「画面」で読むということ。改行、空白が多い理由

 そのような小さな画面では、小説の形はどんな風に変化するのでしょう。


 まず、紙の本のような縦書きにはできません。ページ数が膨大になるからです。そして細切れになるほど、前のエピソードで言った通り、読み返すことができなくなり、記憶にも定着しにくくなる。


 するとスマホのスクロールに合わせて、文章は横書きになります。でもこの横書きというのがくせ者で、小説で作られてきた文章と、さらにスマホの小さい画面との相性が非常に悪い。例えば、


< 俺はタブレットでその箇所を探して指差した。


「でもそんなの現実でもよくあることだろ」


「これは小説だ。現実じゃない。小説には説明がいるんだよ。理由。別にはっきり書けと言ってないけどな、示唆することもできないんじゃ読者は納得しないし、ついてこない」


「そうかなあ。難しいこと言うなあ」

 

 岩橋は頭をかきながら、不服そうに口を尖らせた。

『千手』は、小説が書ける。素人の目には一見>


 これは私の書いた短編小説の一部です。ちゃんとWebの形式に合わせて、行を開けています。でもこれを従来の紙の小説の書き方をそのまま持ってくると、


< 俺はタブレットでその箇所を探して指差した。

「でもそんなの現実でもよくあることだろ」

「これは小説だ。現実じゃない。小説には説明がいるんだよ。理由。別にはっきり書けと言ってないけどな、示唆することもできないんじゃ読者は納得しないし、ついてこない」

「そうかなあ。難しいこと言うなあ」

 岩橋は頭をかきながら、不服そうに口を尖らせた。

『千手』は、小説が書ける。素人の目には一見>


 ……どうでしょうか。途端に読みにくくなったと思いませんか。


 でも、同じ文章を縦読みにし紙に移し替えると、下の方が読みやすいのです。紙の本で間が空きすぎていると、かえって読みづらくなります。


 上に挙げた例は一部なので、たいして読みにくさが変わっていない人と思う人もいると思います。でもこれが、スクロールのずっと下まで続いていたとしたらどうでしょう?


 ページや、全体のどこ、という情報の乏しいスマホの画面で、自分がどこまで読んだのかすぐに見失ってしまうのではないでしょうか。


 


 


 

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