第21話 今回は、『胃は大切にしようね』と『グリガム、なんていうガイジなんだ』の2つをお送りします。来週もみてくださいね?最初はパー、ハイ、ワイの勝ち
「重い、重すぎる。胃もたれか……そんな歳じゃないんだけどな。胃腸薬残ってるかな?」
焼き肉店で食事をして翌日、胃もたれ気味の腹を抱えながら、薬を家中探し回る。胃薬は妹が自室に持っていったり、親父が常備しているのを切らして持っていくことがあり、胃薬の消費がダントツで多い。僕もその血の
「……無いじゃん……」
薬をまとめまで入れてある引き出しを見たが、常用しているものが無い。こういう時は大概妹が取っていってることが多い。
タイミングが良く妹は塾に、両親は仕事という絶好のタイミングを狙って妹の部屋に侵入する。妹がいる時に入ると何かと面倒臭い………
『お、どうしたどうした?』
『あの、僕が貸したゲーム無い?』
『(あるわけ)ないです』
『え?そうかな、ちょっと見せてもらってもいい?』
『え?ワイの下の方を?』
『んなわけ無いじゃんアゼルバイジャン』
『おっそうだな(適当)』
『……とりあえず見せてもらうよ』
的な会話を毎回行わなくちゃいけない。ネタ切れになるとオタク用語で詰めてくるからまだマシなんだけど。淫夢語録教えたの………母さんなんだよね………。何だこれは………たまげたなぁ。
そんな事は置いといて胃薬だ。妹のありとあらゆる所を探すが見当たらない。一見すれば妹の部屋を物色する兄、絵面がひどいがこの際気にしない。
「買いに行くしか無いか………」
深いため息をついた後、僕は出かける為に部屋着から少しはマシな服装を着る。とは言っても汚い浮浪者から全て黒の現代の
「ワタシも行くよ。君がそんな感じだと不安だからね」
天使とのジャンケンに勝ったエンペラーがまるで当たり前のように横に並ぶ。エンペラーと僕の間には可愛らしい女の子、もとい量産型スライムの一人であるライちゃんがリフトオン。フフフ、ワタシ達……夫婦みたいだねと幸せそうに話すエンペラー。ごめん……余裕がないんだ。
『ぱぱー、抱っこしてぇ!!』
「おおークソガキ、胃の痛い奴に頼む流れじゃないぞ」
「良いじゃない貴方?娘のちょっとしたワガママくらい」
「おっと?元凶発見したぞ?これは吹き込んだな」
そんな事を言いながらライちゃんを持ち上げる。……何だろうか、そこら辺の子供と同じくらいの重さがある。その重さ分、僕の胃の負担が掛かる。殺す気か?
『キャッキャッ、ぱぱーありがとお!!』
しかし、楽しそうに笑うライちゃんを見て何となく下ろす気になれない。挙げ句の果てにありがとうなんて言う始末。無理だ。俺にはそんな事できない。そんな事を思って吐き気を抑えながら肩車で乗せながら思う。
「ちゃんと……捕まってるんだぞ?………下手したら頭からごっちんこだぞ……」
「え?大丈夫?顔色真っ青だけど……」
大丈夫なわけ無いだろ。少なくとも胃もたれしてるんだぞ?そんな奴に抱っこさせるんじゃない。コラ、上でユラユラするな!!
「エンペラー……大丈夫…急ごうか…」
「う、うん」
『しゅっばつ!!しゅっぱつ!!』
ランランと元気に声を張り上げるライちゃんを見て、多少は彼女?等の遊びに付き合おうと思いながら、ゆっくりと進んでいく。
「あれ?あの子……深郷田さんの息子さんじゃない?あのキレイな子……彼女さんかしらね……」
「まさか……娘さんまで連れて…………」
「停学処分の話……本当かもしれないわ……」
途中で、近所のおばさん達に出くわし、そんなヒソヒソ話を聞く。ゲッ、停学の話……ここまでにもか……。エンペラー目が光ってる。不味い!!、コイツ自己紹介する気だ!!
