Web小説の特性

 前のエピソードで、異世界転生ものなどの「テンプレ」が、読者や作者にとって「簡単創作キット」の役目をはたしていると書きました。


 それが双方にストレスフリーの状態にしていると、では、どうしてそうなるのでしょうか? 人間は、現代の人間は便利になったあまり、堕落してしまったのでしょうか。


 私はそうではないと考えています。人間が、堕落していなかった時など、残念ながら古今東西、色々な作品を読んできても、ありそうもないです。


 では、なにが、そのような「テンプレ」を流行らせているのか。


 一つはもちろん模倣です。


 何かがヒットすると、著作には権利があるけれど、その形式にはないので、みんなが真似します。昔、ファンタジーの国イギリスでは、「指輪物語」がヒットして、その世界観を真似た判を押したような小説が大量に書かれていると、ハウルの動く城の原作者のダイアナ・ウィン・ジョーンズさんが著作でおっしゃっていました。


 私は今そのイギリスでどうなっているのかは知りませんが、とにかく、創作というのは、模倣から入ります。


 それは否定しようのないもので、私が書くものも、何かの影響があって書くことができています。もちろん、そのまま使うことはありませんが。


 異世界転生ものの世界観が「簡単創作キット」の役目を果たしているとは、もう何度も言っていますね。


 でもそれだけではないと思います。それだけならば、もっと多様な面白い作品が生まれて、認知されてもいいはずです。別に異世界に転生しなくなっていいし、ファンタジーでなくてもいいはずです。


 しかし、そうはなっていない。猫も杓子も転生してやり直す時代です。皆死にたがっているんでしょうか? そうかもしれないけど、そうではないと思います。


 私は作品の多様性が生まれない原因、あなたの書いた小説が埋もれる原因について以前書きました。ランキング、新着小説、レビュアーの不足、タグの限界、もちろんそれらも理由の一つでしょう。


 でもそれだけでは説明できないこともあると思っています。

 ランキングは確かに同じような作品を生む要因の一つになっているのかもしれない。でもランキングだけでは、本当にすべての小説投稿サイトが異世界転生ものに埋め尽くされるとは思っていないのです。


 私はその理由の一つに、「Web小説の形態」というのがあると思っています。おそらく、その特性のせいで、人々は異世界転生ものに代表される「テンプレ」の作品しか「読めない」のです。

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