第2話・弱さの理由

イカ退治を始めて1ヶ月。

俺達はまだ一度も勝ててない。


理由は分かってる。

俺が弱いんだ。


寝てるとき以外はずっとレベル上げのためのダンジョンに籠もりスキルを鍛えた。

素材も集めて装備も強化してる。

攻略サイトに乗ってた育成シートを参考にキャラを育てた。


攻略組が出してるYouTube動画は何度も見た。

いつだってイメトレしてる。

頭の中にマニュアルはしっかり入ってる。

だけど、うまくいかない。

足りないのは、純粋な俺自身のスキル。


『ヘイト逸れてる』

『挑発足りてないよ』


「分かってる。でも……」


スキルの使用する順番は覚えてる。

タイミングもモンスターの挙動に合わせるだけ。

それなのに。なぜか最後の最後に俺へのヘイトが足りなくなって。

ラストの大攻勢前にメイン火力にヘイトが向いてしまう。


『あー』

『おわった』

『はい。解散』


皆が口々に諦めを口にして。

今日のイカ戦も敗北に終わる。


もう一生勝てないんじゃないか。

そういう空気が流れた。


『みんな、今日はいいところまでいきましたね』


空気を変える一声。エリスだ。

愚痴っぽくなるメンバーひとりひとりに声をかけて、今日の良かったところを褒めていく。

まず良かったところを伝え、そのあとに改善点があればそれを教える。


エリスが俺らの中で一番強くて全体を見れているから。

エリスが言うことは正しいのだ。


◯☓オックス、最後のモーション変化後。次のときは回復は私に任せてくれますか? ◯☓オックスは私を信じてヘイト管理だけしてください』


俺の弱さはここまで言ってくれるエリスを信じきれなかったこと。

ヒーラーを頼ればいいのに自力で回復してMPが足りなくなる。

そして挑発スキルが使えなくなって終わる。

その繰り返し。


『明日、少し早めにログインして一緒にダンジョンに籠もりませんか?』

「別にいいけど」

『私と特訓しましょう』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る