再会2

 担任の三浦先生が教室の扉に向かって

「入ってきていいぞ」

と言った。


教室の扉が開かれ、女子生徒が入ってきた。


緩い表情を浮かべているその生徒は俺の初恋相手。

白石天音だった。


「!」


驚きすぎて声が出なかった。

俺はただ間抜けに口を開けたまま白石を眺めた。


白石は黒板に自分の名前を書くと

「白石天音です。こんなよく分からん時期に転校? してきてしまいましたけど、受け入れてもらえるように頑張るので仲良くしてやってください」


クラスメイトたちが拍手する中、俺は動くこともできずにいた。


そんな俺に白石が気づいた。

「おぉ! なんじが故人にあらずや~。やっぱりこの学校だったか」


俺は一瞬遅れて

「お、おう」

と返事した。


え、白石ってこんな感じだったっけ?


小学校の時はもっととげとげしい感じだったし、この前のお祭りの時はなんかすごく儚くて綺麗に見えたのに、今はなんだかふわふわしているように見える。


「いや~この前そこのお祭りに来てたし、もしかしたらとは思ってたけど」


白石は一人で勝手に納得したようで、うんうんと頷いた。


「松本と知り合いだったのか。それじゃ何かあれば松本を頼るといい。とりあえずは粉雪の隣に座ってくれ。そこだ」

「分かりました」


白石が着席したのを確認すると、三浦先生は軽く連絡事項を伝えた。


そして

「始業式には遅れないようにな。以上」

と言い残すと教室を出て行った。



 ホームルームが終わった後、みんなすぐに体育館に向かった。


白石への質問とかは後で時間が設けられるようだ。


白石と話したいことはたくさんあるが、今はとりあえず体育館に向かおうと思って席を立つと、肩をトントンと叩かれた。


振り返ると頬を指で突かれた。


「やあ。久しぶり~」

「ひ、さしぶり!」


びっくりして変なとこでつっかえた。

そんな俺を見て白石は少しだけ笑った。


「色々話したいこともあるんだけど、ひとまずは体育館に案内してくれい」

「わ、わかった」



 体育館へと向かう途中。


「えっと……」

訊きたいことが多すぎる。


何から話したものかと考えていると

「今日うちにおいでよ。今までのことを説明するから」

と白石が言った。


「……はい!?」

「あ、なんか予定ある?」


「いや……ない、けど」

「あんまり人に話したいようなことじゃないんだけど、まぁ君なら大丈夫でしょ」


「えーっと。信用してくれてるのはすごく嬉しい。でも」


俺なんかがまだ白石の人生に関わってしまっていいのだろうか。


言葉に詰まった俺を見て白石は

「興味ないならいいけど」

とぶっきらぼうに言った。


「いや! めちゃくちゃ興味ある!」

「お、おう。そっか」


やばい。

引かれてしまった。


「君には小学校の時お世話になったからね~」


白石が昔を懐かしむように言ったその言葉を俺は強く否定した。


「そんなことない! 俺は、何もできなかったよ」


俯く俺に白石は優しい目を向けた。


「まあまあ。私が勝手にそのお礼をしたいだけだからさ」

「……そっか」

「うん!」


ニコっと笑う白石を見て、俺はまた毎日白石のことを考える日々が始まりそうな予感がした。

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