第145話:下着屋さんに突入して語ってみた



 男装した女子先輩が女装した状態。


 うん、意味わかんない、ですよね。


 そんな、恰幅がいい上に、とってもセクシー風味な先輩方と。


 駅前ビルの入り口でフロア案内を確認して、下着屋さんのあるフロアへとエスカレータで、移動。


 移動の間にも。


 周囲からの、視線が、痛いの痛いのいっぱい飛んでくるの。


 ひぃ。


 先輩たちの方が目立ってはいるけど。


 そうは、言っても。


 あたしも、レイちゃんも。


 女装した、男子。


 奇異の目で見られている可能性も、無きにしも、非ずなので。


 そういう意味でも、痛いんです。


 唯一。


 まともと言える、普通の女性である、エリ先生も。


 その身長の低さから、幼女的な趣きもちらほら。


 そんな集団が、とも、なると、ですねぇ。


「はぁ……」


 ため息も、出るわよね。


「あはは、真綾まぁやちゃん、しっかり」


「うん……」


 エスカレータで隣に立つレイちゃんに慰められる始末。


 いや、ほんと、どう始末してくれよう、この先輩たち。


 せめて、一番上の女装を剥いで、男装にすればいいかな?


 でも、そうすると、着ている服が女性用だから、男性用の服に着替えさせないといけないか……。


 一番内側の男装用グッズを剥ぎ取るのは大変だろうし。


 そんなこんな、短時間で思いをめぐらせていると。


 エスカレータが目的のフロアに到着寸前。


 エスカレータのすぐ横が下着屋さん。


 エスカレータからも、商品の下着が並んでいるのがはっきりと見えている。


 目に留まりやすくする商売的な戦略、なの、かな?


 そういう意味で、エスカレータ横は、一等地?


 でも、これ。


 女性だったらいいけど、男性だと、ものすごく気まずい、よねぇ。


 あたしも見たいけど、凝視するのは、はばかられる。


「ぉお、いつ見ても、ここだけ異世界だなー」

「うむ、このファンシーな色は独特だな」

「なんか見ちゃいけねぇモンを見てる気になるぜ」


 先輩方の、ご感想。


 あたしも、ほぼ、同意見。


「ふわゎゎゎぁ……」


 レイちゃんも、まぁ、同じような感想、なんだろうな。


 前に一緒に来た時もだけど、引け腰ぎみ。


「さぁ、さぁ、ふたりに似合う下着、探しましょう探しましょう」


 唯一。


 まともな幼女先生が、率先して、お店の中へ。


 えぇい。


「行こっ、レイちゃん」


 レイちゃんの肩を押して、一緒に店内へと、突入っ。


 先輩たちも、ぞろぞろ、と、着いて来て。


「どれもおんなじに見えるなー」


 キョロキョロと、可愛らしい動作で、辺りを見渡す、金髪先輩。


「何がどう違うのかよくわかんないよな」


 おさげ先輩も、クールに腕組みをしつつ、膨らみを強調しながら。


「くっ……この辺りのだと、に合うサイズがぇぜ」


 ぱっつん先輩……盛りすぎなんです、それ。


 金髪先輩もおさげ先輩も、男装グッズで広げた上に、さらに女装グッズで盛り上げているので。


 元よりも、かなり。


 ぱっつん先輩は、元が元だし、そこからさらに、と、なってるし、ね。


「小さすぎるのも、無いのよねぇ、これが……中原さんとか真綾ちゃんレイちゃんはちょうどいいサイズがいっぱいあっていいわね」


 そう。


「やっぱり、売れ筋のサイズってありますから、仕方ないですねぇ」


 デザインが気に入った、と、思っても、自分に合うサイズが無い場合も、ある。


 ただ、一応。


「大きいのを小さく見せるブラ、とかだと、比較的大きめのサイズが用意されてるので、こっちの方見てみるといいですよ。逆に小さいのを大きく見せるブラだと、こっちかな? ブランドによっても大きめ小さめの傾向があるから、大里先輩はこっち方面、エリ先生と小坂先輩はこっちがいいですね。中原先輩とレイちゃん、それにあたしはだいたい標準的なサイズだから、それ以外のところから選べるよ」


 と。


 下着メーカーのウェブで色々と調べた事を話してみたんだけど。


「……」

「……」

「……」

「……」


 先輩方と先生が、ぽかーん。


 そして、レイちゃんが。


「真綾ちゃん……すっごく詳しい、のね?」


 あ。


 これ、やらかしちゃった?




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る