第214話:母さんの事はさておき、エリ先生が
母さんの、本多さんの件は、いったん忘れる事に、しよう。
母さんが言わない限り。
あたしから問いただすような事はしない方がいい、よね?
多分。
母さんが言い出せば、その時は、その時で。
覚悟を、決めよう。
何の覚悟か。
それ以前に、何を言われるか。
あぁ、もぅ、自分でも。
うぅ……。
どうしてこうなった!?
って、思う事もあるけど。
まぁいっかー、って。
わりと、軽い目?
ホント、自分でも性格変わったなぁ、と、思う。
そんなあたし。
園田真綾。
徒歩一分弱の、高校へと、通学しております。
普段は六時間の授業が終われば、三時半くらいには家に帰れる。
帰宅も、もちろん、徒歩一分。
教室から校門までが数分かかるのが、難点。
それでも、他の人達に比べれば、ね。
七時間授業がある日もあり、その場合は四時半くらい。
そして、あたしと三人の先輩だけの、八時間目の活動。
時間的には、六時間の授業が終わった後からなので、三時半くらいからスタートして。
早ければ三十分くらいで終わる事もあるけど。
なんか盛り上がったり、ネタを掘り下げたりしていると、六時とか六時半とか。
最終下校時刻まで居座ったりすることも、たまにあり。
家に帰って宿題、予習、復習とかこなしつつ。
夕飯の、準備。
学校の終わり時間によっては、勉強は夕飯や家事の後になる事もあるけど。
だいたい、そんな感じの生活。
そして、今日は八時間目の日。
なので、いつもの、二階の空き教室へ。
「すみません、掃除当番で遅れちゃいました」
などと言い訳しつつ入ってみたら。
先輩方はすでに集まっていらっしゃいますが。
「あれ? 先生は?」
顧問? の、沢田エリ先生が、いらっしゃらず。
眼鏡でおさげの、おさげ子先輩が。
「先生、なんか大変みたいよ」
「え? どうかされたんですか?」
大変、とは?
その理由を、小柄で金髪碧眼の、金髪子先輩が。
「なんか、自宅が燃えたらしい」
「ええええ!? 火事!? 大丈夫なんですか?」
怪我とかしてない、よね?
「今日の日中に火事になったみたいですわね。ご本人は学校に居て無事みたいですがお昼ごろに帰られたらしいですわ」
なるほど。
確か、アパートで独り暮らしって言ってたっけ。
「って、先生から連絡あったんですか?」
三人の先輩たちを、見渡しながら、聞いてみるけど。
「んにゃ。他のクラスのコからウワサで聞いたんで詳しい話はわかんない」
金髪子先輩が、反応してくれた。
元のウワサの入手は金髪子先輩、なんだろうな。
とか、四人で話をしていたら。
教室のドアが開いて。
「全員揃ってるわね」
別の先生が、入って来る。
「沢田先生が急用で今日は参加できないから、あなた達だけで活動しておいてくださいって事でよろしくね」
家庭科部の顧問の先生。
担当教科も家庭科だったような。
エリ先生と同期の、若い先生。
エリ先生と違って、すらりと背が高い。
「せんせー、エリちゃんの家が火事って、ホント?」
その先生に、金髪子先輩が訊ねるのはいいけど。
めちゃくちゃ、フレンドリー、だなぁ。
淑女、何処行った?
まぁ、金髪子先輩、だしなぁ。
先生も、フレンドリーに返してくれる。
「あぁ、みんな知っちゃってるのねぇ……そうみたいなのお昼過ぎに連絡あって『絶賛延焼中で消火中』って」
うわぁ……。
「それで、今日はあなたたちの活動日だったから、参加できないって伝えてくれって」
「律儀!」
「それだけみんなのこと、気遣ってくれてるって事でしょ感謝なさい?」
「はーい」
「はい」
「エリ先生によろしく」
「それじゃ、あなたたちも気をつけて、ね」
家庭科の先生も忙しいんだろう。
それだけ伝えると、教室を去って行かれる。
「時期的にも、火事多いしねー」
「確かに、色々と気を付けた方がいいだろうね」
「ウチは家に誰かしら居るから大丈夫とは思うけど」
そう言われると。
うちは母さんと二人暮らしで、二人とも日中は家に居ないから。
火の元には、注意注意、だね。
いくら目視でいつでも外から確認できるとは言え。
ね。
それより、今は。
エリ先生……。
大変なんてもんじゃない、よね。
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