ちょっと年上の女の子

らすく

第1話 堤防での素振り

 僕は、高校の硬式テニス部員です。中学の頃は軟式テニスをしておりました。テニスは大好きなのですが、センスがなくてなかなか上達しません。


 週末の空き時間は、河原の堤防沿いでひたすら素振りをしております。


 ブンブン、ブンブン、スイングの音だけは鋭い・・・・。素振りをこなした数では、誰にも負けない自信があります。


 ブンブン、ブンブン、ブンブン・・・・・・。・・・・・・?なんか、気になります。


 なんか、視線を感じます。


 あ、堤防の上から僕を眺めている人がいます。やっぱり、僕をみているのでしょうか?


 でも素振りをみられているところで、僕がその人に話しかける理由もないし、勇気もありません。


 ブンブン、ブンブン、しばらくブンブン・・・・ブンブン・・・。


 「君、凄いねえ・・・・。」


 ・・・・・・!! ドッキとしました。


 「は、はい・・・・・」僕は、どのように反応して良いのか分からずに、相づちを打つだけでした。話しかけてきた人が、どんな人か見てみました。


 僕よりもおそらくちょっと年上の女の子でした。いきなり知らない人に話かけられて、思わず言ってしまいました。「僕の何が凄いのでしょうか?」


 「だって、これだけの回数スイングしてスピードが落ちていないんだもん。」ちょっと年上の女の子は、少し笑って答えてきました。


 「君、桜田高校のテニス部員なの?たぶんそのユニフォームならそうかと、思うけど。」女の子は、質問を返してきました。そして、僕の方に近づいてきました。


 結構、至近距離まで近づいてきました。僕が小柄なせいもあるけれど、その女の子は長身でした。髪は長いストレートで、ちょっと昔風な、でもとても可愛いというより美人さんでした。


 その女子にテニスを教えてもらいました。部活動で練習はするけれど個人的に細かくフォームをチェックしてもらったことはありませんでした。


 「ふうん、最近のラケットは使いやすいし回転もよくかかるね・・・。」女の子は、何故か最近のという台詞を使いました。


 「うーんはひょっとして最近の硬式テニスのストロークは、ドライブショットがはやりなのかな?」女の子は、僕に質問してきました。


 「えーと、ドライブショットってなんでしょうか?」僕は質問に質問を返してしまいました。


 「あー。専門的に言うと、腕の動きで意図的に順回転をボールにかけるのをスピンショットと言うのは分かるかな。」女の子が説明しだした。僕は分かっていますと、うなずきました。


 「それでね、スイング全体で順回転をかけるのをドライブショットと言うんだよ。スピンショットに比べたら回転量は少ないけれど、スピードは速いから攻撃しやすいよ。君は男の子だし、最近のラケットは性能がいいからドライブショットがいいかなと思うよ。私は女子の割には体格が良くて力も強かったから、ドライブショットをメインにテニスしてきた。ドライブショットは、フラットよりも回転がかかって、スピンよりもスピードのある使いやすいショットだと思うよ。」その女の子は丁寧にドライブショットについて、説明してくれました。


 


 休み明け、部活動で練習してたら、顧問の先生が声をかけてました。


 「お、なんかフォームが変わったな、振り抜きが良さそうだから良くなっているんじゃないか。」


 珍しく先生に話しかけられて、しかもちょっと褒められて僕はうろたえてしまいました。僕の心の中で、河原の堤防沿いでの練習で上達していることに確信が持ててきました。


 


 その日の夜、僕は疲れてかなり早めに寝てしまいました。眠りが深くなってきた頃・・・・。僕は霧の仲にいました。テニスラケットを持っています。(僕は夢の中でも練習しているんだ・・・・。)夢と分かっていても、僕は練習していました。


 「ストロークはだいぶ上達したね。これならシングルスでレギュラーを狙えるかもしれないよ。」例の女の子は、夢の中にまで出てきました。河原の堤防沿いの時とはちょっと違うどっか遊びに行くような服装で、その女の子は僕に声をかけてきました。まさか現れるとは思わなかったので、僕はとても動揺していました。


「夢の中に現れて驚いてるね。でもね、君は短期間で上手になっているから夢の中でも練習につきあってあげるよ。」夢と分かっていても、女の子はリアルに話しかけてきます。何となくいつも以上に、女の子が魅力的に見えてきます。気のせいでしょうか?


