにいないことを確認し、アブデインを執務室の前の廊下に置いて、ノックしてそのまま天井に隠れた。領主様が扉を開けると、
「おうお、またか。呪われているな。デメトリアス、新しい呪われた人間だ。ちょっと来てくれ。」
「誰ですかこの人は?」
「わしが分かる訳ないだろう。寝ているようだしな、牢屋に移して、すぐに知らせをスレイニー司祭へ出してくれ。」
「身体検査はしますか?」
「先ずはスレイニー司祭だ。」
「カーズは今度は何がしたいのか…。」
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