埋もれない作品もある

 こんなタイトルで書くと、「そうだ、俺の作品が埋もれるはずがない。俺の作品はそこらにはびこる凡百の作品と比べ、独自性があり、文章、構成も凝っていて、素晴らしい、もっと読まれるべき作品なんだ」

 と思う人が読みに来ているかもしれません。それはたぶん、そうなのだと思います。あなたの作品は素晴らしい作品なんでしょう。


 もしくは、もっと切実に、勉強熱心に、自分の作品がもっとたくさんの人が読まれたいから、そのために秘訣を知りたい、と思ってくるかもしれません。


 でも、そのようにあなたが苦労して書いた「素晴らしい」作品が、“必ず”埋もれると書きましたね。私は、それを訂正するつもりはありません。


 私の考えでは、

 ほぼ、例外なく、あなたの作品は埋もれます。

 そして一度埋もれると、浮き上がることはまずありません。それはあなたの作品がダメだからではなくて、そのようなシステムがないからです。


 私はどんなに素晴らしい作品を書いても、現状ではそれをすくい上げるシステムは存在しないと思っています。


 もちろんそういった作品が誰かによって発見され、拡散されることも、あり得ないことはないかもしれませんが、ほぼ、ないと言っていいでしょう。


 では埋もれない作品と、埋もれてしまう作品の何が違うのかというか、というと、私がすべて理解しているわけではありませんが。それは現状、「流行」のジャンルを書いているかどうかだと思います。つまり「なろう系」「異世界転生もの」「悪役令嬢」「ざまぁ」「BL」「チート」などの傾向をもつ「テンプレ」作品のことです。

今、小説投稿サイトで、埋もれたくないなら、それを書くしかない。


 逆に言えば、あなたの作品が既存のジャンルを横断するような意欲的、実験的な作品で、「文学的」で、素晴らしいものだとしても、その「流行」に沿っていない、というだけでほぼ、読まれません。


 そしてこれは何も、人々がそうしたものを求めなくなって堕落しているとか、国語力の低下とか、それを求める人が云々の話ではなくて、私は、小説投稿サイトの構造的問題、または、Web小説を読むという行為が人間にとってどのようなものなのか、ということだと思っています。


 


 

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