第7話 サバゲーってなんであんな面白いの?

僕はサバゲーが好きだ。中学時代ではよくサバゲーに行っていたくらい好きだった。思い出がある高校生になった頃、ずっと改造するだけにとどめていたのだが、この度新しくエアガンをお迎えすることになった。それも5万円もする。


当然僕は狂喜乱舞、食べ物なのかと飲み込みそうになるスライムを引っ剥がし、箱からその子を取り出す。緊張のあまり手汗がびっしょりになり、落としてしまうことも考えて、手袋を持ってくる。触ろうとした天使とゴブリンを静止し、クローゼットから昔から使っていた的を取り出す。そして、僕は的に向かいど真ん中を命中させる。よし、腕は落ちていないな。それにしても精度がすごい。


そうやって僕は、このエアガンをみる。このこの名前はデザートイーグル。長年僕が愛用していたものの高級品だ。重さだって断然違う。


「ねぇねぇ、コレなんなの?凄い音がしたけど」


「これ?エアガンって言うんだよね。で、この子の名前があってデザートイーグルって言うんだ。初めから使ってる、僕の愛銃って言っても過言じゃないくらいだよ」


隣で興味深そうに見てくる3体にそうやって見せびらかすようにこの子を自慢する。


「あ、じゃあ君がクローゼットの中からよく手入れしてた物と同じ何だね」


「まあそうだね、あれはサバゲーに行くときにメインで使うね。大体6丁、その内スナイパーライフルが1丁、アサルトライフルが3丁に、僕のデザートイーグルとリボルバーが一丁ずつ」


スコープはいじくり回すなよと補足しながら慎重にクローゼットからすべて取り出す。どれこれも僕の愛してる銃だ。こらスライム、ナチュラルにスコープに手を出そうとするな。一方隣で目を輝かせる天使は興味があるらしい。


「楽しそうだね!!ボクも行かせてよ!!」


フヘヘヘFPSで培った技術を得と見るが良い!!と息巻いている天使を見て、お前スライムにも負けるだろと心の中で突っ込みながらスコープの調整をする。良し、大丈夫だ。


しかし、サバゲーに行くとしても僕はボッチだ。親父と一緒に行って親子共々コミュ障を発揮し、やりませんかと言えずにただ的を撃つだけで終わった日もあった。せめて親父は少し格好良いところが見たかった。


そう考えると最低限もう一人の人型の仲間が必要だ。天使は衣装だと偽れてもゴブリンとスライムは無理だろう。ゴブリンの肌はサバゲーに同化しても街では見つかりやすいし、スライムなんて液体だ。たまに擬態するにしても人に擬態するには少しぎこちない。


「天使、君ともう一人仲間が必要だ。ただ、ゴブリンとスライムは行けない。深夜のコンビニぐらいなお前等を連れてってやれるが今回ばかりは勘弁してくれ」


ゴブリンと肩を落とし、スライムは萎んだものの何やら納得はしているようで抗議はされなかった。本当にすまんな。


「え?てことはどうするの?」


「召喚だろ。当たり前だろ」


「普通当たり前のように召喚はしないんだよねぇ」


そう言いながら、僕は五芒星の紙と天使の羽を用意する。今日もまた家族が遅い。ドッタンバッタン大騒ぎをしても咎められないのだ。今日は、獣になるぞ。そう思いながら一滴垂らし、ライターで火を付ける。


やがてその炎は大きくなり、僕の身長と同じ高さになっていく。ここで悲劇が訪れた。僕のスナイパーライフルがこの炎に巻き込まれたのだ。サバゲーで目立たないように砂色にペイントし、精度の向上の為に試行錯誤をしていった思い出のある物だ。しかしこの世は無情、そんなスナイパーライフルもメラメラと燃え移る。発狂する僕、唖然とする3体、そんな僕等を置いてその火はスナイパーライフルと融合し消える。


「ウワァァァァァァァァ!!僕の!僕のアサルト!!イヤァァァァァ!。あれ、なんかこいつ銃持ってる?」


僕の叫びとともに現れたそのモンスターは、カウボーイハットを被り、口半分を青い布で覆った中世の狩人の姿をしていた。後ろには猟銃に青と赤が入り混じったような亀裂の入った割れ目があり、より狩人の異質さを連想させる。


