第40話 第3章完結! 戦争の終わらせ方

首都国ドルスにあるカナダ大使館を後にする国際政府官房長官渡辺ノブサダ。

黒服の男たちが道を作り深々と頭を下げる。

ノブサダが黒塗りの公用車に乗り込むと、見送るカナダ大使も緊張した強い表情のまま

深々と頭を下げる。


***

早朝、ドルス国際評議場の最寄駅のホームで、サラリーマンを装った姿のノブサダが新聞を広げてベンチに腰を掛けている。

そこへ同じくサラリーマン風の男がやってきて、ノブサダの後ろのベンチに腰を掛けて新聞を広げる。

「ノブサダ様、例の資料入手して来ました。やはり間違い無いようです」

「そうか」

男はノブサダに背を向けたままノブサダのベンチに端末を置く。

「ご苦労だったマモン」


***

グルドラシル国・砂漠地帯

ボロボロのAGX-Ⅱダークソルシエールとソードライナーは背中を預けた状態でしゃがみ込んでいて

まだ100機以上は残っているゼノデオに取り囲まれている。

そこへ現れたグランドザウラーが2機を取り囲むゼノデオをグランドメイスで次々に殴り倒していく。

「うおりゃああ!」と、グランドザウラーがグランドメイスを地面に突き立てると、救世の巫女の創造の力によって作られた

大きな砂のトゲが次々に地面から飛び出して来て、ゼノデオたちを貫いていく。

最後の1機、グランドザウラーの目に光が灯る。

頭上より高く持ち上げたグランドメイスを一気に振り下ろして、ゼノデオの胸部に叩きつける。

グランドザウラーはグリップを捻ってグランドメイスの鋭く尖った先端を飛び出させて、機体に埋め込まれている"種子"を破壊する。

「(ソードライナー)ツカサ、どうやって⋯⋯」

「話はあとだ」

反応がないAGX-Ⅱダークソルシエールを見やるグランドザウラー。

機体のエンジンが完全に停止している。

「(ソードライナー)プリンセス・マジーネ!」


***

AGX-Ⅱダークソルシエールのコックピットのハッチをこじ開けようとしているファイヤーアーマーとソードアーマー。

そして月代カズマもグランドザウラーの手のひらの上から心配そうに作業を見つめている。

ようやくハッチが開くと、銀色のフェイスマスクが外れたプリンセス・マジーネが気を失った状態でいる。

彼女の素顔に驚く、ファイヤーアーマーとソードアーマー。

「サヨちゃんッ!」

「月代先生!」

カズマも飛び降りてサヨのところまで駆け寄る。

変身を解除した火条ツカサと直江尊が見守る中、「姉さん、姉さん、姉さん」と、

カズマはサヨの身体を軽く揺すったりして起こそうとしている。

ようやく気がついたサヨ。

ゆっくりと目を開けてカズマの顔をボーとっしながら見やる。

「カズマ⋯⋯(ハッとして)カズマ⁉︎ カズマどうして!」

「姉さんの生徒に救われたんだ⋯⋯」

ニーっと笑顔を見せるツカサと尊。

2人の笑顔に涙を目いっぱいにしてこぼすサヨ。

そして彼女の魔法少女の変身も解けると、

「こわかったよぉ〜」と、子供のように泣きじゃくる姿は、

元のサヨちゃん先生だ。


***

レオノール国・採掘場

戦っているブラックジョーカーとティラノスアーマー。

ティラノスアーマーの右腕の装甲が変化して大きな腕=ティラノスナックルとなる。

ブラックジョーカーの頭部を鷲掴みにして、地面に食い込むほど叩きつけ、そのまま地面をえぐりながら引きずって行く。

「ぐぁあああ!」と、呻き声をあげるブラックジョーカー。

「ティラノスアーマーは、ウルヴァが持っていた中でも最強の式神から作られている。だが、

本来ティラノスアーマーにここまでの機能は備わっていない。これは拡張をつかさどる月代サヨの力だ!」

ティラノスアーマーは、ブラックジョーカーを振り回して投げ飛ばす。

岩場の崖に全身を叩きつけられるブラックジョーカー。

「ぐはぁ」と、吐き出し両ひざをついてその場に倒れる。

「それでは、アマテラスの勾玉を頂くとするか」

