27色 アカリの試練2
「ところでこれからどうしたらいいのかな?」
教室をでたはいいけど、どこにいっていいのかわからず、首を傾げると、クロロンがやさしく教えてくれる。
「たぶん、みんな別々の場所にいると思うけど、一番わかりやすいのは、れいたくんかな」
「レータ?」
「うん、れいたくんといったらなにが思い浮かぶかな?」
さっそくクロロンがヒントを出してくれる。
「メガネ」
「そっちじゃないほうだね」
「えっと、確か、レータっていつも分厚い本を読んでた気がする」
「そうだね、本っていったらどこが思い浮かぶかな?」
わたしのおバカな答えにクロロンはやさしくヒント、ほぼ答えをだしてくれる。
「ん~? 図書館?」
「じゃあ、行ってみようか」
「うん」
ここの教室が2階で、確か、図書館は3階だったよね。 わたしたちは図書館にむかうために廊下に出る。
ふと、わたしはクロロンに気になっていた質問をする。
「ねえ、クロロン。 今わたしの目の前にいるクロロンはホントにニセモノなの?」
「うんそうだよ」
「うーん、やっぱり信じられないなぁ……」
わたしは目の前にいるクロロンをもう一度確認するけど、どこからどうみてもあの童顔のかわいらしいクロロンだった。 そして、しっかりとチャームポイントの左目の下の泣きボクロもある。
「正直、ぼくも変な感じはするな。 でも、創られたものだからこそ自分がニセモノって理解できるのかな」
「え?どういうこと?」
「なんていったらいいかな~ぼくもなんとなくなんだけど、今のぼくの記憶や思い出って『組み込まれた』って感じがするんだ。 いいかたはあれだけど、ロボットみたいな感覚だね」
「……」
その言葉になんだか、フシギな気持ちになる。
「それともうひとつ根拠があるんだ」
「こんきょ?」
クロロン自体は自分が『ニセモノ』と確信しているみたいだ。
「いろのさんの頭の上のクーくんがぼくの頭に乗ってこないことだね」
「え!?」
「ピュルーン?」
確かにいつもならまっさきにクロロンの頭の上に乗るクーがわたしの頭の上から離れていなかった。
「つまり、記憶や姿をマネ出来てもぼくを創っているのは、別の魔力だから素の部分が違うってことだね」
「へえーそうなんだ」
クロロンは笑顔で話すけど、なぜだかわたしは『さみしさ』を感じた。
「あ、着いたよいろのさん」
話しているうちに図書館の前に着いた。 図書館のドアを開けると中にイスに座って本を読んでいる青年がいた。
「あ!レータ発見!」
「図書館では静かにしてくれないかい?」
「ごめん」
大きな声を出してしまい怒られてしまった。
「これを読んだら相手をしてやるから少し待っていたまえ」
本から目を離さずにレータはいう。
「じゃあ、いろのさん、ぼくたちもなにか本を読んでいようか」
「うん、そうだね」
レータの読書が終わるまでわたしたちは本を読んで時間を潰すことにする。
「とは言ったけどわたし文字がいっぱいあると眠たくなっちゃうんだよね……」
本棚に並べられたたくさんの本を眺めながら、唸る。
「なら、これなんてどうかな? マンガを読みながら勉強できる本みたいだよ」
困ってるわたしにクロロンは本を渡してくれて、それを開く。
「ホントだ! これならわたしでも読めるかも!」
続きを読もうと席にむかおうとしたわたしはクロロンの持っていた本が気になった。
「クロロンそれは?」
わたしの質問にクロロンは表紙を見せながら答えてくれる。
「コレ? これはね、ぼくが好きなミステリー作品の外伝だよ」
「がいでん?」
「えーっと、わかりやすくいうと主人公とは別の人のお話だよ」
「へえークロロンってミステリー作品とか読むんだね」
そういったものを読むのが意外でわたしは驚く。
「うん、こわいのはすごい苦手だけど、この作品はすごいおもしろいんだ」
「その作品なら僕も好きだよ」
レータは目を本から離さずに話に入ってきた。
「え? れいたくんも知ってるの?」
「ああ、キャラクターも魅力的だし、何よりもストーリーが面白い。 知名度は低いけど知る人ぞ知る作品だな」
「だよね! れいたくんはどこの話が好きかな?」
クロロンはうれしそうにレータに聞く。
「そうだね、一作品目の二章かな。 犯人が知らない内に被害者の死体が移動させられて犯人が動揺しているのが面白かったね」
「ぼくは二作品目の三章かな」
「あーあれか……なかなか独特な所が好きだな」
「なんていうか、今までやさしくて主人公を助けていて最後まで生き残りそうだったのにそんな人が犯人で途中退場しちゃうのが衝撃的だったな」
