若林くん~コスプレショップ
第86話:先生からの提案・男装するからには
ぶっかぶかの金髪子先輩。
ぱっつんぱっつんのぱっつん子先輩。
男装失敗?
さて、三番目、トリに登場致しますは。
「さ、どうかな? ボクのコーデは」
片手を腰に、胸を張ったおさげ子先輩。
トレードマークのおさげ髪は後ろにまとめて、服の中に隠している。
その装いは。
二~三サイズ上のダボダボのTシャツの上から長丈のジャケット。
パンツもダボダボで、ふわっとして、身体のラインをうまく隠している。
そして、もう片方の手で、もうひとつのトレードマークの眼鏡をクイっ、と。
「おぉおお!?」
「くっ……負けました、わ……」
先輩方の感想は上々。
森本くんも、つま先から頭のてっぺんまで、何度も見返して、うんうん、と頷いているように見える。
ウチから見ても。
女性バージョンのおさげ子先輩も、インテリ風だったけど。
男性バージョンのおさげ子先輩も、まさにインテリ男子風。
「あぁ、でも、よっく見たら、
「ですわね。肩幅のせいもあって、少し華奢に見えて、イカツさが弱いですわね」
自分の事は、棚に上げ上げな、ぱっつん子先輩。
そこへ。
「ふっ、ふっ、ふっ」
おとなしかったエリ先生が。
何やら、不敵な、笑み。
笑み先生?
じゃなくて、エリ先生か。
「先生? どうかしました?」
「ちみ達、どうせやるなら、これくらい、やってみない?」
と、スマホをかざして見せるエリ先生。
そのスマホの画面には。
「なんです? 『これで
「男装用グッズ?」
「ああぁ、コスプレショップ!?」
三先輩が先生のスマホを覗き込む、その脇からウチと森本くんも先生のスマホ画面を見てみる。
確かに。
コスプレショップの通販サイト。
女性が、男性キャラのコスプレをする際に使う、グッズ。
ふくよかな、
さらに、ウチが使っている上げ底と同様に、男性らしい肩幅を盛ったり、もっこり感を出すための上げ底的なグッズまで。
「こういうの使えば、もっとそれっぽくできるって事かー」
「よく考えたら、園田さんも女の子になりきるのに、下着とか頑張ってるものね」
「本気でやるなら、それくらい、やらないといけないって事ですのね」
ここへ来て。
森本くんが、何やらそわそわ。
「どうしたの? 森本くん」
「園田くん、ちょっと……」
盛り上がる先輩方を後目に、すこし移動して離れて。
(軽く男子の服を着てみたらって思ってただけなんだけど……)
(うん、なんか、盛り上がっちゃってる、ね)
(どうしよう……)
(あはは。いいんじゃない? 先輩たち、真面目だから、やるとなったらとことん本気でやる事になってもおかしくは無いね)
(マジか……)
(うん。いい
(そっか……)
「と、言う訳でー!」
エリ先生が、後ろで少し大きな声で。
「今日はもう時間もアレだし、日を改めてココに行ってみましょー」
シメにかかる。
ウチも、先生のシメに被せて。
「じゃあ、そろそろ帰りますか」
「はーい」
「そうですわね」
「あ、わたし着替えなくちゃ」
おさげ子先輩が試着室へ戻る。
着替えて出て来るのを待って。
またゾロゾロと、駅まで移動して電車に乗って。
もうすぐ最寄り駅ってところで。
「今日はありがとうございました」
先輩たちはまだ少し先の駅までなので、森本くんが、お別れの、挨拶。
「いえいえ、こちらこそ」
「楽しかったよー」
「お疲れ様でした」
「ありがとう、ね」
先輩たちも、にこやかに。
わずか半日足らずで、そんなにも沢山交流できた訳ではないけれど。
森本くんの発案の『男装』に。
なにやら、本気になっていらっしゃる先輩方。
そして、電車はウチの最寄り駅へ到着。
「それでは、またです!」
「またねー」
「ばいばーい」
「お気をつけて」
「じゃあね」
ウチと森本くんは、電車を降りる。
走り去る電車に手を振り、中からも振り返されて。
先輩方を見送って。
森本くんと一緒に、駅を出て、今度は森本くんとも。
「また先輩たちと遊びたいな」
「今度は、男性化した先輩たちに会えるかも、よ?」
「うーむ、それは、どうだろう?」
「あはは、だよねー」
「じゃ、な」
「うん、またね」
お別れして。
帰路。
とぼとぼ、歩きながら、ふと、思う。
エプロンを作った時もそうだったけど。
「やっぱり、先生って……」
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