誠一の退院と沙羅ちゃんの憂鬱
あれから、二週間が経った。
誠一が、ようやく帰ってきたのだ。
お帰りのパーティーをやると誠一は、喜んでくれる。
よかった。
元気そうで、安心した。
「メメ君、会いたかったよ」
僕は、初めて誠一に撫でられた。
うん、うん。
人間の匂いだ。
あの変な匂いはない。
「初めて触らせてくれたよ、沙羅」
「よかったね。もしかして、メメには誠一の病気が前からわかっていたりして」
「確かに初めてすり寄ってきてくれた嬉しいな」
誠一は、僕を撫でてくれる。
わかってたよ。
ずっと前から……。
だから、生きていて欲しかったんだ。
誠一は、沙羅ちゃんを幸せにしてくれる人だから……。
それをわかってるから……。
「でもね。メメがね、鳴かないの」
「何で?」
「先生が言うには腫瘍があるからじゃないかって言うの。私は、メメの声が大好きだったんだよ」
「沙羅。メメは、声だけじゃなくて可愛いところたくさんあるだろ?フカフカの毛並みとかつぶらな目とか……」
「わかってる。わかってるけど……。メメのゴロゴロは、私にとって子守唄だったから」
「沙羅……」
誠一が元気になったのに、沙羅ちゃんは泣いている。
沙羅ちゃんは、嬉しくないの?
誠一が生きてるんだよ!
これからも、ずっと一緒に生きれるんだよ!
僕は、どう頑張っても沙羅ちゃんの傍にずっといられないんだから……。
「メメが鳴けなかったら、沙羅は不幸なの?悲しくて仕方ないだけなの?」
「わかってる、わかってる。けど、まだ受け入れられないの。だけど、いつか受け入れるから」
「わかった。それまで、俺がメメ君のお世話するから」
「お願い」
沙羅ちゃんは、ずっとずっと泣き続けていた。
僕は、沙羅ちゃんを幸せにしたかったのに……。
笑顔にしたかったのに……。
どうして、こうなっちゃったんだろう?
ごめんね、沙羅ちゃん。
ごめんね、沙羅ちゃん。
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