「なるほど⋯⋯」

「ん?」

ブラックジョーカーの指がピクリと動く。

「救世の巫女は信頼する者に、おのずと力を与える⋯⋯」

ブラックジョーカーは、土を握りしめ全身の痛みに耐えながらゆっくりと立ち上がる。

「だが、月代サヨの信頼を得ていたのはお前だけだと思うな」

ドラゴンを模したレリーフを翳して、ギアコマンダーに取り付ける。

「バーストアップ」と、叫ぶとブラックジョーカーの周囲に出現したアーマーパーツが取り付き、

背中のメカメカしいドラゴンの翼が大きく開く。

"ブラックジョーカードラゴンフォーム"が完成する。

ブラックジョーカーは、一瞬にしてティラノスアーマーの目の前から姿を消す。

そしてティラノスアーマーの背後に現れるとティラノスアーマーの振り返りざまに顔へパンチをくらわせる。

100m以上は飛ばされるティラノスアーマー。

ティラノスアーマーが呻きながら起き上がると、目の前にはすでにブラックジョーカードラゴンフォームが立っている。

立ち上がってティラノスナックルで反撃に出ると、パワーアップしたジョーカーソードの一振りでティラノスナックルが破壊される。

ティラノスアーマーが破壊されたティラノスナックルに注意がいった瞬間、ブラックジョーカードラゴンフォームの拳が

ティラノスアーマーの腹部を貫く。

「科学者崩れの海賊風情が政治家をなめるな」と、拳を引き抜くとティラノスアーマーは"ドサッ"っとその場に倒れる。

「さらばだ。キャプテン・バロック⋯⋯いや、綾井律博士」

倒れているティラノスアーマーを後にして、扉の方へ歩き出す。

「地球の記憶を開く時が来た」

アマテラスの勾玉を翳してブラックジョーカードラゴンフォームが扉の前に立つと中から光を放ちながら扉がゆっくりと開き始める。

中へ入ってゆくと、そこは光に包まれた真っ白い空間。

ブラックジョーカードラゴンフォームが両手を大きく広げると光のエネルギーが全身に注がれてゆく。

「これだ、これが地球の記憶⋯⋯」

扉の外では、ティラノスアーマーが薄れゆく意識の中、最後の力を振り絞って手にしたスイッチを押す。

「海賊の悪あがきをなめるな」

地響きとともに地球の記憶の真っ白い空間が崩れ始める。

「これは⋯⋯」と、辺りを見回すブラックジョーカードラゴンフォーム。

扉に仕掛けられた爆弾が次々に爆発して行く。

変身が解けたキャプテン・バロックは地割れでできた裂け目の中に消えていく。

天井が瓦礫となり、ブラックジョーカードラゴンフォームの頭上に次々に落ちてくる。

扉が完全に崩壊し、砂埃が採掘場を覆う。


***

首都国ドルスのとあるビルの上層階にあるフロア。

眺めのいい窓越しからビル群が見える。

執務机に座る着物を来た恰幅のいい白髪の老人に向かって

「久しくしております。経済団体会長」と、深々と頭を下げる

ノブサダと帯同する黒服の男たち。


***

宇宙

バスターライフルを向け合って撃ち合いをしているAGX-Ⅳペルフェクシオンとスーパーヴァナディス。

スーパーヴァナディスの8本の背中の武器からビームが放たれる。

それを応戦するAGX-Ⅳペルフェクシオンはドローンビットをシールドにして防ぎつつ、残りのドローンビットでスーパーヴァナディスの背後から攻撃。

一進一退の戦いが続いている。

疲労感に襲われているシューティングアーマーイノセントファーム。

息を切らし、フェイスマスクの下で汗を滲ませながらドローンビットを操っている。

モニターで見ているビリー・トーマンは「起動しているドローンビットの数が減っている⋯⋯連戦によるこれだけの長期戦では、

あれだけのドローンビットを操るパイロットの体力が持ちまい。フン、底が見えたな桐川」と、ほくそ笑む。

「AGXをなめるな!」と、死角を狙ったドローンビットのレーザービームがスーパーヴァナディスの背中の武器の1本を破壊する。

