冒険者ギルドのマスターは楽しい
天道
第1話 冒険者ギルドの始まり
朝の日差しや小鳥のさえずりなんかで目を覚ますというけれど、私は街の賑やかな活気で目覚める。寝ぼけている私は目を擦りながらベッドからおり、窓際に立つ。窓の下からは朝市がやっているのが目に映る。
「うーん...... もう朝なのかー。眠いな~」
腕を伸ばしながらクローゼットへ向かう。
いつもの服を着て、顔を洗い、歯も磨いた頃にはいつもの通りの私になる。
「さて、今日も1日やってこー!」
私は部屋を出て階段を下る。
1階は大広間になっており、カウンターや掲示板、冒険者の人が待ち合わせや食事などをするためのテーブルや椅子が並んでいる。
「あ、おはようございます。ギルドマスターさん。」
カウンターの奥からブロンドの髪に可愛いヘアアクセが付いていてワンピーススカートがとっても似合ってる女の子が現れる。
「おはよう、スイちゃん。今日もかわいいね。」
「ギルドマスターも可愛いですよ。」
これもいつものやり取りだけど、スイちゃんは私の言葉に少し照れたように言葉を返してくれる。うん、かわいいな〜
スイちゃんはうちのギルドの受付嬢で昔冒険していた時に出会ってそこで
「まだギルドを開けるには早いけど、始めちゃおうか。」
「はい。ではオープンしますね。」
そう言うとスイちゃんは扉の方へ向かい、看板をひっくり返す。
それと同時に一斉に人が入ってくる。その人波にスイは流されるのは鉄板。その人たちの目的地は受付カウンターなのでスイちゃんは自力で復帰する。
朝は依頼をしたい人達が依頼書と一緒にやってくる。
「みなさーん。並んで待っていてくださーい!」
揉みくしゃにされていたはずなのに服も髪を一切乱れていないスイちゃんはいつものポジションにつき声をあげる。もちろん笑顔を絶やすこともなく、すごいな!
しかも依頼書を一人で捌きあっという間に人混みがなくなる。
なぜ朝がこんなに混むかというと緊急の依頼はもちろんあるが、大抵は納期を少しでも短くして報酬額を減らしたいというのが狙いらしい。1日で手数料とか結構変わるらしいからこうしてオープン直後は人が押し寄せるのだ。
「はい。いつもの薬草集めですね。そちらは討伐依頼みたいですね。」
スイちゃんは全ての依頼書に目を通しジャンルごとに仕分けていく。
朝の行列は瞬く間に解消し、一時の静寂が訪れる。
その間にスイちゃんは依頼書を掲示板に張り付ける。採取依頼に討伐依頼や遠征依頼までそれは様々な依頼がやってくる。それをさらに難易度などを考慮してそれぞれ受けられる冒険者ランクを指定していく。
相変わらず手際がいいなー などと思っていると、スイちゃんが1枚の依頼書を持って私の方へ駆け寄ってくる。
「ギルドマスター、こちらを。」
「なになに〜?」
渡された依頼書には【イナマウゾウの突角】と書いてある。
依頼者はこの街の薬剤師の【ヤナギ】さんからだ。
「このクエストは今の
「うーん......」
イナマウゾウは大きさが人より遥かに大きく、その上一撃の威力は凄まじい。性格は温厚なためこちらから手を出さなければ基本的にはなにもしてこない。
だが、今回は角を手に入れる依頼のため戦闘は避けられない。現在
「しょうがないな。これは私がやろうかな。」
「ギルドマスターが?」
「うん、そう。少しギルドから離れちゃうからその間はみんなをよろしくね。」
「は、はい!」
さて、準備運動といきますか。
私は出入り口から外に出ると眩しさのあまり手で太陽の光を遮る。
ここは心地の良い風が吹く【首都カトランゼ】のお膝元の【シュランゼル通り】
商店や闘技場などはもちろんのこと1歩裏通りに入れば闇商売なんかもあるカオスなところに私の冒険者ギルド【ユーフォニアム】はある。
検問所が近くカトランゼに訪れる冒険者はうちで登録する人が多い。冒険者は報酬の受け取りなどで生計を立てているからギルドの存在は不可欠だね。
「さて、近くにイナマウゾウがいるのは...... 【フォルビー山脈】かなー」
私は検問所を抜けると記憶をたどりイナマウゾウの生息地を思い出す。
目的地までは距離があり、徒歩だと行くだけで1日経ってしまうだろう。
「さっさと行ってきますか。」
私は風を足に集めるイメージをする。
すると実際に足に風が集まり私の身体を浮かしてくれる。詠唱? 昔はしてたけど今はイメージだけでこの通りなんだよね~
「問題はスカートだとパンツが見えそうになることだよね...」
特に装備もなにも準備しておらず、普段着のまま出掛けているのでスカートがヒラヒラと靡く。
まぁ、パンツなんて見られたところで所詮は布なのよ、うんうん。
「少し速度を上げて行こう。あまり時間をかけたくないからね。」
空気抵抗を少なくし、加速をする私。
空の上なので誰かと接触することなんてあるわけもなくあっという間にフォルビー山脈の麓までたどり着く。
イナマウゾウは大きいので上から探せばすぐに見つかると思ったが、数が少ないのか見渡しても存在を確認できない。
「うーん。いないかなー。」
キョロキョロと見渡していると、イナマウゾウの姿を見つける。
「あ、いたいた!」
しかし、よく見るとイナマウゾウが暴れているのが分かる。周辺の木々や地面が荒れている。
「【
普段はコバルトブルーの瞳の私ですが、鷹の目を使うと片目がルビーレッドに変わる。断じて充血とかではない! 決して!
鷹の目で確認するとイナマウゾウは前にいるなにかを追いかけているように見える。
私は上空から一気にイナマウゾウに接近する。
こっちもイナマウゾウに用があるし、詳細なことも行けば分かるだろうし。
私は旋回し、イナマウゾウの前に回り込む形で追い抜き、少し先のところで滞空する。
い「悪いけど、角もらうね。」
足元に魔方陣を展開し、魔力を全身に込める。
『祖は始まりの風。棺は万物これ全てを拒む。刻むは精霊の息吹、刻の風―――』
荒ぶっていたイナマウゾウは突然見えない壁に阻まれ動きを止める。前後左右全てを封じられ身動きがとれない状態になる。
「せめて苦しまないように一瞬で終わらせるから【
イナマウゾウを閉じ込めていた空間ごとエメラルドの風が包む。内側がどうなっているかは分からないが風が止む頃にはイナマウゾウの姿はなく、目的の角が残っていた。
「よし、任務完了♪」
私は周囲を気にもせず角へ近づく。
「え......あ、ピンク......?」
私は怯えた声のする方を向くと、一人の少年がいた。顔を手で覆っているが指の隙間が空いているのでこちらが見えているだろうことは間違いない。
ピンク...... 今日の服は普段愛用している淡い緑を基調とした服でピンクは入っていない。
うーん、今の私が持ってるピンクというと―――【下着】しかないなかった。
私は考え込んだ数秒後、顔を赤くして叫ぶ。
「変態ッ!」
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