第9話 SとM

シロと私は、休日だけでなく、平日も連絡を取り合うようになった。


仕事が終わって、帰宅して、ごはん食べたらシロと電話する。

シロからかけてくる日もあれば、私からかける日もあった。

そして、ただただなんの変哲もない話を1時間も2時間も話して、おやすみ、と寝る毎日が続いた。


日々のどうでもいいことから、互いの性癖まで、惜しげもなく私たちはネタを披露し、笑いを共有した。


私たちは恋人ではない。

だけど、友達と呼ぶには、親しすぎる。

これが、俗に言う「親友」なんだろうか。


シロといたら、楽しくて、明るくなれて、前向きになれる。

シロも、そんな事いってた。

アイカと話してると楽しい、元気が出るって。


シロとキスしたいとか、セックスしたいとか、そんな事は全く思いもしないんだけど、シロが私以外の人と楽しそうにしているのを見ると、なんか、腹たつし、面白くない。

なんなんだろう。この気持ちは。


「なぁアイカ、ひとりでムラムラした時、どーすんの?」

「別にどーもしないよ。」

「そんなわけないだろ。女も"シテる"ってよく聞くぜ、俺。」

「しないから。てか、シロこそどーしてんの。ムラムラしたら。エロ動画?エロ本?」

「え、俺、アイカのこと考えながらする。普通に。」

本気で言ってるのかふざけて言ってるのかわからないテンションで、シロは淡々と喋る。

「ちょ、マジ、きもっ!!!嘘でしょ?マジでやめてくんない!?」

「アイカも、俺のこと考えながらシてくれよ。試しに電話しながらやってみる?」

シロは、私の名前を呼びながら、ふざけてハアハアしている。

「‥きもっ!変態。無理。」

「ま、待てよアイカ!!ごめんごめん、冗談だよ。」

「‥‥」

「アイカと話してると、楽しすぎて、なんでも許してもらえる気がして、ついついふざけすぎちゃうんだ、俺。ごめんな。」

シロは笑いながら謝った。


それは私も同感だ。

シロになら、何を言っても許してもらえる気がして、いつも冷たい言葉を投げかけては、シロの反応を楽しんでいる。

「それは、わからなくもない。」


「俺たち、やっぱSとMで、惹かれあってるんだな。磁石みたいに。」

「面白いこと言うね。わたしがSで、シロがMね。」

「セックスだと、逆だけどな。俺は。‥‥アイカも絶対逆だろ?」

「さあね。」


「私、眠くなってきたから、もう寝るね。」

「じゃあ、しりとりしながら一緒に寝落ちしようぜ。」

「‥子どもか!!笑 まぁ、いいけど。じゃあ、私からいくね。」


しりとり


 りんご


ごりら


 らっぱ


ぱんつ


「だよなー!!!笑」



こんなくだらない事で笑い会えるなんて、いつ以来だろう。


私達は、お互いにあくびが出るまでしりとりを続けた。







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