だが、スーパーヴァナディスも反撃する。腰からワイヤーを射出して、AGX-Ⅳペルフェクシオンの上半身を縛りあげ両手が動かなくさせる。

「しまった!」


***

細い山道をひたすら歩くレイラ・レオノール、火条アルテ、柊紫月。

「レイラ、私たちの仲間がごめんなさい」

「いいのです。彼の言っていたことは正しい。それより傷ついたのはアルテミア様の方では?」

下を向いたまま「ごめんなさい」と、静かに答えるアルテ。

そのとき、「きゃっ⁉︎」と、踏み外したレイラが、崖へ滑り落ちる。

「レイラ⁉︎」

紫月も反応するが間に合わない。

そのとき、落ちるレイラの手を掴む腕。

レインコートのフードを目深に被った人物がレイラを引っ張り上げる。

「ありがとうございます⋯⋯」

「大丈夫?」と、駆け寄るアルテと紫月。

「間に合って良かった」と、目深に被ったフードを下ろすとその人物はレイラたちと歳が変わらないくらいの青年。

「レイラ国王がこっちに向かっていると聞いて迎えに来た。俺がマーリュ・モーサーだ」

「あなたが?」

「よろしくな」

「は、は⋯⋯」

想像と違って馴れ馴れしいマーリュに呆気にとられるレイラ。

「急ごう。ロクサルの首相が待っている」

アルテは、マーリュの顔を見てどこかで会ったような感覚に首を傾げる。


***

レオノール国・採掘場

ジェットモードのグランドザウラーが砂埃を巻き上げてゆっくりと着陸する。

グランドザウラーから飛び降りるファイヤーアーマー。

「桐川に言われて来て見たけど⋯⋯何があるんだここ?」

瓦礫を弾き飛ばしてブラックジョーカードラゴンフォームが現る。

「グールド⁉︎」

「ようやく来たか。火条ツカサ」

「は? 俺はハバードのときのこと許してねぇぞ」

「待て。衛星兵器がレオノール国を狙っている。国家面積の8割は消失しかねない威力だ」

「⁉︎ いったいそれって⋯⋯」

「君の力が必要だ。私のセデスネスカイザーとグランドザウラーを合体させて破壊させるしかない」

「できるのか?」

「グランドザウラーは元々、私の機体だ」

「そうだった⋯⋯」

「協力してくれるな」

「⋯⋯ああ。しかたねぇだろ」


***

セデスネスカイザーとグランドザウラーは「超魔獣合体!」と、叫んで合体シークエンスに入る。

グランドザウラーが6つのパーツに分かれ、変形してセデスネスカイザーにドッキング。

最後にグランドザウラーのウイングパーツが胸飾りとしてドッキングして、セデスネスカイザーの頭部に金の飾りがついて完成する。

「グレートセデスネスカイザー!」

グールド・グレモリーと火条ツカサがひとつとなり、完成したグレートセデスネスカイザーは宇宙に向かって飛び立つ。


***

斬り付けられ血に染まった右顔をおさえながら地面を這いずっているロード・スクリーム。

そのとき、遠くの空に宇宙へ向かって飛び立っているグレートセデスネスカイザーの姿を見つける。

ロードは、「うぁあああ」と、悔し涙を流し叫び声を上げる。


***

宇宙

スーパーヴァナディスのワイヤーによって縛り上げられたAGX-Ⅳペルフェクシオンはドローンビットでワイヤーを切る。

そしてドローンビットを右腕に装着したAGX-Ⅳペルフェクシオンは、突進してスーパーヴァナディスの喉元に突き立てる。

火花をあげめり込んでいくドローンビット。

スーパーヴァナディスもチェンソー型武器を展開してAGX-Ⅳペルフェクシオンの脇腹に突き立てる。

じわじわとAGX-Ⅳペルフェクシオンにめり込んでいくチェンソー型武器。

「これだけの機体をパランスよく動かすには種子は機体の中央にある必要がある。クトゥルーがそうだったように。ならば!」

機器を操作してフェイスマスクのゴーグルに表示させたドローンビットの照準を1つに減らす。

「だったらこいつにかける!」


***

「そうだ、そうだ、あともう少しだ」と、狂気の笑みを浮かべモニターに食らいついているビリー。


