23色 シーニの試練1
「さて、少し変わった魔力の流れを感じるのはこのあたりかな」
二人と別れて、わたしが辿り着いた場所はナニかの神社のような場所だった。
はじめは少し離れた場所に出たんだけど、ここから不思議な魔力を感じて歩いてきたのだ。
「たぶんここだよね?」
わたしは恐らくここに神獣がいるのではないかと思い周りを見回す。
「きましたね」
「!?」
周りに声が響き、少し離れた場所に鳥居が現れて、そこから銀色のキレイな四足歩行の生物が現れた。
「キレイ……」
思わず口に出してしまう。
その生物は、尖った耳と鼻が特徴的な動物『キツネ』に似ていた。 だが、尻尾が一本ではなく九本あった。 それから連想される生物は……
「もしかして、『
「ハイ、ワタシは『九尾の狐』の一種『
九尾は、美しい声と丁寧な口調でいう。
「九尾って本当に存在してたんだね。 わたしって運がいいかもしれないね」
「運がいい?」
「神獣なんて普通出会える存在じゃないから、なおさら、そう感じるよ」
「ワタシ達、神獣も出来るだけ人間の生態系を乱さない様あまり人間とは関わらない様にしていますからね。 それに、今と昔とでは大きく関係が変わってしまいました」
「今と昔とでは?」
彼、声的には彼女かな? の言葉に首を傾げる。
「ええ、疑問に思ったことはありませんか? 何故、伝奇や昔話でワタシ達神獣が語り継がれているのか。 それは、昔は人間と暮らしていたからです」
「ええ!? そうなの!?」
突然、衝撃的なことをいわれてわたしは驚く。
「数はそこまで多くはありませんでしたが、人間の暮らしを助けたりこちらも助けてもらったりととても有意義な時間を過ごしていました」
「でも、なにかがあったってこと?」
「察しがいいですね。 ハイ、結論から云うと人間がワタシ達、神獣に《恐怖》したんです」
「恐怖?」
「ええ、チカラあるものに恐怖する。 生物としてあたり前のことです」
哀しそうな声で答える。
「……」
「そして、そんな人間に迷惑をかけない様にワタシ達、神獣は人間との関わりを出来る限り遮断しました」
わたしは語られる話に驚いていたけど、なにかが引っ掛かっていた。
「まあ、長話もなんですので、試練の内容を簡潔にいいましょう」
「え?」
九尾の言葉に試練のことを思い出す。 正直聞きたいことがいくつかあったけどまずは試練だよね。
「《ワタシがアナタのチカラを認めれば合格》です」
「それってどういう……」
「例えば、こうです」
わたしが質問する前に一本の尻尾から魔弾らしきモノを撃ち込んできた。
「イッ!?」
咄嗟に腰の杖を抜いて、魔弾を撃ち相殺する。
「いっいきなりなにするんだよ!?」
反射的に言い返してしまう。
「すみません、言葉で説明するより手っ取り早いかと」
「だからっていきなり魔弾を撃ってこないでよ!」
淡々と答える九尾に抗議の言葉をいう。
「しかしながら思ったより素早い反応ですね」
「生命の危機を感じたからね」
咄嗟に掴んだ杖を持ち直す。
「アナタからワタシに攻撃してきても大丈夫ですので、どうぞ、アマミアオイさんアナタの実力がどれ程のものかみせてください」
「そんなこといわれても対したチカラはわたしにはないけどなぁ。 まあ、でもとりあえずやってみるよ」
わたしはため息を付きながらも、杖で円を描き魔空間からホウキを取り出してその上に立って乗る。
「準備完了だよハク」
「ハク?」
「うん、白面金毛って呼びにくいし、いわゆる種の呼び方でしょ? だから、白から取って《ハク》ってね」
「アマミアオイさんアナタは面白いことをいいますね。 いいでしょう気に入りました」
「それはよかった」
ハクは頷き「では行きます」と一本の尾から魔弾を撃ちだす。
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