第12話 あ、お姉さん?、刀を持つのが趣味なの?通り魔みたいだね、怖いよ
「ッチ、は?ヴァァァァァァァ!!!!」
僕はバイトを終えた時に、持ってきたカードをバイト用のバックに携え、ドレカバトルをしようとゲーセンに凸をした。結果は惨敗、運営の思惑によって10回連続の『ミス』を連発したあと、お前の負けというデカデカと書かれた液晶画面にキレ、台パン発狂していた。幸い死んだ目をしている同類の店員しかいないため、僕の残響は誰にも聞こえない。まあ、店員さんには聞こえるけど。
「クソ!俺のパーティーは魔王パーティーだぞ!?、負ける要素がないだろ?なんで負けてるんだよ!!ァァァァァァァッッしゃらくせえ!!、画面から出てこいやメンチカツにしてやるよ!!」
「お客さん、そろそろ少し音量下げて………あと物に八つ当たりするのはちょっと………」
「あ、すみません」
ブチギレガチンコファイトをしでかそうと立ち上がり深郷田、怒りのファイティングポーズをした所で死んだ目の店員が待ったをかける。そこで僕はハッとなり頭を下げてからもう一回コインを入れる。
「好きですねーホント……好きすぎて壊さないでくださいよ……」
「大丈夫ですよ、僕も生粋のマニアなんでね」
壊しかけていたクセにという掠れた声とともにスタッフ専用部屋に潜る。この店員さん、あまり仕事をするタイプじゃない。だからここの深夜時間にダラダラしても咎められないような所でバイトをしているらしい。
今頃スマホで課金をしてるか、寝ているだろう。いつも居る僕と談笑まじりにそんな事を自分で暴露していた。また、店長は毎回バイトを始める時にのみ来るので、それがバレる心配は無いらしい。
お気楽なものだなぁと一緒にアーケードをしながら話半分で聞いていたのを覚えている。その時もボロ負けして癇癪を起こした。
「……シャッッッッ!!、どうだみたか、雑魚がッ!!」
その後僕はドレカバトルとの運営の操作を読み、完膚なきまでの勝利を勝ち取った。
勝利後に何を強化したいのかと出てくる選択欄一覧からついさっき倒したモンスターがカードにできることを見てニヤける。
「使い倒してやるわ。せいぜい頑張るんだな?、ふへへへ」
コトンという音と共に僕のカードとなったモンスターが中から出てくる。気持ちよさにふけっていると、扉が開く音がした。足音は二人だろうか?
「あれ?、先輩じゃないですか!」
「あ、こんばんは後輩ちゃん。あら、お姉さんも一緒なんだね」
「そうなんですよ、お姉ちゃん。今日は送ってくれるらしくて……」
「………いつも勉強を頑張っているから、今日ぐらいは勉強後にこういうのも良いかなと思って……あ、」
挨拶され、振り返るとそこにはいつも話している後輩と、その2歳年上の姉であるお姉さんが立っていた。このお姉さんは本当に優等生で、運動神経抜群、成績優秀、更に生徒会長というなんかなろう系みたいな人物であり、誰とでも仲良く慣れるスーパーエリートガールだ。ココだけの話、個人的にお姉さんとはあまり話したことがない。そもそもお姉さんはなんというか僕と話したがらない。いつも最低限の事をチョロッというだけで終わり。現に、今も話している中に入ろうとしない。
ただ、僕はお姉さんのその後輩ちゃんにかける優しさというのは本当に見てて心地が良い。こっちまで浄化されてしまう。
「ハハハ、そうなんだ。後輩ちゃん、一緒にアーケードする?」
明らかに声が元気になり、ハイッと元気な声を出す。可愛い。後ろのお姉さんも笑顔が深くなる。
「お姉さんも一緒に……」
「いや、私はこういうのは苦手なんだ……残念だけど見ているだけで良い」
にこやかにそう言うと、僕らの後ろの椅子に据わる。……勝てないんだよなぁ。
『ユウルーズ』
やかましい。案の定、僕は後輩のプレイヤーの半分も削れずに負けてしまう。後ろにいるお姉さんもなんというか可哀想な目でこっちを見ている。見てくるなよ。
「……負けちゃった。やっぱ強いねぇ後輩ちゃんは……」
「フフ、そう思いますか?、世界の人達と比べたら全然なんですよ」
世界目指してるんだ凄いなと内心感心する。最近はこういうのもスポーツの分野として発達しているからだ。そこにちょこん居るかわいい後輩…良いね、凄く良い。
しかし、そんな事に思いに耽っているとブーブーと後輩のスマホから音がなる。
「あ、先輩……ちょっと電話なんで、席外してきます」
「うん……分かったよ。持ってるね」
ありがとうございますと言うと、ゲーセンから足早に出ていく。出ていったあとに残るのはコミュ障と優等生というアンマッチな対面。とんでもなくキツイ無言が続く。そんな無言を先に破ったのは、お姉さんのほうであった。
「…………深郷田………ひ、久しぶりだな」
???????????
久しぶりという言葉が頭の中で響く。
何を言っているんだ?僕達は別に仲良かった思い出とかはあまりない。とりあえず、場が白けるとダメなので話を合わせる。
「ひ……久しぶり……ですね………先輩……」
「……あ……あの……ちょ……調子はどう………?」
「………ボチボチ………ですね………」
「…………」
「…………」
ヤバい、話が出ない。友だちと仲良く話している時にいや、俺別に好きじゃないけどとか言われた時の沈黙と類似している。こういう空気が一番怖いんだよ。
「………あ……そう言えば最近……近くで何か、騒動があったって……なにか……わかる?」
お姉さんがか細い口調で述べた話題は付近の問題がなにかあったとのこと。真っ先に浮かんだのは僕が巻き込まれたあの化け物の出来事。他のものを頭の中で探って見たものの、あまりわからない。
「………あれですか、あの火遊びの?」
「………そうらしい………けど……不自然に焼かれてて、何か壁が抉られているんだよねだからね考えたんだよ、あれ………『
「妖………ですか………」
突拍子もない、脈絡のない発言。だけどその言葉に何やらしっくりくるものがあった。あの化け物が妖怪であると。勝手に呼んだだけなのに、ずっと前から知っているような感覚を覚えた。彼女は続ける。
「最近さ、こういうの多いんだ。…何となく……知っているんじゃないの……かなって………」
「………妖ですか……うーん……分かりません………」
「そうだよね………けど、
何でそもそも妖について聞かなかった?」
その言葉と同時にポケットから出てきた長い棒を叩き、刀に変える。
「よりにもよって…君が出てきてしまうなんて……君は……君だけには……危害は加えたくない」
悲しげな目をしながら彼女は僕を見る。
「ただ……ここからは正直に話してくれないか?」
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