第28話 アイテムハンター式報復

 その後の、ミーミルアカデミー生の対戦が盛り上がらなかったのはお察しだろう。

 俺とエドウィンはめっちゃ笑ってやった。

 ミーミルアカデミーの二人も、アウズンブラアカデミーの二人の戦いを見た後だと何も言えないらしい。

 ショボい敵とショボく戦って、ひっそりと下がった。


 ……が! 返すわけにはいかないね!

 まだ俺たちの戦いが残ってんだよ!!


「……だるいんだけど」

「勝手にやりなよ。帰るから」

 胡乱な目でこちらを見ながら引き上げようとするミーミルアカデミーの二人に俺たちは立ち塞がった。逃がすかよ!


「あァん? テメェら、あーんなショボい敵とショボく戦って、『もう疲れまちた~』って帰るってか? ハッ! ミーミルアカデミーってのは、ホンット大したこたねーんだな! 自慢の魔法もアウズンブラアカデミーどころか俺らにも負けてるし、達者なのは言い訳だけかよ!」

 エドウィンが煽りに煽りまくっている。

 何しろ、アウズンブラアカデミーの二人も参加するのだ。賑やかしと言い切っているがヴァルキリーアカデミー生も参加する。ここで不参加にしたらミーミルアカデミーはセイバーズ協会に、それこそ口ばっかり達者で実力がないと思われるだろう。


 いや、俺が末代まで広げてやる。


 エドウィンが顎を上げ、見下しながらさらに煽る。

「テメーらこそ、俺のバディを疲れさせて実力を出させなかったって手口を使ったのかよ! そんなに俺らが怖いのか? ヨワムチ君たちがよォ!」

 戻ってきたスノウ様が大喜びで、「ヨーワムーチくーん。にーげるーのかー?」と囃しながら二人の周りをぐるぐる飛び跳ねている。すごい煽りようだ。この二人、ある意味組ませたら最高かもしれない。


 ミーミルアカデミーの二人のこめかみに血管がピキ、と浮いた。

「雑魚狩りも満足に出来ない連中が、よくもそれだけ言ってくれたよね?」

「口達者なのはどちらか、わからせてあげるよ」

 乗ってきた。

 はっはっは、バカめ!


「お待たせいたしましたぁ! 最後、ものっすごく盛り下がったので最後に一発盛り上がる催しを行いたいと思いまーす! 司会あーんど判定員は、ワタクシ『キャルちゃん』こと、キャル・ライグレが代わってお届けしたいと思いまーす!」

 キャル鑑定士がノリノリかつキャラ全開で司会をやっていた。


 召喚の魔法陣は合計八つ。

 チームごとに二つずつ小さいのと少し大きいのがある。

「こちら、初級魔物、スライムとオークの縛りで召喚いたします! 初級だと召喚が楽ですね! 中級以降は召喚が失敗しがちで、先ほどのような事故が起きてしまいます! 皆様も召喚魔法には気をつけてくださいね~」


 なるほど。

『中級魔物をランダムに召喚』という縛りで召喚するのは無理らしい。

 なので、『中級魔物が出る辺りの魔物をランダムに召喚』と指定して召喚したら、そこの紛れ込んでいた上級魔物が喚ばれてしまったのが先ほどの事故だった……とキャル鑑定士が説明していた。


「では、いよいよ始まります! こちらの対抗戦はアイテムハント! 我がエーギルアカデミーが誇る、Sランクのアイテムハンター候補生を不眠不休でこき使いやがったおバカさんたちが売ってきた喧嘩を、高値でお買い上げさせていただいた対戦です! 全員、Sランクのドロップアイテムが出るまでやめるんじゃねーぞコラァ! うちのラッキーボーイズをナメんなぁ! ……あ、ジミー君エドウィン君、スライムのSアイテムは私の分も含めて二つ……え、三つ? 三つだって! 三つ出してね!」

 なんか要望を付け加えられたんだけど!?

 セイバーズ協会がざわついて、前のめりになってる。


「……まぁ、いいけど。石もたくさん拾っていたし」

「んじゃ、俺はオークを殺るぜ」

 まだ連携はあんなふうに出来ない。

 でも、役割分担なら出来る。


「始めッ!」

 キャル鑑定士が振り上げた手を下ろすと、さっそく召喚されたので俺が石を指で弾き、エドウィンは槍を投げた。

 ダンジョンでさんざんやったので、もはや作業のように出来る。

「……えっ? も、もう出ましたぁ~! スライムのSアイテム、虹色ローションです! 最高級美容液、早くもゲットぉ! ……ちょっと待って、肉も出た!? 続いて、オークのSランクドロップアイテム、稀少肉もドロップです!」


 さすがのスノウ様は俺たちとほぼ同じ速度で倒したが、他は詠唱したり走りよって攻撃したりしていて、倒すのすらまだだ。

「手慣れています! もはや作業ゲー!」

 と、キャル鑑定士がノリノリだ。そして目はスライムのドロップアイテムに釘付けた。


 エドウィンが見下した目でミーミルアカデミーの二人を見る。

「あァ? 雑魚相手にずいぶんと時間がかかってんなァテメーらはよォ!」

「……お前らと違って雑魚なんて狩り慣れてないんでね!」

 と、言い返してきたので俺はせせら笑った。

「……他の魔物も狩り慣れているようには見えなかったけど。エドウィン、どう思う?」

 石でスライムを瞬殺しつつエドウィンに尋ねた。

 エドウィンも、槍を投げつつ、

「ボクちゃんたち、なーんも狩り慣れてないのぉ~、ってか?」

 嘲けり笑い合うと、そうとう頭にきたらしい。

 時間差で爆発する魔法を組み、それで数体を倒してきた。

「あー! ちょっと!? ドロップアイテムを破壊してどーすんのよ! アイテムハントの意味わかってる? 魔物を倒すことではなく、アイテムをゲットする対戦なのよ? 肝心のアイテム破壊したら意味ないでしょうが! バカ!」

 キャル鑑定士がミーミルの連中に説教していた。


 俺はその間に二十匹ほど倒し、無事虹色ローションとやらを三つ出した。

「終わりだ」

「んじゃ、俺もやめっか」

 肉は四つか。エドウィンの方が出がいいな。


 俺たちは、キャル鑑定士に「ノルマ達成。終わりにする」と宣言し、戦利品が積み上げられたところからSアイテムを取ってきた。

「「「え?」」」

 全員が放心する中、俺は空間魔法からバーベキュー用のグリル台と作業台を出す。

 エドウィンがグリル台に火を点け、俺は肉を適当な厚みに切って塩とスパイスを振った。

「は……はあぁぁあ!? ちょっと二人とも、何やってんの!?」

 キャル鑑定士が地で叫んだ。

「取るのが目的だろ。納品しろとは言われてねぇ」

「ローションも回収したから。納品しない」

 全員、絶句。


 俺は肉を網に乗せると、エドウィンに言った。

「前獲った、特級だかの体力回復薬で乾杯しようぜ」

「いいぜ! ここで飲まなきゃやってらんねーよな!」

 エドウィンも大賛成らしい。

 俺は収納していた特級体力回復薬を取り出した。

「かんぱーい!」

「おつかれ!」

 二人で瓶をぶつけ合い、一気飲みする。

「……おぉ! マジで特級じゃん!」

「確かに。最初から飲めばよかった……」

 って思うくらい、即効性があった。

 身体の中に残っていた眠気と疲れが全部消えていった。

 そして二人で肉をむさぼり食う。

「ウメェ!」

「いやー、やっぱ美味いなー。また狩ろうぜ」

「おう! なんか最近、出が良くなってきたからな!」

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