「ア?ドコだ此処?おいそこのモブ顔。テメェがオレをここに呼んだのか?早く答えろ殺すぞ!!」


どうやらこのハンターは短気らしい。僕は慌てて事の経緯を話す。


「ッチ、召喚ダァ?……聞いたことあるぞ。お前は俺を奴隷にするために召喚したんだな?悪く思うなよ!」


「え?」


ダンッ!と激しい音がした後、僕の眉間に風穴が開く。その音とともに僕は後ろに倒れ込む。


「……ま、そんな事もするやっぱいるだろうと思ったよ。スライム、時間稼いでゴブリンはがら空き担ってるボクを守って……さて、治療開始」


薄れゆく景色の中で天使が何やら他の2体と何やら喋っている。あ、じいちゃんが僕に手を振ってる。あれ?死んでたの?ん?なんか言ってる?。ごめん、もっと大きい声で喋って。


「タダでは死なせないよ……嫌でしょ?こんなところで死ぬのさ…」


僕のじいちゃんは横に女性を侍らせている。何コイツ、死者の分際で何呑気に暮らしてんだ!僕も入れさせろ。

てかじいちゃんご存命じゃない?


「寿一郎、来るんじゃない!!」


「は?、この後に及んでクソジジイ何いってんだ!」


「ここじゃボン・キュッ・ボンがおらん!!」


「イヤァァァァァ!!アレ?生きてる」


「……おはよう、寝顔が可愛かったよ」


キッショ。そんな事を思いつつ、狩人を見る。そこにはスライムにものすごく風穴を開けて少し涼し気なハンターと、風穴を開けられているものの少しずつ距離を詰めているスライムの姿があった。


「ッチ、強ぇな。だが核にさえ当てればどうってことネェンだよ!!」


そう言いながら気迫でスライムを退けさせ、スライムを銃の核に向ける。しかしそれが悪かった。銃口を向けた瞬間にスライムは手首に突進し、猟銃を手から離させ、その隙に奪い取った。


「クソ!しまった!ヤロォ!!ぶっ倒してやる」


某アクション映画の敵役が言っていたことを言う。君、ネットミームの素質あるよ。


スライムが僕の方に近づき、猟銃を渡してくるが僕はそれを跳ね除け、前に出る。最近めっちゃ鍛えてるし、やるだけやってやるよ。


しかしそうとは知らずにスライムの苦戦はどこへやら前に出てきた僕にニヤニヤと笑みを浮かべる。


「お前行けると思うか?召喚士ってよ、大体クソヨェんだよ。それでもやるか?世間知らずのお坊ちゃまヨォ!」


「そうだねぇ。試してみるかい?僕が本当に弱いのかどうかってやつをさ!!」


そういった瞬間に狩人は飛び出し殴りにかかる。










僕はボコボコにされた。顔が腫れ、鼻も折れた。


「大丈夫!!君なら行けるさッハハ!!」


そう行って天使は僕に、回復をかける。え?バトル続行するんすか?え?待って止めて誰か。


「シャア!ボコボコしてやるよ!!」


「うわ!、酷いよね!!、死の淵にいた僕に半殺しにするとか!」


そう言いながら狩人の攻撃を凌ぎつつ、隙を図る。あれ?、無くね?これ勝て無いかもしれない。


「あ、ボクジョーカー引いちゃった。うまいね!ゴブリン」


「ちょ!何でトランプ!?、ちょタンマタンマ!ァァァァァァ!!」


僕は回復されてもなお殴られ、結局ほぼ瀕死の状態にまで責められた。


「あぁ、もう動けないね。オラ、積年の恨み!!」


天使は思いっきり倒れている僕に背中を蹴り上げる。痛!!何してんだよ!!だがその声は届かない。ゴブリンとスライムはボコボコにされた僕に対して焦っているのかキョロキョロしている。何で人外がマトモな感性持ってんだよ。


「ハッ!雑魚のくせオレに逆らうからなんだよ、弱いやつは淘汰される……それが自然の摂理だ!」


そう行って、狩人は僕を壁まで蹴り飛ばす。蹴り飛ばしたあと、天使はすかさず回復魔法をかける。やるじゃないか。


「ゲホッ、良いねぇ……ゲホッ、けどね……抗うものでしょ?じゃやるよ?……ボコボコにしてやるよ」


「さっきボコボコにされ出たくせによく言うナァ、イライラすんだよ、往生際が悪いのは!!」


「え?、そんな事言う?殺るよ?殺っちゃうよ?」


「ほざけ!!」


そうやって僕に殴りかかる。さて君達に質問だ。君は相手が殴りかかって来た時、パターンが同じだった時どうする。


正解はね、ボコボコにされるだね。簡単すぎたかな?


