エナドリ

 店を出た後、恭介たちに連絡したら近くの公園にいるとのことだった。


俺と大和もそこに向かうことにした。


「いや~それにしても魔法って色々あるんですね。ゴザル口調になるポーションかー」


「ほんと意味わからんでゴザルよなー」

「てかポーションって飲まなくても体にかかるだけで効果があるものなんですね」


「まぁそうなんでゴザルが、よっぽど余裕がないとかでなければ普通飲むでゴザルよ。ポーションって結構ベタつくでゴザルからな」


「へぇー。味はどうなんですか」


「色々種類があるでゴザル。さっき買ったやつはあんまり味がしないやつでゴザルな。ほんのり甘い香りがするってくらいだと思うでゴザル」

「そうなんですね」


「味がちゃんとついたジュースみたいなのもあるでゴザル。天姉が好きなやつとかは結構ジュースみたいな感じなんでゴザルが、俺はちょっと苦手でゴザル」

「なんでですか?」


「カフェインが結構入ってるんでゴザルよ。戦闘中にトイレに行きたくなるのは面倒でゴザルからな」

「なるほど~」


「それに俺あんまり炭酸得意じゃないんでゴザル」

「炭酸?」


「うむ。あ、いたでゴザルな」


話しながら歩いていると、公園に着いて恭介たちを見つけた。


「すまぬ。遅くなったでゴザル」

「遅くなりました~」


「うん。うん? ゴザル?」

恭介が首を傾げた。


「あ、もしかしてあれか? ゴザル口調になるポーション使っとんのか?」


「使ってるっていうか事故って体にかかったんでゴザルよ。にしても日向このポーションのこと知ってるんでゴザルか?」


「うん。それ昔げんじーが悪ふざけで作って売ったやつなんや。まだ売ってるとこあったんやな」

「なるほどでゴザル」


こんなふざけたもの一体誰が作ったんだろうと思っていたが、げんじーなら納得だ。


と、なんか大和が天姉の手元を見ている。


「えっと……」

「ん? なんでい? 餅が食べたいってんでい?」


「いや、餅はいらないですけど。天音が手に持ってるそれ」


天姉は手に缶を持っている。


「ポーションがなんでい?」

「どうみてもエナジードリンクですけど」


「ポーションって書いてあるでい。ほらここ」


「書いてますけど。でも見た目完全にエナドリじゃないですか」


「てやんでい。ポーションだってんでい。これ飲んだら眠気がスッキリするってんでい」

「エナドリですね」


「炭酸のシュワシュワが最高だってんでい」

「エナドリですね」


「高麗人参が効いてるってんでい」

「エナドリですね」


「親子丼の親とは何者でゴザったか」

「ニワトリですね」


「ニワトリのひなってなんて言うんやったっけ?」

「ヒナドリですね」


「ターゲットは生かしたまま捕らえろ」

「生け捕りですね」


「マスカットって何色やったっけ?」

「黄緑ですね。いつまでやるんですかこれ。ってかこの後はどこに行くんですか?」


「大図書館に行こうかなって思ってるけど」


「あれ、反魔の書の方はげんじーさんがアレなんで行かなくて良くなったんでしたよね?」


「まぁそうなんでゴザルが、大図書館には反魔の書以外にも色々有用な魔法書があるし、やっぱり行っといたほうがいいのでゴザル」


「へぇー。そういえば魔法書ってのはどうやって使うんですか? もしかして俺にも使えたり?」


「言いづらいんやけど、無理やと思う。理由は魔法陣が使えんのと同じ」

「やっぱり無理ですか」


「基本的に魔法陣と魔法書の仕組みは同じやからな」

「逆に魔法陣と魔法書じゃ何が違うんですか?」


「新しく魔法を開発するってなった時はまず魔法書を作るんや。それを使いやすいように簡略化したんが魔法陣」


「なるほど。数学でいうところの証明が魔法書、公式が魔法陣みたいな感じってことですかね」


「んー。その例えで合ってんのか分からんけど、まぁ大体そんなイメージかもな」

「なんか大和って絶妙な例えをするよね」


「そうですかね。ありがとうございます。まぁ魔法に関する理解を深めたところでどうせ俺には使えないんですけどね! はっはっは!」


「笑えないでゴザルよ……」

「不憫だってんでい」


「ところで反魔の書は魔法陣になってないんですか?」


「あれはマジで複雑すぎて魔法陣化できんかったんや。ってかそれをやろうとしてる時に危ないからって没収された。隠れてレプリカは作っといたらしいけど」

「はぁー。すごいですね」


「世界で唯一反魔法を使う方法やからな。とんでもない代物や」

「日向でも使えないんですか?」


「無理やな」

「反魔法かー。魔法を封じる魔法ってことですよね」


「せや。反魔法さえ使えたら桜澄さんにも勝てるかもしれんのやけどな。ってかそれが桜澄さんに確実に勝つ唯一の方法やと思う」


「流石にそんなことないでしょう。他にもなんか、例えば普通に数の暴力とか」


「仮に全人類と全魔族が一緒になって立ち向かっても勝てんでゴザルよ」


「え? でも今から魔王に交渉に行くんですよね?」

「うん。お偉いさんからの命令だからね」


「いや意味分かんないですよ。全員で束になっても勝てないんでしょ?」


「それがあの人たちには分かってないんだよ。僕たち四人と魔王が協力すれば先生に勝てるって信じて疑ってないの」


「あなたたちに対する信頼が裏目に出てるって感じですか。えーじゃあ魔王との交渉も結局は無駄ってことか」


「意味がないこともないんでゴザルがな。さっきの話がちょっと大袈裟ってのもあるでゴザル」


「さっきの話って全人類と全魔族が~のくだりですか?」


「うむ。ただ数を集めてもしょうがないんでゴザルよ。必要なのは強力な個。そしてその連携なのでゴザル。少数精鋭をガチればひょっとすると勝負になるかもしれんでゴザル」


「あーそういうことか。なんだ、一応意味はあるんですね。勝てる可能性もあるにはあるって感じですか。良かったです。危うくやる気なくすとこでした」


「勇者たるもの勝ち目がなかったとしても戦わなければならんでゴザルよ」


「はっ。確かに! 流石師匠」

「うむ」

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