 「いつもより私の色気は2割り増しだよ。」女の子は僕の考えを見透かした様に、図星をついてきました。


 「夢の中だから、なんでもありだよん。」その娘は、すこし舌をだしてふざけていました。


 でも、テニスの練習はまじめにやりました。




 その後も僕はテニスが上達し続けました。夢の中でも練習するけど何故かそれも効果がある様でした。そして、僕にとって結果を出すチャンスが訪れました。部内大会が開催される事になったのです。この部内大会は全テニス部員が参加できます。試合での戦績は、公式試合での参加メンバー選考に関係してくるのです。瞬く間に部内大会の日に近づいてきました。正直今までの練習は励みになっていたのですが、試合に関してはとての不安でした。なぜなら練習はたくさんしてきたのですが、僕にテニスの試合の経験はあまりありません。でも、その不安から僕は先に進むことになりました。




 またその女の子と、堤防で練習をしていました。僕は近々に部内大会があること、そしてそれが硬式試合の出場メンバーにはいるチャンスであることを彼女に話しました。


 「不安なんだね。」女の子は、僕の気持ちが分かっていました。


 「でもね、不安なのは君がテニスが上達したからだよ。結果をだせる可能性があるから、逆に怖いんじゃないかな?」彼女は心配なさそうに僕を見て言いました。


 「一つだけアドバイス。相手の打球を返していくだけで十分攻撃になるから、粘って相手を根負けさせたら勝てるよ。」何故か、その女の子は自信ありげでした。僕は無理矢理に納得してしまいました。


 「部内大会頑張ってね。」彼女は笑っていましたが、ちょっと寂しげな表情でした。




 そして、部内大会が開催されました。シングルのリーグ戦の形式で行われました。しかも、いきなり我が高のエース級の選手と試合をすることになりました。


 「最近頑張ってるな。お前と、手合わせするのを楽しみにしてたぞ。」対戦する先輩から、思いもよらない言葉をかけられました。そして、先輩の口調はとても暖かい感じがしました。


 試合が始まりました。僕のサーブからのプレイ開始です。いざ始まると、緊張がほぐれてきました。なんと1ゲーム目は僕が先取しました。その後も僕のプレイは連日の練習の成果が十分に発揮されました。でも、次第に対戦相手の先輩が自力を出してきて逆転負けしました。


 「強くなったな。俺も頑張らないといけないと思ったぞ。ありがとうな。」先輩から予想のできない言葉をもらいました。


 この一戦で僕の自信がみなぎることになりました。その後の試合も僕は善戦を続けて、結果としてリーグ戦の勝ち越しの成功しました。


 なんと僕は対外試合のレギュラーに選出されました。部内大会の前からは想像できなかった事です。


 


 僕は、レギュラーになったことを真っ先に報告したい人がいました。言うまでもなく、あの女の子です。


 休日はいつも通りに、堤防に練習にいきました。しかし、その日は、その女の子は現れませんでした。


 一週間、二週間、そして一月たっても、女の子には会えませんでした。




その女の子には、とても感謝しています。実際に会って是非お礼を言いたいです。しかし僕は、練習量を落とさずにレギュラーに定着し続けていくうちに彼女の記憶は薄れていきました。




 充実した高校テニスの日々を送っていた、ある日の事でありました。


 最近ブレイクした若手テニスプレーヤーの特集をテレビで見ました。


 僕は自分の目を疑いました。その若手の女子テニスプレーヤーは、あの女の子でした。


 


 確かに彼女との練習は、夢の様でした。と、いうか僕の妄想と言っても過言ではありませんでした。


 だから本当は彼女は存在していなかったのではないかと思っていました。


 


 「そうだ、きっと彼女は僕の想像だったのだ。きっとこの女子テニスプレーヤーをどこかの本とかでみて、僕の潜在意識に入っていたんだ。」僕は自分自身で納得させていった。


 だとしたら、僕は自分自信の地道な努力でテニスが上達したことになります。少し不思議なのですが、そうとしか説明がつきません。


 テレビに中の彼女と目が合いました。僕はドキっとしました。まだ彼女に対して未練があるようでした。


 (自分は、何という女々しい男なんだろう・・・・・。)




 またまた、日が流れていきました。我がテニス部において、一つのイベントが起こりました。


 部員の希望者達で、国内のプロテニスの試合観戦に行くことになったのです。無論、おの彼女のことが気になり出しました。


 (気になっても仕方がないじゃないか・・・・。)僕は自分自信で、正気に戻るように促しました。




 彼女の試合を見た。彼女は僅差で競り勝った。その試合後に僕と彼女は目があった。彼女は、優しく微笑んだ。僕は彼女が、僕の練習につきあってくれた女の子という確信を持った。たとえ僕の妄想だとしても。彼女と言葉を交わさなくても、そう感じている。




 それから後、僕は前向きに考えました。と、いうのもこのままでは僕は、ただの妄想狂と言うことになります。彼女がなぜ僕のテニスの練習に付き合ってくれたのか、それとも僕の妄想なのか、確認をしたいのです。何とかして声をかけられないか、手紙を出せないか、さまざまな方法を模索していきました。




 ある日、その答えが出ました。僕なりの真剣な回答です。その基本方針は大まかにはこうです。ずばり


その女の子と同じ立場の人物になるのです。ぼくがプロテニス選手になってみせることです。無茶な目標とうのは自分自身分かっております。しかし、このまま夢のままで終わらせたくないのです。たとえ夢のままでいたほうが幸せだとしても・・・・・・。




 僕は、この週末も川沿いの堤防に素振り練習に行くことにしました。いつの日か必ず・・・・・。




 

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