くろのんのショート・ショート
くろのん
第1話 120年後の待ち人
「やっと着いたか……」
目を細めて呟いた初老の男性は、人類初の恒星間宇宙船の乗組員だ。
彼だけではない、この宇宙船には、彼と志を同じくする大勢の志願者が乗っていた。
片道の旅にも関わらず、彼らは地球からここまで50年をかけてやってきたのだ。
彼らは地球には帰れないが、その成果だけは同じ50年をかけて地球に届くだろう。
きっかけは120年前に届いた通信ポッドだった。
通信ポッドは、太陽系外の未知の知的生命体(宇宙人)から送られてきたものだった。
20年かけて解読できたその通信文は、「120年後にアルファ・ケンタウリで会おう」というメッセージだった。
太陽系外の知的生命体の存在を確信した人類は、総力を挙げて宇宙船を建造する。
国家は統一され一つとなった。科学技術が発展し恒星間を航行できる宇宙船を発進させるまでになった。
それでも、宇宙船の建設には50年、宇宙を移動するのに50年、ポッド到着からすべての期間を合わせて120年の年月がかかった。
奇しくも、通信ポッドの指定の期日に、ピッタリ間に合うこととなった。
――そして、人類初の恒星間宇宙船は、最後の軌道修正をおこない、指定の座標に到達した。
「どうして誰もいないんだ。どうして誰も来ないんだ!」
初老の男性は叫んだ。
「解読が間違っていたのか!? それとも120年の間に何かがあったのか!?」
男性の叫びは宇宙船の中でいつまでも響き続けた。
――人類初の恒星間宇宙船からかなり離れた位置に、1隻のステルス宇宙船が漂っていた。その宇宙船の中で、翻訳するならば彼ら(宇宙人)はこのように会話していた。
『ヒヒヒヒ、待ちぼうけしてやんの。ばっかだねぇ』
『ああ、面白かった』
『さぁ、それじゃ、次の星系にも、【ピンポンダッシュ】やりに行こうぜ!』
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