異世界侵略国への勧善懲悪記

@jisi05080808

第1話 晴人、国王から追放される

 大和晴人ヤマトハルトは、父である大和彰ヤマトアキラと木刀を持ち、示現流の試合をしている最中サナカだった。

 突然、稽古場の庭に虹色のオーラが現れ、一瞬、虹色のオーラが竜巻を起こしたかと思うと、そこには既に大和晴人ヤマトハルトの姿は消えていた。


 

 ちょうどその1週間前だった。家族で夕食を終え、テレビを見ていると、突然テレビと蛍光灯が消え、部屋中が真っ暗になった。

「何だ?一体どうしたんだ?停電じゃないよね。隣近所の家はみんな明かりがついているよ。」

 そう晴人ハルトが言うと、


晴人ハルト、わしは『天』じゃ。お主の父であるアキラと母である百合子さんからわしの存在と父と母の物語は聞いているじゃろう。晴人ハルト、10年以上前、そなたの父親であるアキラに惑星レミラスは異世界侵略を防ぐため異世界侵略戦争国を壊滅してもらった経緯がある。じゃが、10年経ってまた様々な惑星で侵略戦争が始まってしまった。わしやアキラタイガーとイエローフェンリルたちが必死に戦っておる。しかし、まだ手付かずの惑星がある。


 惑星『フリースランド』じゃ。そこにパルナ・パーニャ共和国がある。1週間後に勇者召喚の儀式が執り行われるのじゃ。どうか、パルナ・パーニャ共和国の勇者召喚の儀式に応じて、召喚されてはくれぬか。父である彰と百合子さんと十分相談してほしい。起源は1週間後じゃ。わしからのたっての願いじゃ。わしの願いにどうか応えてくれ。では、失礼いたす。」


 そう言い終わると、家中の電気が付いた。すると、父であるアキラ晴人ハルトを縁側に呼んだ。父であるアキラ晴人ハルトに向かって言った。

「晴人、10年以上前の話はもう知っているよな?」


「はい、お父さんとお母さんからよく聴かされてきたので知っています。」


「晴人、悪いことは言わん。今回の『天』のたっての願いは断れ。」


「えっ、どうしてですか?」


「俺には、ぼっけもんずという強い絆で結ばれた最強の仲間がいた。だが、今回の召喚はお前一人だ。危険すぎる。」


「お父さん、行かせてください。どうしても行きたいのです。この地球では未だに侵略戦争が各地で起こり、罪のない大勢の市民たちの尊い命が犠牲になっています。この地球では、私に侵略戦争を止める力はありません。でも、他の惑星なら異世界侵略戦争を勧善懲悪するチャンスがあるのです。お父さんたちのように勧善懲悪をしたいのです。」


「お前の気持ちは、十分に分かるのだが、一人では危険すぎるのだ。誰も助けてくれる仲間がいないんだ。」


「だったら、無限の力である『メビウスの輪』とお父さんから『天』にエネルギー体を吸い取られない新しい刀と、自分の目で物事の本質を見抜く『天啓の瞳』と常時、私と一緒にいられる『天』の息子を付けて下さるように頼んでください。私は単身で乗り込むのです。それぐらいしてもらわないと割に合いません。」


「う~ん。・・・。晴人の気持ちは変わらないのか?」


「変わりません。俺は大和彰の息子です。必ず元気に地球へ戻ってきます。あっ、そうだ、お父さんの方から、無事に惑星『フリースランド』の異世界侵略戦争を解決したら、必ず、日本に戻してくれるよう念話をしておいてください。」


「う~ん。よし、分かった。『天』に念話を入れておくとするか。」


「お父さん、ありがとうございます。」




 このような経緯があり、晴人は虹色のオーラに覆われた竜巻の中にいた。すると晴人の耳元で声がした。


「初めまして、晴人さん、『天』の息子の『ミニッツ』と言います。ずっと天の声として晴人さんの付き人をすることになりました。よろしくお願いいたします。」


「俺は、大和晴人だ。ミニッツ、敬語は要らない。晴人でいい。晴人と呼んでくれ。こちらこそよろしく頼むな。」


「分かりました。でも、今回は『天』である父の我がままですので、『晴人さん』と呼ばせてもらいますね。晴人さん、『天』から無限の可能性を持つ『メビウスの輪』とコスモソードを進化させたユニバースソードと自分の目で物事の本質を見抜く『天啓テンケイの瞳』を授かって来たので、今、晴人さんの脳を通して具体物に進化させます。両眼を閉じて下さい。私がコスモエナジーをハイパワーで送ったら完了です。それでは行きます。」


