第4章 廃校(ラグナロク)編
第41話 4人目の救世の巫女
東京壊滅ーー
その言葉にふさわしく、日本国の東京都心部のビル群は崩れ去り、一面瓦礫の山が広がっている。
***
首都国ドルス・ドルス国際評議場2F・捜査会議室
国際警察機構の刑事たちが慌しく走り回る。
無線のやりとりが飛び交い、設置された固定電話は鳴りっぱなしで喧騒としている。
刑事たちを掻き分けながらドルス署捜査一課の刑事・黒崎京馬(キョーマ)も資料を持って駆け込んでくる。
そのあとを追いかけてくる柊紫月。
キョーマは中央のテーブルで議論している国際警察機構・本庁の刑事たちの前に持ってきた資料を広げる。
「防犯カメラの映像から被疑者の身元が分かりました」
急いでキョーマの資料を手に取る本庁の刑事たち。
資料には防犯カメラに映る青年の写真が貼られている。
「被疑者は、橘ミナト21歳。大学生。国籍は日本。東京都にある大学に通っていたそうです」
「東京都だと?」
「それじゃあ、先日の大規模テロ災害と関わりがあるのか?」
「まだ決めつけるのは早いだろう」
「橘ミナトが、ドルス国に入国したのが3日前。その間に身元不明の男性3名を拳銃のようなもので殺害。
昨晩、スポーツバーで暴れて男女合わせて5名を殺害。そして今朝、警邏中の警察官2名を殺害。
時系列でみて一致はしています」
資料の写真には、全身がねじれた状態で倒れている男性の遺体が写し出されている。
「どう暴力を振るったら、こんな状態になるんだ」
「こんな華奢な体格で」
会議室内に大きな無線の音が響く。
「本庁より入電。逃走中の被疑者をフリーゲートブリッジ付近で発見。NEXTAのヘリが急行中」
騒つく会議室内。
「現場の映像きます!」と、巨大スクリーンに映し出されるヘリからのLIVE映像。
ライトアップされた夜のフリーゲートブリッジの車道下側面の鉄筋を伝ってスメラギ国側へと進む橘ミナトの姿がアップになる。
「なんて奴だ⁉︎ あんなところを腕の力だけで伝って逃げるなんて」
「捕獲用ネットを射出します!」と、NEXTAの隊員が身を乗り出してバズーカ型の射出器を構える。
ライトで照らされた橘ミナトはヘリの方へ振り向き、右手を翳す。
ミナトの右手にエネルギーが集まり出す。
辺りの気流が乱れ、ヘリがバランスを崩して揺れる。
ミナトの右手から気弾が放たれ、プロペラに直撃。
ヘリはそのまま墜落して、爆発音とともに海面に火柱をあげる。
「人間なのか……」と、動揺する刑事たち。
「被疑者、スメラギ国側へ逃走します!」
焦燥するキョーマ。
「また彼らを頼らないといけないのか……」
***
スメラギ国・キサヒメ学園
裏山から滑走路が伸びて飛行形態のAGX-Ⅱダークソルシエールが射出される。
「教員の仕事は?」と、ボヤきながら上空から街の様子を見渡し捜索する、月代サヨ。
教員に復帰できたものの、すでに補充の教員がいるため授業中の生活安全部の代わりに出動するのが
最近のサヨちゃん先生のもっぱらの仕事である。
巷では年増の魔法少女が現れると噂になっている。
***
ドルス国・とある食堂
日替わり定食のご飯を頬張る国際政府官房長官渡辺ノブサダ。
テーブルを挟んで向かいに座るマーリュ・レオノールは少し緊張した様子で定食の焼き魚に手をつけている。
「どうだ、君からみた今の徳川内閣はどう映る?」
「いろいろだな。もっとこうすればいいのにってのはある。だけど正直今の俺に口を挟める隙はあるのかなって躊躇してしまう」
「たしかに、ハイオネスク地域合併担当相は、任期が定められた時限的な立場で、行使する権利も限定的だ。もちろん世界の裁定に関わる決議にも参加できない。
だが、私は君を必要としている。君の意見は私の意見として伝えられる。どうだ? 思うことがあれば言ってみてくれ」
「ああ⋯⋯」
「グールド・グレモリー長官が気になるか?」
