第164話:超高級マンションに拉致



 エリ先生の、車。


 正確にはエリ先生の、お友達の、高級外車で。


 わずかなドライブを楽しんだ(?)後。


 目的地へと、到着。


 いや、もう、安全運転すぎる安全運転は。


 かえって怖い、ですね。


 恐る恐る、って感じで運転していらっしゃるのが、ありあり。


 あたしも左右後方、あちこち確認しながら、『今なら大丈夫です!』みたく、合いの手も入れつつ。


 どうにか、目的地まで。


「はふぅ、着いたぁあ」


 運転されていたエリ先生自身は、さらにお疲れの、模様。


 到着直前に目に飛び込んで来たのは。


 どでかいマンション。


 この車から察せられる通りの、お高そうなマンション。


 そのマンションの駐車場へと車を滑り込ませて。


「うぅ、早くお部屋に戻ってくつろぎましょー」


 ややうなだれ気味に、移動。


 とりあえず、着いて行くしかない。


 車の中も暖房が効いていて温かかったので、コートは脱いでたけど。


 車から降りるのに、コートを着たものの。


 駐車場内も暖房が効いていて、コートの必要が、無い。


 そんな駐車場からエレベータへ。


 エレベータ内も、もちろんのこと、温かく。


 もうコートは脱いでおこう……。


 そもそも、エリ先生はコート無しだし。


 そのエレベータなんだけど。


 ボタンが全然、無い。


 普通ならボタンのある場所に、小窓のような機械があって。


 先生が車のキーを掲げると。


 小窓に『二十七』の数字が表示されて、エレベータが動き出す。


 ふむふむ。


 高級マンションだけあって、セキュリティも万全、なのかな。


 車のキーと言うか、キーホルダー側がセキュリティカードか、タグみたいになってるんだろうなぁ。


 すごぉ。


 何階建てかはわからないけど、二十七階は、かなり上層なのは間違いない。


 もしかしたら、最上階?


 お友達。


 車だけでもわかるけど、さらにとんでもなさそうな雰囲気。


 そして、二十七階へ、到達。

 

 エレベータから降りて、小綺麗な廊下を少し進むと。


「ここだよー」


 言いながらまた、ドアノブ近くの小窓へキーホルダーをかざして。


 ドアを開けて、勝手に入って行かれる……。


 いいのか?


 いいんだろうなぁ。


「ただいまー」

「お邪魔しまぁす」


 玄関も、広い……。


 ウチも戸建てで、そこそこ広いと思ってたけど。


 わぁお、って、感じの、明るい玄関。


 その灯りも、多分、自動点灯してたし。


 その玄関で靴を脱いでから、改めて。


「お邪魔しまぁす」


 ついつい。


 言っちゃう、よね。


 初めて訪れる、お宅だもの。


 さらに、見た事も無いような、超が付くような、高級マンション。


 緊張しきり。


 エリ先生は、慣れてらっしゃる?


 ずんずん、と、玄関から入ってすぐ左へ向かうと。


 リビングとおぼしき、部屋。


 そこに、二人の女性。


 え?


 女性?


 何やら、すでに、その装いが。


 普通の女性ではない女性。


 いや、何言ってるのか、よくわからなくなってるけど。


 ともかく、どこか見覚えのあるの衣装をまとった女性が振り向いて。


「おかエリ~」

「エリおか~」


 エリ先生を、お出迎え。


 おか、エリって……洒落? なのかな?


「ただいま~真綾ちゃん拉致完了~わたしも着替えて来るね~」


 拉致!?


 なんとなく、予想はしていたのだけれど。


 待ち構えていたふたりの女性の衣装を見て。


 予想は確信に変わって。


 拉致の意味も、なんとなく、察して。


 ここから、ひとりで逃げ出すのは大変そうなので。


 甘んじて。


 おもちゃにされる事を。


 覚悟、するしか、無い。


 かなぁ……。



 とほほ。




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