第138話:八時間目の逆ハーレム



 無事、新スラックス制服のお披露目式も、終わり。


 全校集会の講堂から教室に戻る間も、戻ってからも。


 もみくちゃ……。


 先輩たちも、同じような感じだったみたい。


 LHRロングホームルームの時間を終えて、臨時の八時間目って事で、いつもの空き教室に、集合。


「はい、みんなお疲れさま。これ校長のオゴリだって」


 エリ先生が、持っていた荷物から缶ジュースを取り出して机に並べる。


「おぉ」

「らっきー」

「ありがたし」


 校長先生、太っ腹?


 あたしも、一本、いただきます。


「校長って言うより学校から、かな、多分」


 なるほど。


 ポケットマネーと言うよりは、経費なのね。


「お疲れさまでしたー、かんぱーい」

「かんぱーい」


 って。


 なんの打ち上げなのか?


 まぁ、ジュースうまうま。


 ちびちび、と、オゴリジュースをいただいていると。


「しかし……他のクラスのひとは遠慮がちだったけど、同じクラスのヤツらからは質問攻めだったなぁ……おまえらどうだった?」


 席に着いてるは着いてるけど。


 もう、男子が板に張り付いてる、金髪男先輩。


 片腕を椅子の背もたれにかけて、大股開きで座ってる。


「ボクのところも同じようなモンだったよ」


 おさげ男先輩は、まぁ、普通と言えば普通に座っているけど。


 脚を組んで、片手で頬杖で少しだらけたような雰囲気。


「オレんとこも同じだった、ぜ」


 ぱっつん男先輩も、金髪男先輩と同じような座り方。


「それにしても」


 ん?


 おさげ男先輩が、何やら胸元を気にしつつ、何やら言いたそう。


「どうしたん、ツグ」


 金髪男先輩が、拾う。


「いや、この下に着けてるヤツ、けっこうキツいよな……」

「あー、んむ、これ一日着けてたら、ちょっと痛くなるよなぁ」


 そんな、おさげ男先輩と、金髪男先輩の二人に。


 ぱっつん男先輩が。


「おまえらまだマシだろうが。オレはもっとキツいんだぞ?」


 あぁ……はい、なるほど、そうですよね。


 女子から男子への、変身で。


 最も女性らしい部分を隠すために、ある種、無理やり抑え込む必要が、あるから。


 一番隠す率の高い、ぱっつん男先輩は。


 大変そうだ……。


 ちなみに、男子から女子へは、上げ底を付け加える方向なので、さほどキツいって程ではないけど。


 上げ底自体がウレタン素材なので、暑いのは、一緒かな?


 そんなぱっつん男先輩に、エリ先生の一撃。


「まぁ、まぁ、それはって事で」


 自業自得、って言うのかな、それ……。


「何が言いたい、エロ教師」


「ぶぅえつにぃ?」


 そのエリ先生は、男装もしてないので、おっしゃる通り、別に課題も問題も、無い。


「まぁ、でも、これから涼しくなってくれば、ウィッグも使えるようになって、もっと男らしくなれる、かな?」


「そうだな、髪型にまだ難点あるもんな」


 後ろでくくって、目立たなくはしているけど。


 この制服だと、服の中に入れてしまうと違和感あるし、ね。


「髪で言えば、真綾まあやはだいぶ伸びて来たか?」


「そうですね、ある程度伸びましたけど、まだまだ女子っぽくは無いですよね」


 ウィッグと言うか、エクステは外せません……。


「しかし、それにしても……」


 ん?


 エリ先生?


「こうやって四人を見渡してみると……」


「ん?」

「どうした、エロ先生」

「何かエロい事でも?」


 ちょっと、男子ぃっ!


「エロ言うなし。いやぁ、女子ひとりに男子三人ある意味ハーレム展開だなぁ、って」


 いや、先生も、何言ってますやら……。


 と言うか、実質のところで言えば、じゃなくて、普通にハーレムな気もするけど……。


 何かが、違う?





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