 すると、彰は宇宙でも3本の強度を誇るブラックドラゴンの甲冑を身にマトい、「無限の可能性を持つ『メビウスの輪』と物事の本質を見抜く『天啓テンケイの瞳』」とコスモソードを進化させたユニバースソードの刀と脇差ワキザシを授かり、瞳には六芒星ロクボウセイが宿った『天啓の瞳』に変化した。


「晴人さん、成功です。完璧です。」


「晴人さん、そろそろ、パルナ・パーニャ共和国の謁見の間に転移します。」


「ラジャー!」




「グル、グル、グル、グル、グル、グル、グル、グル!」


 複数の魔法陣が描かれた円を通り抜けると、晴人は、虹色のオーラを身にマトいながら、国王の間の赤い絨毯ジュウタンに姿を現した。


「オオー!」

「オオー!」

「勇者が現れたぞ!」

「遂に勇者が現れたぞ!」

「1000年ぶりの勇者じゃ!」

「見よ!虹色のオーラは『天』を表すのじゃぞ、『天』の使徒に相違ない!」

「そうじゃ、『天』の使徒じゃ!」

 大勢の神官たちと駆けつけていた大勢の貴族とパルマ・パニーニャ共和国王陛下と女王陛下、そして、第一王女のソフィーナは、あまりの驚きに平静さを隠し得なかった。


 神官長が、晴人に向かって尋ねた。

セイ大和ヤマトです。名は晴人ハルトです。」


「では、何と呼べば良い?」


「晴人で結構です。」


「では、晴人よ、パルマ・パニーニャ共和国王陛下とエリス女王陛下、そして、第一王女のソフィーナ様にご挨拶を。」


此度コタビ召喚ショウカンに応じました大和晴人です。どうぞよろしくお願い致します。」


「うむ。晴人よ、よろしく頼むぞ。我が国のために尽くすのじゃぞ。」


「ハハーッ。」



「では、晴人よ、そなたの能力を確かめる。こちらに参れ。」


「はい。」


「この大きな水晶に右掌ミギテノヒラをかざすのじゃ。さすればそなたのもつ能力と資質が文字となって表れる。」


「さあ、やってみよ。」


 晴人は、言われるがままに大きな水晶に右掌ミギテノヒラをかざした。その瞬間、水晶が虹色のオーラを放ち、文字が浮かび上がってきた。


「英雄」、「名君」、「武神」、「平和の象徴」、「民衆の絶大なる支持」、「勧善懲悪」という文字が浮かび上がり、突然、その大きな水晶玉に大きな亀裂が入り、飛び散ったのだ。


「何たることじゃ!あってはならぬ、不吉な水晶の破裂じゃ!神官よ、水晶の破裂はどう解釈するのじゃ!」

 とパルマ・パニーニャ王国陛下が大声で叫んだ。


 それに対して神官長は、あろうことか

「水晶の破裂は今まで一度もなかったこと。我が共和国にとって、不吉な前兆であるとお見受けします。破裂するなど決してあってはならぬことです。」

 と身の保身から出てくる恣意的な発言をして、パルマ・パニーニャ王国陛下の不安をアオったのだ。


「何たることよ!わしの国王の座を譲り渡し、ソフィーナ第一王女をそなたのキサキにするつもりじゃったが、全ては水の泡じゃ。このような危険なヤカラは、即刻、追放じゃ!近衛兵たちを集めて、『骸骨の森』に追放じゃ!」


「あなた、軽率な判断です。虹色のオーラを放つ者を追放してはなりません!虹色のオーラを放つ者こそ『天』の使者です。晴人殿の力が大き過ぎただけのことです。それに水晶が持ちこたえられなかったのです。」


「そうです、御父上、虹色のオーラを放つ者は『天』であるホワイトドラゴン様の使徒です。それを、追放するということは、あってはならないことです。晴人様にあまりにも失礼です。ホワイトドラゴン様の使徒であれば、この惑星を吹き飛ばすほどのエナジーを持っているはずです。水晶が割れるのは当然のことです。晴人殿は悪人ではありません。『善人の相』が顔に現れております!」


 すると、あろうことか、パルマ・パニーニャ共和国王陛下は、娘である第一王女のソフィアのホホを強く叩いた。

「そなたのことを想って言ったのじゃ!こやつは危険じゃ!水晶が割れて飛び散ったのが何よりの証左である!晴人よ、即刻立ち去れ!おい、近衛兵、荷馬車に乗せて、『骸骨の森』へ落としてこい!」


