【本編完結】悪人面をしているが故に周りから怖がられ嫌われていた俺 それでもめげずに善行を続けていたらひょんな事からクラスで「聖女様」と呼ばれている女の子と甘いラブコメディが始まった件

栗村坊主

生まれつきの悪人面のせいで怖がられる男

 俺の名前は極道善人ごくどうよしと。地元の公立高校に通う高校2年生である。


 いきなりだが、俺には1つとっても深い悩みがある。ガキの頃から高校生の今に至るまでずっと悩んでいる事。


 それは俺の顔が生まれつきヤ〇ザみたいな悪人面をしているという事だ。


 俺はガキの頃からこの顔のせいで周りの連中から散々な事を言われて来た。


 例えば小学1年生の時…同じクラスの奴に挨拶しただけで「ひぃ…殺さないで!」と大泣きされ、そんな事はしないとなだめるも他の連中には俺がそいつをイジメている様に見えたらしく、その後先生に呼び出しを食らい説教される。


 しかも説教中、俺は普通に先生の顔を見ながら説教を聞いていただけなのに「なにガンつけとんじゃコラァ! お前が○○をイジメたから怒られとるんやぞ! お前の親は子供に一体どういう教育をしとんじゃ!」とブチ切れられた。

 

 どうやら俺の顔が怖いせいで、普通にしているだけでも先生を睨みつけている様に見えているらしかった。


 俺は小1にして人生というのは理不尽の連続なのだと悟った。


 中学1年生の時…たまたま自宅の近くで殺人事件が起こり、犯人はまだ捕まっておらず逃走中との事らしかった。


 その犯人確保のために警察が自宅の周りを警戒していたのだが、俺がいつも通り中学へ向かっているといきなり警察官たちから囲まれ「怪しい人物を確保!」と任意同行されて警察署に連れていかれた。


 そして「お前がやったんだろ!」と刑事さんから恐喝まがいの事を言われた。


 殺人事件が起こった時間帯に俺は普通に学校にいてアリバイがあった事や両親の必死の弁護によってなんとか釈放された。


 釈放された際に刑事さんに「紛らわしい顔してんじゃねーよ」と舌打ちをされた。しかもその後、中学では俺が「人を殺した」という噂が流れた。


 俺は中学生にして顔が悪いと損をするという事を身に染みて学んだ。


 高校1年生の時…俺の前を歩いていた女の人がハンカチを落としたので、それを拾った俺は返そうとその女の人に声を掛けたらいきなり泣き叫ばれた。


 その女の人は「ひぃー! ソ〇プに落とすのだけは勘弁してください!」と俺に土下座をしてきたので周りの人が何事かと警察に通報したらしく、俺はまた警察署に連れていかれた。


 誤解が解けた俺は解放されたが、警察から「問題ばかり起こすなよ」嫌味を言われた。俺はハンカチを拾って返そうとしただけなのに…。


 俺の様な悪人面の人間はハンカチを拾って返すような小さな善意ですらしてはならないのかと絶望した。


 思い返すと他にもまだまだある。


 道を歩いていると周りの人間が自然に俺を避け、まるで「モーセの海割り」のようになっていく。用があって声をかけようとするとみんな叫び声をあげて逃げていく。俺がしゃべると場の空気が凍る。クラスメイトたちが目を合わせてくれない。


 悪口だって沢山言われた。「すでに3人ぐらい人殺してそう」「うちの高校の薬の売人をやっている」「隣のクラスの女の子を何人かソ〇プに落とした」「この世の全ての醜悪を煮詰めて圧縮したような顔」「鉄砲玉の善人」などなど。


 この悪人面のせいで俺は幾度となく理不尽な目に遭ってきた。整形も考えたこともある。小さい頃からそんな理不尽な目にあってきた俺なので正直何度かグレそうになった。


 だがそんな俺がなんとか道を踏み外さずに済んだのは優しい母ちゃんのおかげだ。


 母ちゃんは俺とは違い、まるで菩薩の様な…この世の全てを慈愛で包み込むような優しい顔をしている。もちろん性格だって優しい。俺に何かあると優しく抱きしめ、頭を撫でながら慰めてくれた。


 そんな母ちゃんが俺によく言い聞かせてくれたのが「見た目で判断する人なんて放っておきなさい。善行をしていれば絶対に善人の事を理解してくれる、中身を見てくれる人が現れる。あなたは優しい子。だから腐っちゃダメよ!」という言葉だ。


 俺はその母ちゃんの言葉を信じて今まで善行を心掛けてきた。善行を続けていればいつかきっと…俺の外面ではなく、中身を見て評価してくれる人が現れると。


 先ほどの女の人が落としたハンカチを拾って返そうとしたのもその一環だ。まぁ…散々な結果に終わった訳だが。


 正直俺の心も鋼鉄のように頑丈な訳ではない。俺は顔が怖いだけで中身は至って普通の高校生なのだ。悪口を言われれば傷つくし、理不尽な目に遭えば落ち込む。


 善行はするべきだが、理不尽な目には遭いたくない。


 そんな矛盾する2つの感情を有する俺が導き出した答えは「表だって善行をすると理不尽な目に合うのだから、隠れてやればいい」という事だった。


 …今思うと他人に自分の言動を見て判断して貰わないといけないのだから隠れてやったのでは意味がないのでは…と思うのだが、その時の俺は助けようと思って話しかけても俺の顔を見て泣き叫ばれるのに辟易してしまっていたのだ。


 それが高校2年の初め、今年の4月の事。


 この謎ムーブがまさかあんな結果になるなんて…この時の俺は思いもしなかったのである。



◇◇◇


※当作品は「お試し連載」となります。1週間ほど連載して評判が良いようなら本格連載に入ります。


※連載予定

3/2(土)~3/8(金)の7時と19時の1日2話更新。


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