電脳世界の大天使
猛くん
第0話 今日は祝(福の)日
「ついに……来た……!」
こうして画面とにらめっこしてからもう何時間が経過したんだろう?俺にはもう分からない。
時間の感覚がなくなっているんだから恐らく5、6時間は経過していると思う。
まあ時間なんてどうでもいい。今日というこの瞬間、悲願は達成されたんだ。そして俺はその歴史的瞬間をしっかりと肉眼で見届けることが出来た。こんなにうれしいことは無い。
俺は高ぶる気持ちを抑えきれず、早速SNSのZを開いた。
タイムラインを確認してみたりエゴサをしてみてがこの出来事に関するつぶやきは一切見当たらず、当の本人も更新がお昼の侍ノスバーガーの食レポ配信関連で止まっている。
(皆寝ているのかな?)
まあいいや。誰も言ってないのならば好都合。俺がその第一人者になればいいだけだ。
(ルイスちゃん、チャンネル登録者9千人おめでとう!)
俺はそう入力し、自身のアカウントでつぶやいた。
ルイスちゃん。フルネームは
彼女は今からおよそ1年ほど前から色々な動画配信サイトで活動している個人勢のバーチャルユーチューバーだ。
知名度は……まあうん、登録者数を見れば分かる通りあまり無いが今俺が最も押しているVtuberだ。
たかが9千人でそんな大袈裟な。って言う人も多い思うが、こちとら登録者6人の時からいる古参勢だ。そこから応援している身の一人として祝福せざるを得ないだろう。
そうだ。宴をしよう。
今は何時だか知らないがそれぐらいの時間はあるはずだ。
そう思っていると、家の外から小鳥のさえずりが聞こえてきた。
きっと鳥たちも彼女を祝福してくれているのだろう。これは今すぐにでも始めるべきだな。
コケコッコー!!
するとその時、俺が立ち上がるのと同時にもう一島の声も聞こえてきた。
(え……?これの鳴き声は……に、鶏……?)
なんだか嫌な予感がした俺は恐る恐る部屋のカーテンを開けてみた。
「眩し!?」
そしてカーテンを開けてみると、もう空は明るくなっていた。
その景色を見て少し唖然とした後にスマホの時計を見てた。
(……は、8時?)
表示された数字を何度も見直したが、やはりそこには”8:02”と表示されていた。あ、今2が3に変わった……
それを見た俺は一旦スマホををベットに投げつけた。
そして次は無意味に立ち上げていたパソコンのスマホ画面を見てみると、そこにはやはり”8:03”と表示されていた。
……
………
…………これってさあ
「もう朝になってるじゃねえかああああああああ!?」
認めたくない事実を目の前にした俺は思わず叫んでしまった。
や、やっちまったぜ!
しかもよりにもよって今日は始業式の日なのに徹夜をしてしまった。
馬鹿なんじゃないの?アホなんじゃないの?何を考えたらそんなことするの!?
いやでも待てよ……
今日はルイスちゃんの9千人を祝福すべき日なんだからこれもう祝日みたいなものだろ。
うん、そうだよ。今日は祝日だ!
……
………
…………
なんか勝手に一人で言ってて悲しくなった。現実は残酷だ……
ま、まあ、始業式なんて適当に先生の話聞いてるだけで終わるし?あと半日だし?授業という授業もないし?一睡もしなくてもワンチャン何とかなるのでは?
うん、大丈夫でしょ。自信ないし根拠もないし、うまくいったためしも一度もないけど。
ああもう、これはやるしかねえなコノヤロウ。
覚悟を決めた俺はベットから跳ね起き上がるもその決意虚しく、結局ダラダラと制服に着替え始めた。
あ、そういや新学年だからクラス替えがあるのか。今年こそは知り合いの一人や二人はクラスにいてほしいなあ……
去年は唯一の知り合いのトシとクラスが違って色々と不安だったけど、結果的に赤松や石原とかに出会えたわけだし結果オーライって感じだったしな。
それとできれば陽キャは少ない方が良いな。あいつらと一緒にいると単純に疲れるし。まあ最悪ボッチでもいいし……
そううだうだと考えながら支度をしていると、滅多に鳴らない俺のスマホが震えだした。
噂をすれば何とやらってやつなのかなと思いつつ、スマホ画面を確認してみる。
……
…………
あ、あれ?なんか何も映らない。
いくら画面をタップしても俺のスマホはうんともすんともいわない。
ま、まさか……壊れたのか……?
いやそんなまさか……
俺はなんとなくスマホの電源ボタンを押してみた。
すると画面中央には”0%”という文字が映し出されていた。
なんだあ、ただの充電切れか。よかったー。
……いや全然良くない!?俺これから学校なんだけど!?俺モバイルバッテリーとか持っていないんだけど!?
「ええい、何とかなれー!」
俺は半ばヤケクソ気味にスマホの充電を始めた。
今から充電すればまだいけるだろ。朝飯食って、顔洗って歯磨いたりと準備すれば大丈夫なはずだ。
せめて、せめて20%ぐらいなら何とかなるかもしれない。半日だし。
と思ってはいたが現実はそう上手くいかず、結局俺が家を出たときの充電は17%だった。
まあ……でも、うん。よく頑張った方なんじゃない?知らんけど。
こうして俺の新たな日々の始まりは、なんだかグダグダな形で始まった。
こんな風に言うとなんか盛大な物語でも始まりそうだけど、別にそんなことは無いと思う。
2次元の世界でもあるまいし……
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