解決

 気を失っている間に早乙女さんを縄で縛ってから起こした。

「……ん? 俺は……」

「負けましたよ。僕たちの勝ちです。色々聞かせてもらいますよ」

「……あぁ。分かった」


それから早乙女さんは話し始めた。

「俺は桜澄に憧れた。お前のように強くなるためにはどうすればいいか考えていた。同じ先生に師事しているのにお前との差は絶望的な程あった。そこで俺はお前の強さの起源を探るために小野寺家に接触した」

「なるほどな」


「まぁでも先生の強さは突然変異的なものだと思うけど」

「その通りだった。しかし調査を続けるうちに興味深い事実に辿り着いた。お前の実家、小野寺家はXX家業を営んでいる」


「……は?」

「知らないのも無理はない。これは小野寺家の人間の中でもごく一部しか知らないことだし、子息にも二十歳になるまで伝えられないことらしい。お前はその前に家を飛び出したしな」

「ただの金持ち家系ではなかったのか……」

「それは表向きの情報だ。そこの三人のことについても、それが関係しているが少し特殊な場合だった。それについては直接あの人に聞いてくれ」


「え?」

「ケリをつけてこい。小野寺家との因縁を断つんだ」

「……そうだな。行ってくる。留守を頼んだ」

「え……先生一人で行くんですか? それはさすがに危ないんじゃ……」

「先生にどうにもならないことなら僕たちがどうにかできるわけないでしょ。足手まといになるだけだよ」

「そうだけど……。じゃあ、気をつけて……」

「ああ。行ってくる」

先生はー人で小野寺家へと向かった。



 「終わった?」

天姉たちがきた。

「うん」

「……良がっだ。あぁー良がっだ〜。はぁ。……心配させやがったな。二人ともこい。お姉ちゃんスマッシュをお見舞いしてやる」

「悪かったよ」

「いいからこい」


恭介とけいが渋々天音の元へ行くと、天音は二人を抱き締めた。

「……もう二度と私は大切な人を失いたくない。二人が私より強いのは分かってる。分かってるけど、二人が私を守って傷つくようなことは我慢ならない。無茶はしないでくれ……」


「……悪かったよ」

「怖かったろ。頑張ったな天姉」

「……うん」


「それにしても。桜、悪かったな」

「え? 何がですか?」

「正直僕は、桜が小野寺家と通じてるスパイかなんかだと思ってたけど、なんか違う気がしてきた。まぁまだお前の母親は疑ってるけど」

「そうですか。まー私怪しかったですもんね。じゃあ私がみなさんについてきた理由をお話ししましょうか」

「うん」


「私は母から少し三人の話を聞いてたんですよ。初めて聞いた時は、正直に言えば可哀想な人たちだと思いました。親から酷い仕打ちを受けていただけでなく、あまつさえその親に売り飛ばされそうになるなんて。でもあの公園で恭介さんに出会った時、あなたは親切だった。あんな境遇で育った人がこうも普通に、親切な人間になっているということに驚きました。てっきり不良にでもなってるかと思ってましたから。そして興味を持ったんです。なのでぶっちゃけ興味本位です。大した理由じゃなくてすみません」


「いや、友達がいないからとかより、よっぽど納得できる理由だよ」

「友達がいないは不自然でしたか。私可愛いですもんね」

「ハッ」

「鼻で笑われた! えっ可愛いですよね?」

「まあまあかな」

「嫌いになりますよそんなこと言ってると」

「それは困る」

「……くっ、ツンデレしてきやがったこいつっ!」


「とりあえず一件落着かな。あとは先生が無事に帰ってくるだけ」

「……それにしてもお前達、強いな。あいつらは小野寺家が集めた精鋭達だ。こうもあっさりと勝ってしまうとはな」

「いや、強かったですよ」

「一対七で勝っておいてそれは説得力がないだろう。……二人共、格闘技に興味はないか?」

「ハハハ。勧誘ですか」

「縁があれば連絡させていただきますよ」

「……そうか。待ってるぞ」


とりあえずではあるが早乙女さん問題と桜が敵なのか味方なのか問題が解決した。

僕たちは先生が無事帰ってくることを祈るとしよう。

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