***

「今だッ!」

宇宙を漂う隕石に潜んでいる一機のドローンビットから放たれたレーザービームがスーパーヴァナディスの中腹を貫く。

ゆっくりと機能が停止してそのままAGX-Ⅳペルフェクシオンにもたれかかる。

「うそだーッ!」と叫ぶビリー。

AGX-Ⅳペルフェクシオンは、スーパーヴァナディスを突き放して衛星兵器の方へ。

だが、衛星兵器を守る100機近くのヴァナディスコズミックエディションたちが衛星兵器の中からぞくぞくと現れる。

ほぼ同時にコックピットのモニターにエネルギー切れのエラー表示が現れる。

「どうやら僕はここまでのようだ」

AGX-Ⅳペルフェクシオンが振り返り、見つめる先には飛んでくるグレートセデスネスカイザーの姿。

グレートセデスネスカイザーの翼からドローンビットが射出される。

「これじゃあ、少ない」と、ファイヤーアーマーが想像の力を使い、漂うスーパーヴァナディスの破片をドローンビットに変える。

30機近くになったドローンビットがレーザービームを放ち、次々にヴァナディスコズミックエディションを貫いていく。

そして衛星兵器を目指すグレートセデスネスカイザーは、ヴァナディスたちの銃撃をあざやかにかわして、ヴァナディスたちとの

すれ違いざまの一瞬にドラゴンソードで切り裂いていく。

衛星兵器の砲身にエネルギーが徐々にチャージされはじめている。

「(ツカサ)なんだこの力⋯⋯グレートファイヤーグリフォンを超えている」

「(グールド)まだ終っていぞ。火条ツカサ」

グレートセデスネスカイザーは立ち止まり、

「いくぜ、グールド!」

「ああ!」

「ブレストバーニングバーンッ!!」と、叫んで胸パーツから放たれるビームがドラゴンの形となり衛星兵器を飲み込む。

そして衛星兵器の大規模な 爆発で宇宙に眩い光が広がる。


***

グルドラシル国・政府官邸

PCのモニターに食らいつくグルドラシル国首相のオルデオ・ミルトは怒りの形相で

「衛星兵器との通信が途絶えた!」と、机を叩く。

「何だとッ!」と、ソファから立ち上がる国際外務大臣ランザ・ハーキン。

「どうなっているんだ」と、険しい表情の国際防衛大臣レオス・アルベルト。

そこへ黒服の男たちが5人が入ってくる。

「(オルデオ)何だお前たちは!」

「ランザ外相、今すぐにレオノール国とグルドラシル国の講和条約締結の準備をして下さい」

「(ランザ)何を言っているんだ、貴様! 誰の指示でものを言っている⁉︎」

黒服の男がタブレットを取り出してそこに「私だ」と、ノブサダの姿が映し出される。

「官房長官⋯⋯」

「ランザ・ハーキン、あなたを外相から更迭する」

「は?」

「これは星帝の意思だ。表向きは健康上の理由とする」

「い、いったい⋯⋯」

狼狽するランザ。

「そのかわり花道としてハイオネスク地域の合併に道筋をつけたとして、高い功績をマスコミに伝えさせる」

「ま、待ってくれ! 健康上を理由にされたら自国の大統領の職も降りなくてはならない」

「以上だ」

悲鳴をあげてソファに泣き崩れるランザ。


***

山林を進むレイラたちの前に10数人の黒服の男たちが現れる。

「何だお前たち」と、紫月は抜刀の態勢で身構える。

黒服の男が胸元に手を入れ、レイラたちに緊張がはしる。

だが、黒服の男が取り出したのは一枚の便箋。

黒服の男はそれを広げて読み上げる。

「マーリュ・モーサー。ハバード・ロイジャーより届けられた親書にもとづき、あなたを星帝宣下により、

レオノール国国王に認める。マーリュ・モーサーいや、マーリュ・レオノール国王、ロクサルの首相に会うのはあなただ」

何が起きたか分からず言葉を失うレイラ。

「(アルテ)どういうこと?」

「レイラ・レオノール様、彼はあなたの双子の兄です」

「え⁉︎」

「あなたの母ミレイア・レオノール様は、双子の男女を産みました。はじまりの男の子供、しかも男児。

