第201話:改良版女装山田さん



 山田くんの、女装アレンジを、リベンジして。


 ……。


 なんか、違うな。


 山田くんの、女装リベンジをアレンジして、だ。


 あたしの母さんの若い頃の、お洋服。


 花柄ピンクのロングワンピと、デニムのブラウスにロングスカートを重ねて。


 うん。


 なかなか、いい感じに仕上がった、かな?


 ウィッグも搭載して、あとは、お化粧担当の、ミツキさんを連れて来たら。


「おぉっ、なんじゃこらっ」


 驚きの、ミツキさん。


「お、おぉ、ミツキ……」


 恋人に女装姿を見られて、恥ずかしいやら山田くん。


「ささ、ミツキ。お化粧よろしく」


「っと、了解。ウィッグ着けちゃったか……まぁいいか、髪留め使ってやるわ。ケンゴ、


「? シダ」

「? シダ植物?」


 山田くんも、あたしも、ミツキさんの最後の言葉が、意味不。


 しかし、レイちゃんが。


「あ、シッダァ……シットダウン? 座れ? って事じゃ?」


「そぉそぉ、それそれ、ほれほれケンゴ、シダ―」


 ああ、なるほど。


 意味が分かれば、指示に従い。


 椅子に着席、山田くん。


 ミツキさんは、ささっと。


 手早く、慣れた手つきで。


 髪留めで邪魔になる髪を分け、整えて。


 お化粧、スタート。


 慣れてるのは、恐らく。


「お友達のお化粧とかしてたりするんだね」


「うんうん、たまにやったげたりするねー」


 やっぱり。


 こうなると、あたしもレイちゃんも手出しはできず。


 少し離れて、鏡に映った山田くんの表情を、見守るしかない。


 てき、ぱき、ミツキさん。


「なぁ、ミツキ」

「何? ケンゴ」


 ミツキさんは手を動かしながら。


 山田くんはじっとしたまま、クチだけ動かして。


「今日の化粧、なんかこの間と全然違わん?」

「うん、全然違うね」

「どゆこと?」

「そりゃあ、この間はただ単に面白おかしくしたかったし」

「ぉぃこら何だそれはどういう事か」

「いやぁ、やっぱ男子の女装とか、ネタでしょ」

「ネタでアレはヒドイ……」

「あはははは。今日はマジメにやったげるからー」


 んー。


 恋人同士の、フランクな、会話。


 なんか。


「いいね、こういうの……ちょっと憧れちゃう、かな」


 レイちゃんのおっしゃる通り。


「うんうん、いいね」


 妬ける、ねぇ……。


 それは、さて、と、置いて。


 真面目に、とは、言いながら。


 わりとお手軽に、でも、手抜かりは、なく。


「ほいっ、と。こんなもん、かなー? 出来たよー」


 くるっと。


 山田くんの座る椅子を、回転させて、こちら向きに。


「ぉおー」

「いいんじゃない?」


 うん。


 上出来。


 と、言うか。


 出来すぎ?


「ん。じゃぁ、お披露目お披露目。すたんだー」


 スタンド・アップ。


 立った立った。


 山田くんが、起った。


 じゃ、なくて。


 立った。


 立って、歩いて、部屋を出て。


 リビングへ、四人で、ぞろぞろ。


 そして、他の皆の前へ。


 ミツキさん先頭に。


「じゃーん」


 先頭のミツキさんが脇に逸れれば。


 後方の、山田くん。


 いや、山田さん?


 お披露目、お披露目なり~。



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