「あ、あの人はいったい⋯⋯」
***
午後の授業を終えた生活安全部一同も捜索を始める。
ファイヤーアーマーはライドファイヤーを運転して高速道路を走り。
ローズファリテはローズライダーを運転して街中の捜索にあたっている。
上空からはシューティングアーマーがドライグライナーの小型ジェットを操縦して捜索している。
「逃亡犯の捜索? どうせ、グールド・グレモリーからの依頼だろ」と、
ソードアーマーはソードライダーで走行しながらフェリス・グレモリーに無線で不満をぶつける。
「違いますわ。黒崎刑事からの依頼よ」
「キョーマさんから⁉︎」
「とにかく、生活安全部はスメラギ国の平和な日常のために凶悪犯を見つけなさい」
「了解!」と、応答する生活安全部一同。
***
水商売の店舗が並ぶ繁華街の一画。
半グレの男たち十数人に絡まれているミナト。
「おい、ガキィッ! ここは誰のシマかわかって口聞いてんのか?」
と肩から腕にかけてタトゥーを入れた巨漢の男がミナトの胸ぐらを掴んで持ち上げる。
「私を満足させてくれる手応えを持っているようには見えないな」
「はぁ? この辺りをシメていた元レッドワイズのキング(ウソ)にして、極星会の準構成員の俺様を舐めてんのか!!」
「兄貴怒らせるとヤバイよ」「こいつ死ぬよ」と、嘲笑いながら周りの半グレたちが煽る。
ミナトはため息をひとつついて、男の頬を軽くはたく。
男の巨体は軽く吹き飛び、店舗の窓ガラスを突き破って、そのまま3件隣の店舗まで壁を突き破って行く。
ミナトの首元にはまだ、男の腕が残っている。
「邪魔だな」と、腕を隣にいた半グレの男に投げつける。
腕が男の顔に直撃して、頭部が吹き飛ぶ。
悲鳴をあげて逃げ出す半グレの男たち。
ミナトは半グレの男のひとりにデコピンをして弾き飛ばす。
男は、雑居ビルの壁に叩きつけられ5F建の雑居ビルが倒壊する。
残りの男たちは気弾をぶつけられ、人体の一部を残して消し飛んでしまう。
やれやれとした表情のミナト。
そこへ「見つけたわ!」と、ローズファリテとソードアーマーがバイク(ローズライダー、ソードライダー)で並走しながらやってくる。
雑居ビルの屋上では、シューティングアーマーイノセントフォームがライフル銃を構えて、ミナトに照準をあわせる。
「ようやく来たか」と、ニヤリとするミナト。
ショットガン型の武器=ローズショットを構えるローズファリテ。
「あいつはおそらく人間じゃない! 躊躇せず撃て」
「了解!」
ミナトに発砲しながらすれ違うと、ローズライダーは激しく転倒。ローズファリテは地面に転がる。
「一瞬で何をした⁉︎」
ソードアーマーはナギナタモードになってミナトを攻撃。
だが、あっさりいなされてしまう。
そこへシューティングアーマーの狙撃。エネルギー弾が何発もミナトに浴びせられる。
土煙りがたちこめミナトの姿が見えなくなる。
スコープを覗くシューティングアーマーが"ハッ"となり引き金を引く指が止まる。
土煙りがはれると全身銀色の鋼のような姿をしたミナトが現れる。
「(ソードアーマー)こいつ⁉︎ やっぱり人間じゃ⋯⋯」
そこへ「うおりゃぁあ!」と、ファイヤーアーマーが右手の拳に炎を纏って飛び掛かってくる。
「来たか」と、ミナトはニヤリとしてファイヤーアーマーの拳を片手で受け止める。
「何⁉︎」
「こんなものなのか?」
ひとまず後ろに離れて、距離を取るファイヤーアーマー。
「(ソードアーマー)フェニックスフォームだ!」
「おうよ!」
フェニックスのレリーフをギアコマンダーにセットしてフェニックスフォームに変身する。
ファイヤーアーマーフェニックスフォームは、飛び上がってキックの体勢から全身に炎を纏い、
「フェニックスライドバーストキック!」と、渾身の必殺キックをミナトに浴びせる。
「これだこれ。求めていたのは。味あわせてくれもっと。お前の力はこんなもんじゃないはずだ」