後継者争いとなれば、祖父にあたる当時の国王に殺されると考えたあなたの母は、マーリュ様をメイドの養子としてロクサルに逃がしたのです」

「私の兄⋯⋯」

「(アルテ)はじめて会ったとき、誰かに似てると感じましたけど、ウルヴァさんだったんですね⋯⋯」

「マーリュ・レオノール国王。あなたをハイオネスク地域合併推進担当大臣として国際政府の閣僚に任命します。

ハイオネスク地域のはじまりの男として活躍して頂きたい」

マーリュは、呆気にとられながら頷く。

黒服の男たちが拍手を送る。


***

グルドラシル国・政府官邸

「レオス・アルベルト」

目をつむり覚悟を決めた表情のレオス。

「あなたには防衛相を続投してもらう。星帝はあなたのこれまでの功績をかっている。だが、あなたと繋がりのあるヘイムダル社が国際軍の装備の

ほとんどを占めている状況をこころよく思っていない。新規参入に高い壁を作り、独占する。この行為に処分をかす」

「⋯⋯」

「ヘイムダル社から国際軍への装備の供給を70%減。新規参入を認める。その一社が桐川コーポレーションだ」


***

宇宙から地球を見つめるグレートセデスネスカイザー。


***

「経済団体の会長があなたを憂いていた⋯⋯」

「何?」

「どうなっているんだ⁉︎」と、叫ぶオルデオ。

PCのモニターを見て狼狽している。

「ヘイムダルが⋯⋯経済団体から除名⋯⋯会長名で通知が所属企業に配信されている⋯⋯」

「何、だと⋯⋯」

「失礼する」と、ノブサダの通信が切れる。

黒服の男たちも部屋を後にする。

レオスは「クソッ!」と、壁を叩く。


***

1週間後

海上を航行する一隻の戦艦。

海賊ハウンドの旗をなびかせている。

管制室には操縦するサスケ、シェル・ルミナー、グランズ・ハルバンの姿。

そしてキャプテン・バロックの衣装を来た冠庭トオル。

「(サスケ)キャプテン!、この先、5キロに国際軍の戦艦を発見しました」

「(シェル)いっちょやってやりましょうぜ。船長」

「(グランズ)キャプテンのしびれる命令をくれ」

5代目キャプテン・バロックとなったトオル。

「よし、お宝を頂戴するぞ」

「(一同)オーッ!」


***

首都国ドルス・ドルス国際評議場1Fドルス署・刑事課

デスクで新聞を読むスーツ姿の黒崎京馬(キョーマ)。

「お茶です」と、婦警の制服に身を包んだ紫月が、キョーマのデスクの上に湯呑みを置く。

キョーマの読んでいる記事には"レイラ・レオノール様、ドルスに留学"と、書かれている。

「一緒に暮らしているレイラ様の様子はどうだ?」

「元気にしてますよ。すべてが新鮮にうつるみたいです」

「おーい、柊君。資料持って来てくれ」と、刑事課長の堂島剛造が紫月を呼ぶ。

「はーい」と、元気よく返事をして堂島のところへ駆けてゆく紫月の姿を見て、ほくそ笑むキョーマ。


***

ドルス国際評議場の2Fにある会議室。

入口に"男性会社役員殺人事件"と、戒名が書かれた貼り紙がされていてスーツ姿の

刑事たちが続々と入っていく。

席に着いている刑事たちの前に黒いスーツを着た男が立つ。

司会の刑事の掛け声で刑事たちが一斉に立ち上がり

「起立!ロード・スクリーム管理官に敬礼!」と、敬礼をする。

黒いスーツの男はサングラスをかけたロード。


***

夜、雑居ビルの1Fにある古びたラーメン屋。

カウンター席に座る、ノブサダの背中。

店主がノブサダの前に1杯のラーメンを置く。

ノブサダは割り箸を手にとり、食べはじめる。

目をつむり、一口、一口、麺の味を噛みしめる。

スープを一口すすり、疲れを出すように息を吐くいて

そしてまた麺をすすりはじめる。少し丸まったノブサダの背中。



第3章完


第4章廃校(ラグナロク)編へつづく



















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