「ちょ!示談!!示談にしよゴッ……」


「こっち息してないよ。もう一回かけるから、ゾンビアタックかけなよ?」


「ゾンビアタック!!」


「ふん!」


「ゴハッ!!無理っす!!」


「……ゴブ」


死にかけの僕を見てゴブリンは心配そうに見てくる。ホントにお前は良いやつだよ。パソコンに向かって台パンさえしていなければ。心の中でつぶやき死にかけになる。天使はと回復魔法を掛けながらじっと見つめてくる。それを見たハンターは堪忍袋の尾が切れ、担架を切る。


「弱い、お前……何でそんなに弱いんだ!!……戦いになればお前は直ぐに死ぬ!!だと言うのに何で今まで生きてきた!!お前たちも何でこんな雑魚の味方をする!!見殺しにすればよかっただろ!!」


え?僕天使達を奴隷にしたわけじゃないぞ?というか僕が居ない間めっちゃ自由奔放じゃん?殺される必要なくね?。


「……ここは戦場じゃない、彼はただの召喚士だ。それも一介のね…」


天使は淡々と僕に近づきながら言う。


「だがお前達はあいつにモンスターとして召喚され、縛られている!!………違うか?」


「確かに縛られているのかも知れない。だけど彼は、ボクの初めての親友だ。死んでほしくないんだよ……みなよ、あっちのゴブリンとスライム。あんなに生き生きしてた?君が居たところでは自我持ってる気がしなかったんじゃ無い?実際にボクも含めそうだった」


天使は僕の前に立つとハンターに向かい対峙する。その姿にハンターは冷や汗をかく。


「……お前、イカれてるぜ。支配されてるのに気づかずにここが幸せなんて……洗脳されてんだよ」


「洗脳?フフフ……されてたらボクに週5でアイス買ってこないんだよ。さては君、洗脳という言葉を使いたい年ごろかな?」


「ッッッッッッぶち殺してやる!!」


青筋を浮かべ天使に殴りかかる。天使は彼に避け、何事もないように体制を立て直す。だけど考えてみてほしい。天使の後ろにいた僕はどうなるか。殴られます。


「ブベッ!!」


「あ、スマン……って言ってる場合じゃネェ!!死ね!!」


追い打ちの攻撃を喰らい、瀕死になる。え?今回僕死にかけ過ぎじゃない。


「流石にやり過ぎじゃない?」


「んなワケネェ、どうせコイツもオレを奴隷にするために来たんだ!、容赦なんてしなくて良い!!」


「そうかい?、じゃあ君が負けたら実際に彼の奴隷とやらになってみてよ。ボクが負けたらそうだね……彼を殺しても良いよ!!」


「人の心ないんか?」


「フフフ……天使だもの」


「そうか、じゃあ遠慮なく使わせてもらうぜ」


え?僕殺されるの?そんな事を思いながら、動向を見る。


「身体強化『ギバト』、『アッグパンチ』」


体中から淡い光を包み込み、手から炎が燃え上がり、それを天使にぶち込む。天使はそれを受け止め、血反吐を吐くがニヤニヤと毅然としている。直後天使から淡い光が出現し、天使を包み込む。


「『ギバト』、回復はもう完了したし、もっときなよ?」


「ッッッ!、『アグナクロー』!」


炎の爪が出現し、それで天使を引っ掻く。しかし、何度引っ掻いても回復によって瞬時にもとに戻る。え?、チートじゃん?