「エンペラー、行くな……行くなッッ……!!」
「チョッ、ちょっとだけ、ちょっとだけだから!!」
「無理無理無理!!」
「仲いいわねー」
「そうねぇ、若気の至りかしらねぇ」
いや、そうじゃないんですと頭の中で訂正を入れながら、引っ張っていく。
「ちょっ!挨拶!挨拶だけだから!!」
「エンペラー余計なこと喋るから駄目!!」
『ぱぱー、早く行こうよー』
「そうだね!!、行こうか!!さ、行くぞエンペラー!!」
「ちょっと待って!!待ってぇぇ!!」
そんな事を聞き入れるはずもなく、と言うか胃もたれしてる僕にそんな事をさせるのはおかしいと思うが、それは黙ったまま、ドラッグストアに進んでいくのだった。
ーーーーーーーー
「………やべ、吐き気が……」
無事にドラッグストアについた僕達はそのまま手洗い場に直行する。吐き気がしたのだ。それもそうだろう。本来無理をさせてはならない人物にさせたんだから。
「オェェッッ」
さっきまでの抑え込みの反動か、とんでもなく勢いよく吐き出してしまう。そこへキイっと年季の入った音と共に足音が僕の丁度横洗面台の方へ向かう。
「あらあら、そんなに吐いちゃって……大丈夫か?」
聞き馴染みのあるような、無いような声で余裕たっぷりに喋る奴に、あるわけ無いだろと言ってやりたいが、生憎そんな余裕も無く、そのまま吐き出し続ける。
「ッカカ、そんなお前にとっておきのものを用意してある」
男は短く笑い、ペットボトルの水と僕達家族愛用してる胃薬がコトッと僕の洗面台にある鏡の下の段に置かれる。やっとゲロが収まりそうになる。
「辛いよなぁ、胃もたれ気味なのにあんなに好き勝手されてもな。愛嬌なんだが……頑張ったな……」
「そういや、お前さぁどうすんの?陰陽師の奴ら」
「ウッ……やっと収まった……そりゃ、戦うしか無いよな」
「それもそうだよな、けどあんまり今の状況じゃ勝てる見込みは少ねぇよ、あの凸凹コンビに勝って慢心してるし……顔突っ込んどけ……イカれるぞ」
虚を突かれた発言に驚き、顔をあげようとするが、少し抑えられる。横にいる“ソイツ”は続ける。
「あの凸凹コンビは………まあ強い部類に入る。2人に勝てるのは陰陽師には早々に居ない位にな?だが、その一握りがとんでもなく粒揃いだ。とは言っても、4人くらいだがなぁ」
「……………どれくらい?」
「軽く天使を殴り倒せるし、ハンターと良い勝負をする。それも恐らく……4人全員、前衛後衛問わずな。それに、」
ペラペラとまるで内部にいるかの様な発言をする。しかし、僕にはそれがわからない。なぜ僕にそんな事を言うのか、彼等が消えることでメリットがあるのだろうか。そんな事を聞く暇もなく、間髪入れずに饒舌に喋る。
「しかしなぁお前、連れてるエンペラーっていう子いるだろ?、その子に依頼させろ。『陰陽師改革依頼』っていう正義を掲げたっていう感じで良いだろうな」
少なくともクソ強い奴が群がるだろうと言う。僕は目検にシワを寄せる。
「………相手は集団、それにクソ強い奴らがいるのになんで賛同して集まれる?おかしくない?」
「ああ、3年前駒として利用しようとしたバケモンが何人かのクソ強い部下と初見殺しみたいな魔獣の集団引き連れて反乱起こしたからよぉ大分戦力落ちてるんだと、でよ?今、戦力が上もわからない範囲に少しずつ削れてんだとよ恐らく残党だろうけど…何かの復活に感づいたんだろ…それで……今だろうな」
「………なんで僕にそんな事をさせる……」
「それもそうだな、だが、悪意を持って言ってる訳じゃねぇ。むしろ本当に好意で言ってんだ。ゲームで言えば黒幕?……冗談じゃねぇ」
そう愚痴るとため息を吐く。
「そうだなぁ、こんなせいで胡散臭い奴だの俺はお前の駒じゃないだのと良く言われる。だが、俺……俺達の目的は俺達生命の繁殖。このまま行くと彼奴等、世界に悪い形でおかしくしちまって、仲間を増やせねぇからな。そんだけだ……」
ゆっくりと何気にカッコつけながら言う。良い声である為イラッと来る。
「……何者なんだよ?」
その言葉を聞くと少し声を弾ませる。持ってましたとでも言いたそうに。
「……ッカカ、強いていうならビッグバン何回も超えたおじちゃんおばちゃん集団……
そう言うと、ふと顔が軽くなる。横を向くが誰も居ず、顔を上げた拍子に少し倒れた胃薬とペットボトルだけが残っている。
「………まじか、愛用してる胃薬だし……なんだったんだ……」
ふと掴んだ胃薬の裏に付箋があるのに気づく。
“マジカンバレ寿一郎 ガミムより”
「……ガミム…」
僕はようやく……得体の知れないバケモノに会ったのだと理解した。急いで戻ると目をパチクリさせたエンペラーがいた。
「あれ?、早いね。すぐじゃん」
「え?、少し時間食ってたはずだけど……」
「え?そうには見えないけど………」
「………そうか、急いで戻ろう………調べたいことがある」
後ろに嫌な汗を流した後、そのまま家に戻り、グリガムについて調べる。すると、一件のサイトを見つける。『グリガム』、開けるとその説明が出ており、横に明らかにするものと思われる感じの胡散臭さが流れている。そこに大々的に赤文字で出ている目的は『自分たちの繁殖の為に』という更にとんでもなく臭うのもであつった。
余計不安になった。
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