わたしだけ属性なしって言われたんだけど!
@YoshiAlg
1章 宝石の魔女
第1話 いきなり召喚されたんだけど!
「おお、成功したぞ!」
「素晴らしい、これで我々にも希望が持てますな!」
ここはご立派な王宮の大広間である。このキングダム王国の国王及びその側近の貴族が、異世界から召喚されてきた高校生たちを壇上から見下ろしているのだ。
その高校生たちは全部で25人いて、それに加えて担任の先生がひとりいる。あまりに突然の召喚だったので、みんな困惑している。
「それでは、彼らの能力を調べましょう……おい、君たち!前に出てこのブレスレットを握るんだ!」
高校生たちはそう言われるも、互いに顔を見合わせる。
「俺が行こう」
一抜けしたのは
勇がブレスレットに腕を通すと、その20個の石すべてがそれぞれの色で光り輝いた。
「おお、まさかすべての属性を持つとは……」
やはり、このブレスレットは属性を確かめるためのものらしい。いくつかの石の光は弱かったものの、そのすべてが光り輝くということはめったにないようだ。
「やはり俺にはチート能力が備わっているんだな」
勇はこれから始まるであろう冒険に胸を躍らせていた。
それからは、次々にクラスメートたちの能力が明らかになっていった。
「これほど強力な属性を持つとは……ましてや世界魔法など」
何回かこのブレスレットは、学校の体育館の何倍もひろいこの大広間を覆いつくすような光を放った。どうやら光の強さは、属性の強さを表すらしい。
そこまで強い光でなくても、平均すると10以上の属性とそれなりにまぶしい光を放つ属性を得ていた。ところで世界魔法って何だろう。
そしていよいよ、最後の生徒である
「光らない……だと?」
ブレスレットの石は光らなかった。一つも。これはすなわち、属性を一個も持っていないということを意味する。
「フン、ハズレか。まあ26人もいれば一人くらいはいてもおかしくないか」
なんということだ。これでは、せっかく魔法がある世界にきたのに魔法が使えないではないか。ゆいは泣きそうな気持ちを必死に抑えながら、みんなのいるところに戻った。そのあとにいった
「はぁ、わたしだけどうして……」
どれだけ嘆いても、現実は非情であった。
***
全員の属性を確認したところで、王様が口を開いた。金ぴかの衣装に、でっかい勾玉が先についた杖を持っている。
「異世界より来た勇者たちよ、そなたらに『宝石の魔女』討伐の命を与える」
いきなりそういわれても、なんのことだかさっぱりである。当然、疑問の声が上がる。
「『宝石の魔女』はどんな悪行を働いたんだ?」
それに対して、さっきまでいちいち能力に驚いていた貴族が答えた。どうやら彼が宰相のようだ。
「説明してやろう。このキングダム王国には金や銀などの貴金属、加えて魔石が豊富に産出する鉱山があるのだが、そのあたりに悪い魔女が住み着いているのだ。その魔女のせいで、鉱山の採掘ができなくなったのだよ。
我が王国は主要な輸出物を失っただけでなく、魔石不足による戦力低下という深刻な影響を受けたのだ。
挙句の果てに魔女はキングダム王国を滅ぼすと言ってきた。これは看過しがたいことだ。」
なるほど、それは大変そうな話だ。ただ、それで納得した人はクラスの半分くらいだ。
「なんで俺たちにやらせるんだ?この国にだって、騎士団はあるだろう?」
「魔女本人は若い少女なのだが、そいつが強大なドラゴンを使役しているのだ。ダイヤモンドのように硬い鱗をもち、強力な光線のブレスを放つやつで、我が騎士団の精鋭たちを以てしても全く歯が立たなかったほどだ。
しかし、お前たちなら勝てる見込みがある。だからだ」
その説明を聞いて、クラスのほとんどの生徒は納得しちゃった。なんせ、自分たちはチート能力を得たのだから、騎士たちが負けたとかいわれても全然怖くない。強い敵ほど燃える、とか考えちゃっているのだろう。
一方で、三神ゆいと担任教師の佐藤道子は慎重だった。ゆいは自分が全く強くないから。道子は大人だから。しかし残念なことに、リーダー格の辰巳勇が返事をしてしまった。
「そういうことなら任せろ!俺たちが必ず、『宝石の魔女』を倒して見せる!」
その宣言に貴族たちが「さすが勇者様」などと言っているが、全然感心しているように聞こえない。内心ではチョロいとか思ってそうだ。
そしてニヤリとした王様がこれからの予定を一方的に決めてきた。
「ならばこれから王都で一週間の訓練ののち、『宝石の魔女』の居城へと侵攻することとする。以上!勇者たちを部屋に連れていけ!」
ゆいと道子は反論しようとしたが、騎士たちが囲んできて、こちらを
***
自分たちを勇者扱いするくせに、ゆいたちには3部屋しか用意されなかった。男性用の大部屋、女性用の大部屋、そして教室として使える中部屋である。いくら仕切りやベッドが用意されているとはいえ、異世界から召喚した人々を個室に泊めないとか、常識的にありえない。
あの中世風の高そうな服を着た貴族たちだったら間違いなくキレる。
しかし、拒否したら追放されそうなので黙っているしかなかった。
さて中部屋に案内されたゆいたちだが、そこに一人の14歳くらいの少女が立っていた。
少女は黒い髪を肩のあたりで切りそろえた美少女で、黒いスーツを着ていた。
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