セイなる夜に……

第163話:エリ先生とドライブ



 クリスマス。


 セイなる日、とも呼ばれたり、する?


 本来は、とか、日本では、とか、ウンチクを蒸し返すのも、おこがましいから。


 とりあえず、パーティ。


 お祭り。


『正門前に車止めてるから、出てきてー』


 エリ先生から、メッセージ。


 ほぼ、時間通りなので、準備も万端、玄関先で待機済みだったので。


 玄関あけて、正面にある、東雲女子高等学校の正門前に止まっている車を見て。


 一瞬、目が点になりつつも。


 なんとか、再起動して、信号機の押しボタンを押して。


 いや、何ですか、その車……。


 えげつない、高級車。


 と言うか、外車じゃないですか?


 まぁるい目玉が少し飛び出した、全体的に丸っこいフォルムの。


 その車の向こう側に立ってる先生が、あたしに気付いて、手を振り振り。


 目を点にしたまま、歩行者用信号が青になったので、左右確認しつつ、その先生の待つ、正門前へ。


 正門自体は、道路から少し内側に入ったところにあって。


 門から道路まで、車が二台ほど停められるスペースがあるから、車自体はすっぽりとそのスペースに収まってる。


「お待たせしましたと言うか何ですかこの車、先生の車ですか?」

「あぁ、詳しくは車の中でとりあえず乗って乗って」


 先生が示すのは、車の右側。


 先生自身は、車の左側から、乗り込む。


 つまり。


 左ハンドル……外車ですね、思いっきり。


 とりあえず、と、言われた通り、右側のドアを開けて乗り込む。


「ちゃんとシートベルト付けてね」


 そう言いながら、エンジンを始動させる先生。


 うぁあ。


 何、この、足元と言うか、お腹の下の方からズンズン突き上げられるような重い感触……。


「あと、悪いんだけど、右うしろから車来てないか、見てくれない?」


 軽く車を前進させて、道路側へ寄る。


 左ハンドルだから、右後方が確認しづらいんだろうな。


 校門の門柱につながる壁が、道路側にあるから、余計に。


 さらに、エリ先生の場合、体格のこともあって、視界が微妙?


 シートもぎりぎり前の方までズラしてらっしゃる。


「えっと、はい車も自転車も来てないです、大丈夫です」


「了解、じゃぁ、行くわよー」


 ふわぁ……。


 乗り心地も。


 母さんが乗ってる軽自動車とは、まるで違う。


 走り出して、少し。


「ちなみにこの車は友達のよ。わたしがこんなウソみたいに高い車買える訳ないでしょ」


「デスヨネー」


 と、言うことは、お友達さんは、かなり?


「さらにちなみに今日のパーティはその子のマンションね」


 あぁ、なるほど、なるほど。


 マンションも超高級そうな、気配。


「うぅ、この車、運転しづらいよぉ……真綾ちゃん、運転できない?」


「できる訳ないです」


「ダヨネー」



 のろのろ。


 制限速度の高くない道路なので、そもそもそんなに速度は出せないけど。


 その制限速度ぎりっぎりで、走っていると。


 後ろから。


「うぅうう、煽られるううううう」


 ぴたりとくっついて来る車が登場。


 さすがにパッシングやクラクションは無いけど。


 イライラしてそうな雰囲気は、あるね……。


 でも。


 うまい具合に交差点を左折したらば。


 後ろの車は、直進したので、とりあえず。


「ふぅ……」


 が、がんばって、先生!


 安全運転、よろしくお願いします、よ?


 安全運転すぎて怖い側面も、無きにしも非ずみたいだけど。


 ちょうど、しの女の外周の道路を一周する形で。


 うちの家の近くの、つまりは正門近くの交差点まで戻って。


 逆方向へ進み始める。


 あぁ……。


 Uターンもできなかった、って事か。


 そんな感じで。


 パーティの前に、先生と、ドライブ!?




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る