第87話:コスプレショップに来てみた


『調べましたけど、全部揃えると結構良いお値段になりますね……』

『合宿で予算使いきったからもう無いよ?』

『ぅう……自腹かぁ……』


 何故か、男装する事になった三先輩。

 男の物の服を着るだけでは、女性らしさを隠しきれず。


 男子のウチが女装するために、女装ショップで色々と道具グッズを揃えているように。


 先輩たちも。


 先生のアドバイスも加えて。

 八時間目のグルチャ。グループチャットにて。


『まぁ、なんとかしますわ……』

『うぅ、貯金降ろしておかないと……(泣)』

『次の男の子の日にソコに行くってことでよいのね?』


 森本くんからわずかな間をあけて、次のお友達との会合予定。


『って事で、どうやらコスプレショップに行くことになったよ若林くん』

『なんだそりゃ? でもいいな、コスプレショップ。興味はなくも無い』


 ネクスト・バッター、若林くん。


『うん、よろしくね』


 何がよろしくなのかよくわからないし、若林くんの出番があるのかも、怪しいながら。


 当日。


 待ち合わせ場所で軽く若林くんを紹介して、それぞれ簡単に自己紹介。


 くだんのコスプレショップは少し都会の方面にあり、電車に揺られる事、小一時間。


 そして、目的の駅に到着。

 地元や近隣の駅前よりも、はるかに賑わう都会の町。


「うぁ、ヒト、多いなぁ……」

「ほら、ミリィ、はぐれないように、手繋ぎましょう」

「ナンダコノヤローっ!」


 ぱっつん子先輩と金髪子先輩がなにやら漫才。


 ちなみに、今日も八時間目の一環って事で、みんな制服。

 ウチも、制服。


「ホント、違和感無いよな、その格好」


 若林くんにしてみれば、数度見ただけの、ウチの制服姿。


「まぁ、さすがに本物の女の子の……先輩たちに比べると、アレだけど、ね」

「遜色無いと思うぞ?」

「そ、そぉかなぁ?」


 照れ。


 前を見ると、エリ先生を先頭に、三先輩方。


 その先輩方。

 なんだかんだ言って。

 ぱっつん子先輩とおさげ子先輩の間。


 仲良く手を繋いで。


 歩く事、十数分。


「ここの五階よ」


 とある雑居ビルに入っていくエリ先生。

 ここまでの道中も、迷うことなく。

 おそらくは、通い慣れていらっしゃるのでは、と、思われる。


 雑居ビルの狭いエレベーター。

 定員六名。

 他にヒトも居なかったので、ピッタリ、セーフ。


 目的の五階へ到着。

 エレベータのドアが開くと、そこはもう、お店の中。


「ふわぁ……」


 色とりどりの、衣装、ウィッグがずらり。

 さすが、コスプレショップ。


 ちらほら、他のお客さんは、ほぼお姉さんっぽい女性の方。

 やっぱりコスプレするのはお姉様方が多いのかしらね。


 そのお姉さま方は、衣装の方を見られてるけど

 ウチらの、今日のお目当ては。


「こっちよ」


 ここでも、迷うことなく、お目当ての商品の棚まで一直線エリ先生。

 そんなに広くはない店内の通路。

 ぞろぞろと一列渋滞。


 じゃなくて、一列縦隊。


 移動しながらも、陳列されている衣装とか、ちらっと眺めてみると。

 何のアニメかはわからないけど、それっぽい衣装とか。

 明らかにメイド服っぽいメイド服。


 メイド服っぽいメイド服って何さ?


 ウィッグも並んでいるけど、ウチが使っているようなのは少なくて、青赤緑に桃色水色に金銀白藍橙、色とりどり。


 そして店舗奥。


「これかー」

「これ、ね」

「これですか……」


 色とりどりの衣装とは違って、肌色多めのコーナー。


「すみませーん、試着、いいですかー?」

「いらっしゃいませ。はい、こちらでどうぞ」


 エリ先生、ここでも迷いなく。


「一番大変そうな大里さんから、試してみましょうか」

「あ、はい、ですわ」

「サイズはMで試してみましょう……」


 仕切りまくりのエリ先生。


 、ぱっつん子先輩に。


 その肌色インナーの装着方法をレクチャーしてる。


 金髪子先輩とおさげ子先輩も、パッケージを手に、説明書きを読んでらっしゃいますね。


「オレは店のなかぐるっと見て回って来るわ」

「あ、ウチも一緒に行くよ」


 先輩方は先生に任せて。


 若林くんとふたり、店内散策へ。





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