第2話 三式戦車と猫獣人
執事のアキュラは突然凍った道路へと飛び出し、両手を振って戦車を止めようとした。三式戦車は雪煙を上げながらアキュラの1センチ手前で停車した。
三式戦車の砲塔上部ハッチが開いて車長が顔を出す。彼女は金髪で碧眼。まだあどけない表情をした少女だった。
「危ないな。轢き殺すところだったぞ」
「そうだ。私の操縦技術に感謝しろ」
操縦席側のバイザーが開き、その中からも少女の声がした。
「申し訳ありません。萩市立地球防衛軍の車両とお見受けしました。私たちはキラリア王国のダブラ自治領から参りました。私はアキュラ。こちらはダブラのムラート太子です」
「なるほど。私は防衛軍隊長のララ・バーンスタインだ。何用か?」
「はい。我がキラリアの王女ハウラ姫は萩市の高校に通っていらっしゃると聞きました。我がムラート太子は姫君との面会を希望しております」
「何だと? ちょっと待て」
ララは一旦車内へと引っ込み、また直ぐに顔を出した。
「ハウラ姫は現在、防衛軍本部だ。面会の許可も下りた。さあ、戦車に乗れ」
「乗せていただけるのですか?」
「構わん。どうせ道に迷っていたのだろう」
「有難き幸せでございます」
「ここに乗れ」
砲塔上部のハッチからぴょこんと飛び出したララに手を引かれ、ムラート太子とアキュラ、ララの三人が戦車後部、ディーゼルエンジンの真上に立つ。
「あの? ここですか?」
「ああ、問題ない。ビアンカ。テレポートだ」
「了解!」
「ええ?」
「へっくしょん!」
半分凍ったムラート太子がくしゃみをした瞬間に二つの猫耳が頭の上に飛び出した。その瞬間、三式戦車は虹色の光に包まれ路上から消失した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます