第33話 ユーノのお願い
俺は新たに目的を見出して、ちょっとだけ吹っ切れた。
受付室を出ると、気絶していた間にキャル鑑定士が話していた『通過儀礼』について、エドウィンに伝えると、
「…………知ってたけどな」
やはり、ちょっとへこんでいる。だって、そうキッパリと「絶対結婚しない」って言われるとな……。
「……別にいいよな。本気にしてなかったし」
「……おぅ」
なんとなく二人でモヤッとしつつ廊下を歩いていると、珍しくユーノを見かけた。
真剣かつ深刻な顔だ。……嫌な予感しかしない。
俺たちに何か仕掛けるのは本当にやめてくれ。
学長だって、ユーノに期待しているからこそ一年生なのに代表に選んだんじゃないか。
恐らく本人にも、それを伝えているだろう。
……なのに、ここで俺たちに何か仕掛けたら、学長はユーノを処分するしかなくなる。
Sランクのアイテムハンター候補生って、俺を顎で使おうとした連中ですら態度を翻すくらいなんだから……。
とか考えてゲンナリしていたら、ユーノが俺に気付いた。
「あぁ、兄さん! ちょうど良かった!」
朗らかに話しかけてくる。
「…………どうした?」
警戒しつつも尋ねると、両手を合わせて顔の前に持ってきた。
「お願い! 一度だけでいいから、代理で僕と組んで!」
…………。
まだ諦めてなかったのか。
俺はため息をついた。
「……どうしてまた。別に違反じゃないけど、学長が許すわけがないよ。お前と組む、ってことはエドウィンと任務をこなせなくなるってことだから」
「わかってる。……けどさー、今のバディってホント使えな……っ、あっとゴメン、兄さんと違いすぎて、自分で兄さんのやってたこと覚えた方が早そうなんだよねー」
アハハ、とユーノが明るく笑う。
……笑えない。
そして、自分でやった方が早いという域に達してしまった弟を、どうしたらいいのだろう……。
はぁ、とため息をついた。
そして、エドウィンを見る。
エドウィンが肩を竦めて両手を広げた。
「心配なら、教えてやりゃあいいだろ? 別に一日くらいならかまわねぇよ。……つーか、俺もハムザに言いたいことがあっから、借りるわ」
「よし! じゃあ、バディの許可も出たことで、よろしくね、兄さん!」
俺はユーノを呼び止めた。
「待てよ。あくまでも『学長の許可が出たら』だ。もう、俺の立場は俺が勝手に出来ないところにいる。違反行為ではない、だけじゃどうにもならないんだよ」
というか、義母が来てからずっと俺の勝手に出来ない気がするけど、言わぬが花かな。
「わかってるって。学長に許可を取るよ。……でも、学長も許可すると思うよ? 僕が苦労しているの、学長のせいだもん。あの人が僕と兄さんのチームを解消したんだから」
……確かに。
解散に積極的ではなかったユーノと、無回答を貫いていた俺を解消したのは学長だ。
そのせいで俺とエドウィンはうまくいったがユーノは貧乏クジを引かされた。
引き継ぎくらいは……って思うだろう。
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