第11話 グルルルルルルルルルルルルルルルルル~!!

 レイメントの一連のパフォーマンスが始まると、近くでさえずっていた小鳥たちは、驚いて飛び立ってしまった。もうレイメント、いい加減にして!!ライル様に嫌われたらただじゃすまないからね!!


ライル様によって身体が治された喜びから来る行動であることは理解している。もう放っておこう。


 しかし、一体何なの?身体の一部と化し、青銀色に輝いているあの手足?どう見ても通常の手足ではない。義手や義足のように動かしにくそうな印象はなく、まるで本当の手足のように使いこなしている。


 若様...ライル様のことらしい。もう皆んな、好き勝手にライル様のことを呼ぶ。ソフィーナはライル様を主様と呼ぶし...。


 そんなことを思っていると、ライル様が青銀色に光り輝くスライムに向かって、「ありがとうね。わざわざミスリーにまで来てもらって!!」と、感謝の言葉を述べている。


「いいですわ。また、武器や防具なども造りに来てあげますわ。いつでも呼んでくさいまし」


 青銀色の輝きを放つ、体長約40cmスライムはライル様に対して、気品に満ちた態度で返答した。


 な、何者なの⁉でも絶対、あのスライムがレイメントの身体の代わり映えに影響しているはず...。私が知らないうちに何があったの⁉お、教えて下さい...ライル様~!!


 レイメントがライル様の存在に気づき、「若様!先程のわんこは?」と心配そうな表情で問いかけた。


「ああ、さっきの子ね。大丈夫だよ!ヒーリンちゃんがまた来てくれて、今...治療中だよ!もうすぐ治療も終わると思うよ!」と、ライル様はレイメントを安心させるように伝えた。


 ライル様はもはや、という言葉を一々訂正しない。本当にお優しい...。素敵♡



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ライル様の前でポヨーン、ポヨーンと飛び跳ねるスライムの姿は、他のスライム達よりも耐空時間が長く、ゆったりと流れる川のようで、見ている者にシトやかさを感じさせた。


 そして、「ライル、またいつでも私を頼って下さいね」と、ライル様に伝えた後、そのスライムは謎めいた空間へと戻って行った。


 ライル様の周囲には、私が知らないスライムたちばかり。本当にライル様はスライム街から来られたんだ。いつか...ライル様が育ったというスライム街に、私も連れて行ってもらいたいな。


 私を優しく包み込み、腕と脚の治療を施してくれたスライム"レンちゃん"。必ずライル様に頼んでスライム街に連れて行ってもらい、直接"レンちゃん"に感謝の言葉を伝えるんだ!必ず...。


 ライル様が育ったスライム街に行って...。


 そんな思いを胸に秘めて、ライル様を見つめ続けると、再びソフィーナがライル様の後ろから姿を現した。


 いつのまに!先程まで私の横にいたのに!


「主様、先ほどのスライムがレイメントの治療を?」と彼女がライル様に問いかけ、そのまま彼を優しく包み込んだ。


 キィ~!あの巨乳エロフ!必要以上にライル様に胸を押し付けて!抜け駆けはダメって言ったのに!愛用のレイピアとマインゴーシュ(短刀)があれば...。


 それも、私たちに豊満な胸を見せつけるかのように...。ムッキィ~~💢


「ちょ、ちょっと距離が近いよ、セラフィ―⁉あ、ああ、ミスリーのこと?」と、ライル様の戸惑いが見て取れる。その姿は何とも愛らしい♡


 う~ん。あんなにすごいスライム達を従わせているのに、思春期の少年のような態度...。誰だって惚れてしまいます♡



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 私の隣でライル様を見つめている女性も先程から、「ライル君を膝の上に乗せて、よしよししたい♡」とか、「耳の後ろをなぜなぜしたら、「ミャ~♡」って鳴くかな?」などと独り言をブツブツと言っている。


 ライル様は猫じゃないって...。


 でも、ライル様のことが好きみたい。ライル様を好きな者同士、親交を深めよう♡そうと決めたら善は急げだ!


