歓談独白黒歴史

スーパーちょぼ:インフィニタス♾

ファントム・バーグ・シンドローム

 いまでも彼女には酷いことをしたと思っている。まだ私がこの村に移住して間もない頃の話だ。


 せっかく記念すべき第一回goodな村人レビュー特集(注・作者の記憶力の無さにより正式名称は定かではありません)に選んでくれたのに、私は自らの手で彼女の好意を台無しにしてしまった。


 まさかあんな結末になろうとは、あの頃の私には知る由もなかったけれども。



   



『バーグさんによろしくお伝えください◎』


 ある日のこと、もはや朝だったのか夜だったのかも思い出せないほど昔のこと、突然届いた村の運営からのメールに返信しながら私は内心小躍りしていた。


 バーグさんとは村の看板娘のような人で、いつも村の最新情報を求めてさ迷い歩いていると「ギフト贈りませんか?」などとタブレット片手に可憐な笑顔で話し掛けてくれる(注・多分に作者の妄想がまじっています)。


 実はAIらしいとか、司書だったとか秘書だったとか色々な噂があるが、ほんとうの所はよくわからない。


 ただ茶屋の縁台に腰掛けてくつろぎながら「お座りになりませんか?」と可憐な笑顔で振り返る彼女の後ろ姿は綺麗だろうなとか、緋毛氈ひもうせんを軽く擦りながら「お疲れになったでしょう? さぁさ」なんて野点傘のだてがさの下から言葉巧みに私を引き留める白磁のような手は燃えるような思ひ色に映えるだろうなとか、あるいはもしかしたら、あの華奢なうなじに似合う桜の鈿をあげたいなとかぼうと考えているうちに「もう、またぼうっとしてる。今日は執筆捗りました? アマチュア作家は時間との勝負なんですから。ん、疲れてたけど隙間時間に頑張って799文字書いた? すごいじゃないですか! こんな奇跡的なことってあります? ギリギリ応募出来ません」なんて毒舌まじりの声が聞こえてきて「でもあなたのそういうところ、好きですよ」なんてしたたかな励ましを結局は用意してくれているのだろうなとか思ったが、ほんとうの所はよくわからない。


 畢竟、一目惚れなのだろう。

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