第222話:母さん直球ど真ん中デッドボール
自宅で、先輩たちと。
先生が来るのと、母さんが帰って来るのを、夕飯のお鍋を準備しつつ待っていたらば。
先ずは、エリ先生がいらっしゃいまして。
勝手に入っていいですよ、とは言ってあったけど。
東雲女子校の制服姿の、エリ先生。
「それよ、それ、それだわっ!」
と。
「それって何かしら、沢田先生?」
「もちろん! 結婚を前提に同棲よっ!」
もう、ひとり。
「あらあら、まぁまぁ……」
「へ?」
振り返ったエリ先生の、見上げる、その視線の先。
エリ先生と、間髪を入れず帰宅の、母さん。
「おかっ! おかぁっ! お母さまっ!?」
先生も、まさか母さんがすぐ後ろに居るとは思わなかったらしい。
「あいや、その、それは、その、あれが、アレでっ」
あたふた、てんぱりんぐ、エリ先生。
やんわりじんわり根回しを、と、思っていたろうに。
もろ、『結婚を前提に同棲を』って、母さんの目の前でぶちまけて。
「まぁまぁ、落ち着いて、ひと息入れましょ?」
母さん、エリ先生の肩をつかんで、くるっと反転させて。
後ろから、ぐいぐい押して、ダイニング。
「さぁさぁ。
「うん、今日はお鍋だよ」
「いいわね、お鍋。すぐに着替えてくるわ」
母さんのお着換えの間。
ポータブルコンロをテーブルにセット。
その上に、コンロからお鍋を移動。
食器類は先輩たちが準備してくれてて。
ご飯もよそってくれてて。
準備完了の丁度のタイミングで、母さんも合流。
いただきます、の、合唱からの。
プチ・お鍋・パーティ。
いや、どこらへんが、パーティなのか、と。
もくもく、と、お鍋をつんつん。
している中。
「沢田先生」
「はいっ!?」
母さんが、口を開き。
「この度は大変なことで……お見舞い申し上げます」
「あ、や、はい、ども、ありがとうごごごございます」
エリ先生、まだかなり緊張してる。
「それで、仮住まいのホテルが学校からかなり遠いんですって?」
「は、はい、そそそ、そうなんです」
お箸も止まってます、ね。
「確かに、ここなら通学? 通勤? かなり近くなりますよね……」
「は、はい、そっ、そっ、そうなんです」
今のエリ先生? エリちゃん? なら。
通勤、と、言うよりは、通学の方がぴったりで。
制服姿のまま、背筋ぴーん。
手はお膝?
お行儀よろしくて。
校長先生の前でも、ここまで緊張してるエリ先生は見たことない。
一方。
先輩たちは、お鍋に集中。
あたしも、母さんとエリ先生のお話に耳を傾けつつ、お鍋。
「ミリ先輩、お肉取り過ぎですよ」
「成長期だからお肉いっぱい食べないとー」
成長期……ほんと?
「まったくこの子は……野菜を食べなさい野菜を」
「うぇぇ、サクラぁ」
ぽいぽい。白菜シラタキシイタケ。
「サクラ先輩もニンジン食べましょう、ね?」
「なんでこんなモノまで入れてやがりますかね」
「わたし食べられるようになった、よ?」
おさげ子先輩、すごい。
いや、すごくは、ないか?
「沢田先生、
ずばり。
母さん、容赦無く、ストレート、ど真ん中。
「! えぇっと、それは、その……」
この時点で、すでに空振り三振っぽい、エリ先生。
いや、これは。
ある意味、デッドボール?
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