「焦って判断ミスってない?、大丈夫?」


「そんなわけ無いだろ!!、『アグリナス・バスベルド』!」


そう言うと手から炎で包まれた銃が出現し、天使に向かって撃ち抜く。えぇ、かっこよ。だが、肝心な天使はまるで効いていないかの様に傷が無くなっている。


「ボクはね、天使の中では1位を独占するほど魔力の量くてね……誰もボクのように魔力を放出し続けることはできなかったんだ。」


淡々と笑いながら言う天使はそれにと続け、


「ボクは素手でドラゴンを倒したことがある」


脳筋かよ。クソ強えな。


「だからどうした、ドラゴンに勝ててもそれはオレに勝てる証拠にはならネェ……」


ハンターは『アグナクロー』で天使に引っ掻こうと走り出す。しかし、それを難なくと避ける。


「そうだね、けど君は僕と戦う時、何処か慢心があった。どうせ勝てると思ったんでしょ?、今も、最悪も想定した?。負けることを考えて行動した?。してないよね、そんなやつの攻撃、凌げるんだよ。


そして………」


天使の姿が一瞬ブレるとともにハンターは吹き飛ばされ、血反吐を吐く。


「ハッ……速すぎる……!クソ……!オレの負けだ……初めから勝ち目なんてなかったか」


そう言いながら、ハンターは淡い光となって消えて行く。ハンターは散り際意外にもカッコよく、ニヒルな笑みを浮かべながら消えていった。


ただ、現状を考えてみてほしい。ここは僕の部屋だ。そしてそれに好き勝手暴れてみなよ?。鏡とか割れてるんだよ。


「派手にやったねぇ。これ誰が弁償するんだろうね」


「君じゃない?」


「え?」


ーーーーーーーー


バイト代が削れる中、3週間が過ぎ、僕達はサバゲーに行った。何であそこまで苦労してサバゲーに落ち着くのかはわからないけど、もうどうでもよかった。ハンターはスナイパーライフルを持って行き、自信満々で掲げる姿に子供かと笑っているとボコボコされた。


サバゲーの結果はと言うと、ハンターの圧倒的狙撃の上手さにほぼ相手があたってしまい、誰とも対峙することなく終わった。僕等は泣いた。だけど、そんな事もお構いなしに笑いながら狙撃するハンターをみて狂気を覚え、それを責める気が起きなかった。


「……悪くネェ、久しぶりだ。昔との会話を思い出す……」


大手ショッピングモールの一つの料理店に入りでドサクサに紛れてゴブリンとスライム、天使を含む3体が夕食を食べているのを眺めながら、ついでに外の空気を吸おうと外に出ると、隣で私服姿に馴染んだハンターがそんな事を言い出した。


「どうした?、藪から棒に…」


「……こっちの都合だ……だが……もう会えネェ」


悲しそうに吐露する声は少し震えている。なるほど。嫌だね、こんなシリアスな雰囲気。僕、こういうのに脆いんだ。


「良い思い出だね。君がそんな事をいうなんて良い奴ら何だろう。」


「………ああ、幸せだった。……五月蝿くてバカだったあの頃に……もう一度、チャンスがあるなら……オレがあそこで弱いことに甘んじていたから……強ければ……目の前で死ななかった。」


隣でつぶやく彼の姿は少し小さく見えた。彼が雑魚が嫌いだったのは、昔の自分と写してしまったのかも知れない。


「君の幸せだったあの頃は知らない……だけど君は強くなった……見せてやれ、君の最強の姿をさ……#大丈夫、次があるさ__・__#」


ハンターは、僕の言葉に目を見開き、驚き固まり、涙を流す。投影しているのかも知れない。大切な仲間の一人を。


「……お前はあるか?、失ったこと……」


ひとしきり涙を流したハンターに僕はそんな事を聞かれる。その言葉は初めて会ったときと違い、何処か優しさがあった。僕は、静かにその声を聞いたあと、少し間を置き、事も無げに呟いた。


「……ないない、周りがあまりにも酷くてね。笑ったちゃうよ……ったくもう!」


それを聞くと、そうかと言いながら天使達の待つ料理店に戻った。ハンターは何か声をかけようとしたのだろうか、少し躊躇があった。







余談だが、そこの金額は2万を超えた。おのれスライム!!。


各モンスター成長

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ゴブリン

戦闘能力

14


SKILL

棍棒術 5

口論 7

同情的精神 2 

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スライム 

戦闘能力

15


SKILL

集団行動 6

擬態  4

収納 3

悪食 3

友情 3

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

天使

戦闘能力

21


SKILL

飛行 9

槍術 7

回復魔法 7

浄化魔法 5

身体強化 8

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

ハンター

戦闘能力

24


SKILL

白兵戦 2

身体強化 6

超距離射撃 9

百発百中 10

守る者ハンター 10

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