「まあ、あれは仕方ないよ。 あれは黒幕のせいだ」
「だよね!」
二人は楽しそうに話合う。
「でも、一番おもしろい話は二作品目の五章だと思うな」
「だろうね。 僕も同意見だ」
「なんだかスゴイ楽しそうだね」
二人の話に入ると、盛り上がっていたクロロンが慌ててあやまってくるけど、全然気にしてないわたしは笑顔をむけ答える。
「あっ!? ごめんねいろのさん、ぼくたちだけで盛りあがっちゃって」
「いいよ、二人が楽しそうにしてるとわたしもなんだかうれしくなっちゃってだから、わたしにもすこし教えてほしいな!」
「!?」
ナゼだか二人は驚いた顔をしていた。
「どうしたの?」
「えっと、いや、なんというか」
クロロンはレータをみる。
「珍しいなと思ってね」
「めずらしい?」
レータの言葉の意味がわからず、首を傾げると疑問に答えてくれる。
「自分の知らない話で盛り上がっていたとしたら、普通は興味ないだろう? それを自分から教えて欲しいなんて、随分変わっているなと思ってね」
レータ自身もフシギそうにわたしに聞く。
「そうなのかな? もし、そうだったとしても、わたしはみんなの楽しそうな笑顔がみたいから、わたしはみんなの好きなものが知りたいな!」
「……」
二人は互いをみる。
「まあ、君らしいと云えば、君らしい意見だね」
「さすがいろのさんだね」
「え?」
ナニかに納得したように二人はクスリと笑う。
「さて、僕の所にわざわざ来たのは《コレ》が目的だろう?」
レータはナニかのカケラみたいなモノを取り出した。
「それってもしかして」
「あげるよ」
アッサリとそれを渡される。
「え?」
ポカンとマヌケな声を出してしまう。 それをみたレータは呆れたようにため息をする。
「何を驚いているんだい? まだ、僕の分だけだぞ」
突然のことにわたしは状況がうまく読み取れない。
「え~~~っと、どういうこと?」
「説明しないといけないかい?」
「うん、お願いします」
「ハァ~~~」
レータは再度、大きなため息をつく。
「まあ、一言で云えば、君がなかなか面白いことを言ってくれたから、僕の《カケラ》を渡しただけさ」
「?」
わたしはさらに首を傾げる。
「つまり、いろのさんはれいたくんの試練に合格したってことだね」
クロロンが一言でまとめてくれた。
「えっ!?そうなの!?」
「試練の内容はこれといって決まってないけど、《僕が渡したかったら渡せ》だからね」
「そうなんだ、なんだかよくわからないけどありがとう! レータ!」
わたしはレータにお礼をいうと、「フッ」と笑い、背をむけ離れる。
「さっきの話だけど、本当に君が気になるなら《本物の僕》に聞くといいさ」
「それがいいかもしれないね」
そうだった、スッカリ忘れていたけど、今、目の前にいるクロロンとレータはニセモノだったんだ。
「うん、わかった、楽しみにしてるね」
「じゃあ、僕の役目は終わったから先に失礼させてもらうよ」
「もう、行っちゃうの?」
さっさといってしまうレータにクロロンが聞くと、振り向かずに声だけで答える。
「ああ、早いに越したことはないだろう」
「うん、そうだね。じゃあまたね」
「ああ」
そういうと、レータは煙となって消えてしまった。
「き、きえた!?」
「大丈夫だよ、れいたくんが死んじゃった訳じゃないから」
驚くわたしにクロロンが説明してくれる。
「《今は》消えちゃったけど新しく創られる時は《今の》れいたくんがきちんと存在してるから」
「……? つまり、どういうこと?」
せっかく説明してくれたのに、わたしがおバカ過ぎて理解できなかった。
ごめんクロロン。
「えーっと、ちょっと待ってね…………あっ! そうそう、AIっていえばわかるかな?」
「えーあい?」
なんのことかわからず、首を傾げる。
「新しいデータに今回のデータを移す感じだね」
「へえーそうなんだ、よくわからないけどすごいね」
「伝わってよかったよ」
クロロンがやさしく教えてくれて、なんとなくだけど理解が出来た。
「次はどうすればいいのかな?」
「そうだねぇ、うーんとじゃあ次はきのせさんをさがしてみよっか」
また、クロロンがヒントをだしてくれる。
「わかった」
「きのせさんのいそうなところってどこかな?」
ヒントをもとに考えてみる。
「フラウムのいそうな場所……。フラウムは運動が得意だからもしかして『体育館』かな?」
「じゃあ、行ってみようか」
わたしたちは一階にある体育館にむかう為に図書館を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます