私はミケ

獅子2の16乗

母?

 種類が三毛猫だからということで、お祖母ちゃんが“ミケ”と名付けてくれた。


 我が家は、人間6人、ニワトリ十数羽、ヤギ1頭、そして私。


 お父ちゃんの車、あったかくて好き。


 お母ちゃんはゴハンをくれるから好き。


 お祖母ちゃんは名前を付けてくれたし、時々ゴハンをくれるから好き。

 メスと生まれてきたのならば“Frigg(フリッグ)”なんて名前も素敵だと思うんだけど、ミケという名前は気に入ってる。


 お兄ちゃんは私達小さきものへの愛情過多で、私と一緒に寝たがるから好き。


 先代猫の“アマ”ちゃんから、お兄ちゃんは上の妹ちゃんと結婚するって宣言してたって教えてもらった。おかしな子……それも、1回宣言したらお母ちゃんに“兄妹は結婚できない”って言われてしばらくしてから“この前はダメだったけど、今度は?”って聞いたっていう。

 下の妹ちゃんももちろん可愛がってるから、どこまで、小さきものが好きなのかしら。


 妹ちゃんたちも可愛がってくれるから好き。



 お兄ちゃんったら、狩りができないみたい。

 私を可愛がるのもいいけど、狩りができないと生きていけないし、狩りのできないオスはモテないよ。

 だから、その気にさせるため、私が狩ってきた雀を見せてるんだけど、一向に狩りの練習をする気にならないみたい。

 困ったわ~


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ここ、どこ?

 私、お父ちゃんの車でお昼寝してたのよね。

 いつの間にか、見覚えがない場所に来てる。


 あ、道の向こうにお兄ちゃんと似た男の子がいる。


 道を渡って、ここはどこかあの子に聞いてみよう。


 ねぇ……


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 私は無限に生きられるから、今の楽しみは、家族のみんなの“今”を見て回ること。


 お兄ちゃん大きくなったけど、なかなか結婚できないのね。

 やっぱり狩りができないのがダメだったのかしら。


 あ、この女の人、お兄ちゃんのことが好きみたい。

 お兄ちゃん、狩りはダメダメだけどいい人なんだよ。だからお願い、結婚してあげて。


 よし!

 お兄ちゃん、あの女の人と結婚できた。良かった。

 ふーん、女の子に恵まれたんだ。良かった良かった。


 ん、お兄ちゃん、獅子とか名乗って、ぱそこんっていう機械で物語を作ってるみたい。

 どんな物語を作ってるのかしら……“種類が三毛猫だからということで、お祖母ちゃんが“ミケ”と名付けてくれた”

 ……獅子っていうペンネームといい、作ってる物語といい、私のことが忘れられないのね。


 しょうがないお兄ちゃんね。うれしいけど。


 でもお兄ちゃん、あの女の人に拾ってもらったんだから、くれぐれもばれないようにね。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る