第177話:なんか温かくて幸せな気持ち



 母さんの実家への移動。


 長く、渋滞ぎみの高速道路をなんとか降りて。


 一般道もまた長く渋滞気味ながら。


 夕刻遅く。


「到ちゃぁく、疲れたぁああ」

「お疲れ様でした、母さん、ありがと、ね」


 と。


 すぐに。


 こんこん、と、窓が叩かれる。


 車の外。


「お婆ちゃん、ただいま」


 車の音を聞きつけて、出て来てくれた、お婆ちゃん。


 運転席側の窓を見ると、お爺ちゃんも。


「ただいま、お父さん」


 お爺ちゃんに、母さんが軽くご挨拶。


「荷物持ったげるから、後ろ開けて」

「はぁい」


 車から降りて、一部荷物をお婆ちゃんに預けて。


「制服、持って来てくれたのね、早く着て見せて欲しいわ」

「あはは、はぁい」


 制服は自分で持って。


 母さんと、お爺ちゃん、お婆ちゃん、四人で。


 お家へ。


 敷地の周囲の景色からは少し浮いたような、都会的な、家。


 あたしが産まれた頃に建て直したらしい。


 荷物は一旦、リビングに置いて。


 晩御飯!


 お婆ちゃんの、ごはん。


 母さんの、お母さんの、ごはん。


 ほぼ、母さんのごはんと同じ感じだけど。


 少し、味付けが、濃い感じ?


 晩御飯を、食べながら。


 聞かれる聞かれる、あたしの学校の、こと。


 母さんの仕事の話も、少しあったけど。


 そっちは、順調で問題ないよって。


 必然、あたしの高校生活の、話。


 とくに、女子校に通ってるってことと、女装の、こと。


 お爺ちゃんが嫌な顔をするかと思ってたけど。


 なんか、逆に、喜ばれてる風。


 ご飯が終わったら、お風呂に入って、その後でいいから、と。


 制服姿が見たい、見たい、と。


 写真はたくさん、送ってるから、見てる筈なんだけど。


 やっぱり、生で見たい、って。


 まぁ、物珍しい、って事かなぁ?


 そして、予定の通り。


 ご飯の後、お風呂に入って、お肌のお手入れ、ムダ毛のお手入れも入念に。


 お風呂からあがって、いざ。


 制服に着替えて。


 ウイッグも、冬用の少し長い目のにして。


「じゃーん」


 リビングへと戻れば。


「おぉおっ?」

「まぁ、可愛らしい!」

「でしょ、でしょ、とっても可愛いでしょ?」


 お爺ちゃん驚き、お婆ちゃん感嘆、母さんも嬉しそう。


「えへへ」


 くるっと、ひと回りしてみる。


「こうやって見ると、ほんと、高校の頃の沙綾さあやそっくりね」

「うむ」


 お婆ちゃん、お爺ちゃんに、好評。


 よかった。


 特に、お爺ちゃんには、『男のクセに!』とかって怒られないか、ちょっと心配だったんだけど。


 写真を送って、メールでやりとりしてる中でも。


 特に、そんな風に怒られる事もなく。


 何やら、感慨。


「あぁ、そうだお父さんお母さん、真綾に話、しちゃったから」


「そうなのか?」

「あら、あら、まぁ、そうね、もう色々理解できる年頃、だものね、うんうん」


 あ。


 そっか。


 あたしの、出生の事。


 母さんが、あたしを、って。


「色々あったけど、沙綾も真綾も、わたしたちの家族、だから、ね」


 母さんと一緒に、お婆ちゃんに、抱きしめれて。


 お爺ちゃんが、目を細めて、見てる。


 そんな、団らん。


 なんか、温かくて。


 幸せな、気持ち。



 いいな。




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