第76話:野郎どもと写真、野郎どもが土下座



「よぉし、じゃあ全員で撮るか」


 女装ショップでお買い物、兼、見学を終え。


 ファミレスで少しだべった後。


 電車に乗って、最寄り駅まで戻ってきて。


 ウチ的には、帰宅。


 お仲間たち的には、『しの女』見学?


 と、言うか、女子高の正門前で、野郎四人、写真撮ってる姿は。


「通報されても知らんぞ、おまえら……」


「夏休みだし、人も少ないし大丈夫だろう」

「それに園田も居るしな」

「園田に頼んで連れて来てもらったって言えば」


「まぁ、その通りではあるんだけど……」


 暑い中。


 ひとりづつ、ウチと並んでツーショット。


 『しの女』の正門、学校名の前で。


 まぁ、近隣ではお嬢様学校として有名な東雲女子。


 そこの生徒が彼女とかって、ステータスなのかもしれないけど。


 いいのか、ウチで。


 しかも彼女じゃないし。


 かといって、彼氏でもないぞ。


 おぇええ。


「全員で、って、カメラマンが入れんぞ?」

「あ、オレ、自撮り棒持ってる」


 川村くんが、カバンをごそごそ。


「じゃーん」

「おぉ……」

「おぉ?」

「なんだ、そりゃ?」


 川村くんが取り出した、棒。


 自撮り棒、なんだろうけど。


「なんでニワトリ??」


 先っぽの、スマホを取り付ける台の部分が、ニワトリ。


「いいだろ? 棒」


「……」

「……」

「どこで売ってたんだ、そんなもん……」

「オヤジギャグ棒……」


 うむ。頭痛いわ。


「いいから、撮るぞー」


 はい、はい、と。


 ウチを囲んで、野郎ども。


 転送されてきた写真を見てみると。


「逆ハーレム?」


 とは、言え、とりまきの男子がイケメンと言う訳でもなく、ものすごく微妙な。


「さすがに、学校の中には入れんか……」

「それはヤバイって」


 まぁ、ウチだけなら制服着てるし、入れなくもないけど。


 ぞろぞろと男子を率いて入る訳にはいかず。


「とりあえず、ウチで涼んで行くか?」

「おー」


 写真を撮り終え、押しボタン信号のボタンを押して、渡れば、すぐそこ。


 連中をリビングに案内して、クーラーを点けて麦茶を出してやる。


「ウチ、ちょっと着替えて来るわ」


 自室に戻って、制服を脱いで。


 早速だけど、買ったばかりの涼感ブラも着けてみよう。


 自宅だし、ピンクをお試し。


「うん……いい感じ」


 上からキャミを被って、さらにTシャツ、と。


 下はホットパンツでいいか。


 さて、と。


 リビングに戻ると。


「何やってんだ、おまえら……」


 四人。


 並んで。


 土下座スタイル。


「園田っ」

「頼むっ」

「ちらっとでいいから」

「下着姿、見せてくれっ!」


 え?


 オマエラナニイッテンダ?


「やだよ」


「そこをなんとかっ」


 頭を床に擦りつける、面々。


 山田と若林はともかく、森本と川村まで……。


 あー……。


 まぁ……。


 わからなくも、ない、か。


 もし、ウチが彼らと同じ立場だったら?


 そりゃ、興味もシンシン、だよなぁ。


『中がどうなってるか?』


 相手が本物の女性だと、絶対に無理だけど。


 同じ『男』なら、ってか……。


 まぁ、仕方がない。


 恥ずかしいのは、恥ずかしいが。


 中学では一緒に着替えとかもしてたし、なんなら修学旅行で一緒に風呂にも入った仲でもあるし。


「上だけ、一瞬だけだぞ?」


「いいのかっ!?」

「おぉおお!?」

「やったっ!?」

「お願いしますっ」


 今、着たばかりのTシャツを、するっと脱いで。


「おぉっ!?」


 キャミソールも、するするっと。


「おぉおおおおおおっ!?」


 立ち上がって、オレを取り囲んで、食い入るように。


「ピンクっ!?」

「ピンク……」

「ピンクのまぁや……」

「ピンクマーヤ……」


「寄るな寄るな。はい、おしまい」


 ささっと披露してささっと着衣。


「って言うか」


「ん?」


「家でも女装してるのな?」


「あー……まぁ……な?」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る