「ハハーッ。」


 すると、ミニッツが晴人に助言した。

「もう、こんな国から出ましょう、晴人さん。」


「うん。こんな国王は、まっぴらだ。でも、エリス王妃とソフィーナ第一王女には一礼だけして去るよ。」


「うん、それがいいね。」


「晴人は、キビスを返すと、エリス王妃とソフィーナ第一王女の瞳をしっかりと見ながら微笑んで一礼をし、その場を後にした。」

 ソフィーナ第一王女は、そのあたたかな微笑みに胸がドキッとした。


 その後、近衛兵に囲まれて、荷馬車に乗り込んだ。晴人とミニッツの会話は、脳内で行う念話であるため人に聞かれる心配は皆無だ。


「ミニッツ、俺の『天啓の瞳』では、エリス王妃とソフィーナ第一王女は豊かな人間性を持っていると判断したよ。一方、神官長は、俺の登場で職を追われる危険性を感じ取ってあのような発言をしたようだ。身の保身だな。心の腐った野郎だ。国王は、短気で短絡的で感情で物事を判断する人物という評価が出たぞ。そのまんまだな。」


「そうでしたか。残念な話です。こうなったらこの惑星の全ての国が恐れる『骸骨ガイコツの森』を本拠地にして、国でも作りましょう。お父様のスタートも誰も寄り付かない『死の森』デスウッズでしたからね。」


「ギャハハハハ!ギャハハハハ!そうなのか、父上も大変だったんだな。」


 4時間ほど荷馬車に揺られた晴人は、鎖で手足を縛られたまま、高い崖から近衛兵に突き落とされそうになったため、


「ちょっと待て、ガシャン!こんな鎖で俺様を拘束できるものか!じゃあな、アホ国王によろしくな!」


 そう言うと、晴人は、空間飛行魔法を使って空を飛んだ。すると、大勢の近衛兵たちが、


「おい、人間が空を飛んでいるぞ!しかも、すごいスピードだ。もう見えなくなったぞ!報告だ!国王陛下に報告するんだ!」


 急いで、城に帰った近衛兵たちは、国王陛下とエリス王妃とソフィーナ第一王女と神官長にこのことを伝えた。


「何!鋼鉄でできた鎖を破壊し、空を猛スピードで飛んでいったじゃと!あ奴は魔法が使えるのか!信じられんぞ!」


「あなた、だから言ったじゃありませんか?晴人様はホワイトドラゴン様の使徒で膨大なエナジーをもっているために、水晶が割れたのですよ。」


「御父上、晴人様は、礼節を重んじる方でした。空を自由に飛べるのですから、様々な大魔法を使えるのでしょう。敵の陣営にでも入ったら、我がパルマ・パニーニャ共和国は、大損害を受けるのですよ。それに、神官長は、晴人様の魔力やエナジーの力によって自分の地位や立場が危うくなり、退官させられると思い込んで、あのような危険視発言をしたのがまだ分からないのですか!」


「くうう、もう、どうしようもない。どの国家も近寄れぬほど危険な魔物が済んでいる『骸骨の森』に行ったのじゃ。直に死ぬじゃろう。」


「御父上、万が一、『骸骨の森』で生きていたら、謝罪をしていただけますか?」


「何を言う!ソフィーナ!わしが謝罪などするか!」


「父上、晴人様は、噓偽りのないホワイトドラゴン様の使徒です。間違いございません。晴人様がお怒りになれば、このパルマ・パニーニャ王国は、10分で全滅しますよ!」


「何!『真実の判別能力』をもつソフィーナよ、それは誠か?」


「噓ではございません。私に『真実の判別能力』があることを知りながら、私の諫言カンゲンを聞かぬばかりか、暴力まで振るわれました。あの神官長は、晴人様が国王陛下になった折、その無能さが見抜かれることを恐れて嘘を付いたのでございます。そんなことさえ分からずに、晴人様を『骸骨の森』に追放した責任は御父上が全て背負ってくださいませ。」


「し、しまった。鋼鉄の鎖を破壊し、空を飛べる人間などおりはせぬ。まぎれもない『天』であるホワイトドラゴン様の使徒じゃ。わしは取り返しの付かぬことをしてしまった。」

 と、己のしでかした未熟さや情けない過ちに深く恥じ入り、忸怩ジクジたる思いにられるパルマ・パニーニャ共和王国であった。

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