第151話:真綾ちゃんに、質問!



「園田さん、って、、居るんですか?」


 叩き込まれた、えげつない、質問。


 拡大版の八時間目でナイトブラの解説をした、最後。


 エリ先生が『質問ありますかー?』と、受講者方々に投げかければ。


 剛速球が、返ってきた、罠。


「おお、園田さん、そこんとこ、どうなんですか?」


 エリ先生が中継して、あたしに投げ付けてきやがる。


「い、い、居ませんよ、なんて……って言うか、彼女も居ないです!」


 さすがに、焦る。


「なんか、何人かの男の子に囲まれてショッピングしてたってウワサが」


 あー……。


「それは、中学時代のお友達、ですね……あ、もしかしたら……」


 視線を教室の後ろの方へ。


 後ろの方の席に着いていた、おさげ子先輩、それに金髪子先輩が。


「それはわたしたちも含まれてるかもしれませんね」

「ウチらも男装して一緒にお買い物とか行ってたからねー」


「あぁ、なるほどなるほど」


 なので、 質問者も、ご納得の、様子。


 しかし。


 何やら、不穏な気配も感じられる。


 とか、まさか。


 いや、いや。


 考えるのは、そう。


 踏み入れてはいけない沼にハメられたら、たまったもんじゃ、無い。


「他には無いかなー?」


 はい、はい、と、手が上がりまくる。


 どんだけ、質問あるのよぉ。


「じゃあ、貴女にしようかな、一番右後ろの貴女、どうぞ」


 エリ先生が適当に質問者を指名。


「はーい。えと、下着はお店に買いに行くの? それとも、通販?」


 うわぁい。


「えっと、基本的には通販ですね。あと、女装専門のショップがあるので、そこで」


「へぇ、女装専門のショップとか、あるんだ」


「はい。それから、この間、先輩たちに連れて行ってもらって、初めて女性向けの下着屋さんにも行ってみましたが……」


 結果はオーライだったけど、普通に考えたら、あり得ないと言うか、やめとけよ、って感じも、無きにしも非ず。


「女装しているとは言え、男子が行くところじゃなかったですね」


 そりゃそうだー、とか、ざわざわ、と。


 やっぱり、そうだよねぇ。


「あ、でもでも、女の子がお店に行く分には、何も問題無いと思いますよ。お店の人にサイズを測ってもらったり、試着してぴったりのを探してもらったりできるみたいなんで」


 通販だと、現物に触れられないし、ね。


 同じサイズ表記でも素材の違いで、キツかったりユルかったりするし。


 ざわめく教室の中。


 エリ先生が、話を進めてくれる。


「はぁい、いいかな? 質問、いっぱいあるみたいだけど、時間もそろそろだし、あとひとり、ね」


 うぅ。


 今度はどんなご質問、やら?


「はい、じゃあ最後、ちょうど真ん中の、貴女」


 エリ先生の、ご指名の女の子。


「はいはーい。園田さんのサイズ、聞いちゃってもいいですか?」


 あ、それくらい、なら。


 とは、言え。


 ちょっと、恥ずかしいのは否めない。


 これ、本当に女の子だったら、答えられないと言うか、答えたくないよねぇ、絶対……。


 だから、質問者も『聞いてもいいか?』と、少し遠慮がちに。


 ここは……。


「わたしのこの中身って、取り外し式なので、いろんなサイズになれるんですよー」


 てな、感じで。


 ちょろりと、誤魔化してみつつ。


「あ、そっか、なるほど」


「と言いながら、そんなにサイズを変えても意味ないので、ずっとこのサイズですけど、ね」


 ただし。


 そのサイズは、ナイショ、だよ?


「はいはい、さぁさぁ、そろそろ時間ですね」


 エリ先生がすかさずシメに入ってくれて。


 本日の授業は、これにて。


 終了とさせて頂きます。


 お疲れ様、でした!





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