一章 ー壱ー

「いらっしゃいませ!」

日が暮れかけている週の初め、憂鬱な気持ちを抱きながらお店に来たお客さんに挨拶をする。

月曜日から家の手伝いだなんて最悪のスタートだよ。と不貞腐れているとうるさい二人組の男子高校生が入ってきた。

「翔哉お疲れ!ちゃんと働けよ〜?」

「にしても月曜日から家の手伝いなんて意外と真面目なところあるんだな」

と軽い煽りを入れながら話すこの二人は俺のクラスメイトであり親友の律と彰だ。

はいはいとあしらっていると律が大きな声で言った。

「てか翔哉聞いた?森園さん帰りのHR終わった後少ししてからさ、体調悪そうにしちゃって倒れたんだよ!彰がすぐ先生呼んでくれたから良かったけどさぁ。焦ったよなー!」

「律は焦りすぎ。知らない人が見たら律が森園さんに何かしたみたいに見えるよあれ」

そんなことがあったのか。HRが終わってすぐに帰ってきたから全然知らなかった。

「クラスの男子もさー、森園さんが明日から休むかもって話になったら急にテンション下がるだよ。翔哉からもなんか言ってやれよな!」

「まぁ男子高校生なんてそんなもんでしょ。クラスのマドンナのいない教室は価値が一気に下がるしね。」


森園蘭菜。

彰が言ったようにクラスのマドンナ的立ち位置に君臨し、 常に肌も白く整った容姿をしていながらも異性に対して笑みを向けたところを誰も目にしたことがないため「氷の女帝」と一部から言われている。そんな森園蘭菜だが、俺の幼馴染で親同士の仲が良く物心ついたころから常に一緒に居ることが多かったが、歳を重ねるごとに関わりは自然と減っていった。

小さい頃は体調を崩すことなど多々あったが、中学に上がってから蘭菜が体調不良になった記憶はない。少し珍しいなと思いつつ、あまり気に留めないことにした。

「まぁ、大したことないだろ」

と俺が言うと

「まぁそこまで酷くはないだろうな!」

と律が言ったところで彰が俺に手を振り帰っていったので、それに気づいた律が付いていくように帰っていった。


「体調不良…か」

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