「丁寧」と取るか「迂遠」と取るかで評価が分かれそうな作品

話の展開が非常にゆっくりなので、合う人と合わない人でかなり好みが分かれる気がする。

良く言えば「きめ細かく丁寧な」ストーリーテリングだが、悪く言えば「牛歩のごとく遅々として」話が進まない。

とはいえ、総合的には間違いなく高水準であり、作者の確かな実力がうかがえる。

特に、人(?)に対する解像度の高さは素晴らしく、エルフの形而上の神視点から高校生の形而下の人視点までの上下軸に加え、魔族の混沌・変革寄りの左翼性から政治家の秩序・保守寄りの右翼性までの左右軸もカバーしている。すなわち、マトリクス図のあらゆるタイプの人間に精通している。

そこに、微細な心の動きまですくい上げる網目の細かさと、それらのひだまで映し出す描写力が加わり、ただただ感心させられる。

また、ダンジョンアタックに対する見解の相違など、多角的な視点からさまざまな思想を併存させているのも面白い。例えば、即効性を重視し、ほどほどの成果を目指す「短期最適」(銃器によるパワーレベリング)と、基礎力を重視し、深部到達を目指す「長期最適」(カケル一行)の違いだが、単なる正誤論に留まらない多重性を描けている。

なお、異様に誤字が多いのが正直気になるが、全体から見れば些細なことではある。

懸念としては、上述のとおり、話の進みが極めてスローなので、途中でエタるか、完結前に作者(または自分)が亡くなるのではと思えてしまうこと(ベルセルクやグインサーガのように)。

個人的には、話自体は読み応えがあるものの、進展がなさすぎて400話あたりで辛くなってきたので星2評価としました。