第81話:クルーザー、だっけな?



 三先輩と先生に、ウチの中学時代の男友達を、と。


 ウチの自宅に招いた夏休みのある日。


 簡単な自己紹介を終えた直後。


 金髪子先輩がウチの胸を指さして。


「あー、園ッち色ブラ着けてる!」


 いや、いきなり何言ってんっスか!?


「いや、いきなり何言ってんっスか!?」


 あぁ、思った事がついくちから飛び出してしまうぅ。


「学校内じゃないんだから、いいじゃないですか、ちょっとくらい」


 自宅なんだし、と。


 今日は、キャミは白だけど、淡いピンクのブラ。

 ショーツも実はお揃いの色。

 えへへ。


「えー、だって一応学校行事だしーウチは白無地着てきたよー」

「わたしも白無地の、ほら、この間言ってた、ブラトップ着てきたよ」


 続けざまに、金髪子先輩の左側に座る、おさげ子先輩も。そして。


「あら? そうですの? わたくしも名前に合わせて『桜色』の下着にしてますわよ?」

「先生はそもそも学生の校則は関係ないからねぇ。いつもの通り、黒よ」


 ぱっつん子先輩に、エリ先生まで。


 森本くんが、唖然ぽかんとしてる。


 てか、男子の前で何言ってんですかこのひと達は。


「てか、男子の前で何言ってんですかこのひと達は」


 あぁ、またぁああ。


 ん、もぉ……。


 あぁ、でも、おさげ子先輩のブラトップは見せてもらいたいかな。

 どんな着心地だんだろう?


 って、違う違う。


 つん、つん。


 ん?


「何? 森本くん?」


 隣に座る森本くんが、ウチの腕を、ツンツンして来る。


(おま、いつもこんな感じなのか?)

(あー……うん、まぁ……)

(完全に女の子同士のノリなんじゃないのか?)

(まぁ、女子高だしなぁ……)


 とは、言え。


 先輩方と先生限定。


 クラスじゃボッチだしね。


 他の女の子たちとの交流は無きに等しく。


 でも、超限定とは、言え、だよなぁ。


 自分でもびっくり。


「あぁ、そうだったわね……船と言えば、ウチのパパも船、持ってるよー。ちっちゃい時、何度か乗せてもらったことあるー」


 金髪子先輩が、空気を読んで話を戻してくれる。


 金髪子先輩にしては、珍しいな。


 単に、『船を持ってる』って自慢したかったのかな?


「ちっちゃい時……」

「ちっちゃい……」

「今でもちっちゃいじゃないですの……いひゃいいひゃいひぃはひふううへふほー」


 また珍しい、金髪子先輩がぱっつん子先輩のほっぺ引っ張り。


「ちっちゃい言うなやー」

「いたた……自分でおっしゃったんでしょうに」

「幼い頃、って意味じゃー」

「まぁ、わかってるけど」


 うん。


 漫才かな?


(漫才か?)

(まぁ、そんなもん。三人とも産まれた時からの友達らしいし)

(へぇええ)


「小坂さんの船って、どんな船なんですか?」


 そして、エリ先生の、助け舟。


「クルーザー、だっけな?」


 下唇に人差し指をあてて、上目遣いに、記憶を手繰る仕草。


(うわぁ)


 うん。可愛いよね。先輩だけど。


 でも、クルーザーかぁ。なんとなくわかるなぁ。お金持ちの象徴? みたいな感じ、あるもんなぁ。


 金髪子先輩の家、お金持ちだもんなぁ。


 ぼんやりと、そんな事を考えていたら。


「そもそも、なんで船なの? 車とかバイクではなくて」


 素朴な疑問を呈する、おさげ子先輩。


「あー、それは、ですねぇ……」


 上手い具合に、森本くんに話を振ってくれた、おさげ子先輩。


 ナイスです。


 ウチは。


 何も考えてませんっ!



 はい、自滅。



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