「あ、あの、私たちを治して下さり、ありがとうございました。私は、"元ウェイリー王国騎士"、リューファンです。皆さまおかげ元の身体に戻ることが出来ました」と、ライル様を好きな方に頭を下げた。


 すると、目の前の女性は「え、私は"戦場の夜明け"のメンバーでモーリーです。そんな騎士様に頭を下げられるような立場じゃないですぅ💦」と、慌てている。すごく可愛らしい。


 そんなモーリーさんに「ライル様ってすごいですよね」と話しかけると、「うん!ライル君、凄い!可愛いし!私が育てたい!」と、ちょっとゆがんだ愛情表現を示してきた。シスコン⁉マザコン?


 まあ、愛情の形は色々ある。私が決めるモノではないから...まあいいか。


 それよりも、ライル様がミスリーと呼んでいるスライムについて、モーリーさんは何か知らないかしら?聞いてみようっと。


「モーリーさん。あのミスリーちゃんがレイメントの治療を行ったのですか?」


「そうなの。皆んなはそれぞれが治療中で意識も無かったし、知らないよね」


 モーリーさんの話によれば、レイメントの手足は、やはりあのミスリーちゃんが関与しているようだ。ミスリーちゃんは"ミスリルスライム"らしい。


 彼女は、自由にミスリルを生成し、さらにそれを加工する能力を持っている様だ。


 レンちゃんが再生したレイメントの手足は、ミスリーちゃんがミスリルで表面を覆い、強化したようだ。ってことは...レイメントの手足の表面部分だけが、ミスリルで覆われているってことだよね...。


 だから、レイメントの手足の部分だけが、ミスリル特有の青銀色を放っていたのか。軽くて頑丈そう。


「凄いですよ、若様!重たくないし、オークが振り下ろして来たバトルアクスを直接腕で受けても、俺の腕は無傷!逆に、アイツらの持っていたバトルアクスの刃が欠けてしまいましたよ!」


 レイメントは満面の笑みで、ライル様に報告をした。


 本当にレイメントったら嬉しそう。武道家だもんね。盾とか剣を使わずに己の手足を鉾として戦ってきた。今度はその手足が身を守る盾としての役割も兼ねたら...。


 もう最強じゃない!!レイメントのテンションがバカ上がりしてしまうのも分かる気がする。


 本当にレイメント...楽しそう。それに、心底ライル様に陶酔している様だ。でも、私たちもライル様たちの旅に同行できるのかな?先ほどヨハンさんは仲間として向かい入れてくれると言ったが、ハントさん達は私たちを向かい入れてくれるのかしら?


 まあ、向かい入れてもらえなくても、私はライル様に従うのみ。どんな場所に向かおうが、それが例え魔境の王の間であろうと、そんなことは大したことではない。まあ、私以外の2人も同じくライル様に付いて行くだろう。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 そう言えば、さっきレイメントはオーク肉を狩ってきたと言っていた。お肉か...。奴隷身分になってからは、お肉なんて食べていないな...。肉か...。ニクか...。


 グルルルルルルルルルルルルルルルルル~!!


 ありえないほどの爆音、いや"トロル"の悶絶のようなトドロきが、私のお腹から響きわたった...。


 隣にいるモーリーさんは、「リュ、リューファンさん、き、聞こえていないですよ。だ、大丈夫です💦」と、両頬を赤くして後ずさりながら言ってきた。


 お腹の音をばっちり聞かれてしまった。あと、頬を赤くするのは私の方なのですが...。


 だ、だって仕方ない💦今まで奴隷身分の私は、ろくな食事も与えてもらえず痩せる一方...。デス・キラー病にかかってからは痛みと死に対する恐怖から、食事なんて喉を通らなかった。


 それがライル様によって健康に身体となった今、お肉が食べたい!!はしたないが、ガブリつきたい。ライル様、お肉食べたいです~!!どうか私にご慈悲を~!!

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