ミナトは、ニヤリとした表情のまま、ファイヤーアーマーのパワーに弾き飛ばされる。
「(ソードアーマー)やったか?」
ミナトが瓦礫の中から出てくる。
首や全身の関節がありえない方向に曲がったまま立ち上がっている。
「なッ!」
「まだだ。まだたりない」
ミナトは両手を広げると、周囲の瓦礫や車が集まってきてミナトを飲み込む。
そこから恐竜のような銀色の巨大怪物が姿を現わす。
「私が行きます。ウィングライナー! バスターライナー!」
ローズライダーは、やってきたウィングライナーとバスターライナーと特急合体してローズライナーになる。
「俺も行くぞ」と、変形したライドファイヤーもファイヤーグリフォンへと合体しようとすると、
怪物の手に掴まれ身動きが取れなくなる。
「うあああ!」
「(ソードアーマー)クソッ!ファイヤーグリフォンへの合体が」
「させない。お前をこのまま飲み込ませてもらう」と、ライドファイヤーを握る力を強くする。
「うあああ!」
「ツカサをはなしなさい!」と、ローズライナーが、ローズソードとローズライフルを取り出して怪物に攻撃をする。
「ローズブレイク!」と、ローズソードの刀身とローズライフルの銃口にエネルギーをチャージして必殺技を放つ。
怪物に大きな穴を開けるダメージをあたえられた。だが、怪物の体が変化して今度はローズライナーを飲み込む。
怪物の体に取り込まれてしまったライドファイヤーとローズライナー。
胸から上が顔を出した状態になっている。
「(ソードアーマー)ライドファイヤー!、ローズライナー!」
「(ライドファイヤー)ク、クソッ!」
そこへ数発のミサイルが怪物に着弾する。
ソードアーマーが空を見上げると、金色の模様が入った黒いジョット機型の機体が飛んでくる。
ジョット機型の機体は人型に変形、剣を取り出して、怪物に向かっていく。
怪物が放つエネルギー弾を空中でかわして、ライドファイヤーとローズライナーが取り込まれている部位を切り落とす。
「キサマ!」
黒い人型の機体は背中のバズーカキャノンを展開して腰に装備。
銃口にエネルギーをチャージして放つ!
放たれたエネルギーによって怪物は消滅する。
「あれはグラビティキャノンと変わらない威力だ!」と、シューティングアーマーは驚く。
そして悠然と佇む黒い人型の機体。
***
首都国ドルス・ドルス国際評議場2F・捜査会議室
きびしい表情を浮かべて捜査資料をにらむキョーマのもとに、紫月がやってきて新たな捜査資料を手渡す。
「はじめに殺害された3人の男性の身元が分かりました」
「何?」
「彼らは、日本出身でツカサ機関というところに所属してたようです」
「ツカサ機関?⋯⋯」
***
スメラギ国・繁華街の路地裏
左肩をおさえ壁に寄りかかるミナト。
空を見上げて笑う。
「あれほどとは⋯⋯はやく手に入れたい。究極の体を」
そこへ一台の黒塗りの車が止まる。
後部座席はわのパワーウィンドウがあいてサングラスをしたロード・スクリームが顔を出す。
「ツカサ機関の職員は我々で始末してやった」
***
4日前のドルス国・とある廃工場。
黒いスーツに身を包みサングラスをかけた屈強な男が、問答無用でおびえる3人の男性を拳銃で射殺する。
その様子を黒塗りの車の中から見ているロード。
***
「何者だ?キサマ」
「クローン火条ツカサの体を手に入れるのは、彼が4番目の救世の巫女の力を手に入れてからの方がいい」
「グールド・グレモリーの使いの者⋯⋯ではなさそうだな?」
「⋯⋯」となったままニヤリとするロード。
***
黒い人型の機体の胸のハッチが開いて長い黒髪をなびかせる少女が出てくる。
「私は、あなたたちにとって4番目の救世の巫女です。火条ツカサ、あなたに力を授けます」
つづく
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